邂逅
「見てたよ」
「今の、君でしょ?」
!?
見られた。
ばれた・・
この能力が人に知られるなんて、考えもしなかった。
思った途端、彼女から返事が返ってくる。
「そうなんだ?」
!
「ここ数ヶ月ないくらい驚いてるね。」
!!
心臓がバクバク鳴る、どうやってこの場を脱しよう・・?
「逃げられないよ、私、ドアの前にいるんだよ?」
!!!
考えた事に対して、彼女から返答が帰ってくる、頭が混乱して真っ白になる。
「聞こえるんだよ、私、人の思ってる事。」
・・・
「意味がわからないよ、どうゆうことだよ・・?」
「とぼけないで! 一緒だよ、君と、一緒・・」
そうゆうことか、似たようなことが出来る人が他にもいるのか、と少し納得した。
「会話楽なんだよね、これ、思ったことが分かるから、人の表情考えるより百倍楽だよ。」
「そんな事、か、簡単に、人に言っていいの?」
「君だけだよ!」
「まだ、君にだけ・・」
言葉を出し切らないうちに、即座に返答が帰ってくる、はたから聞いて会話になってるのか疑問に感じる。
「そんなこと考えないでいいの!!」
「私のことだけ考えて!!」
状況が変だけど、女の子にこんな事を言われたのは初めてだな・・
「もうっ!!」
走り寄ってきた彼女に頭を、パシン、と、どつかれる。
「わかった、わかりました・・」
完全に彼女のペースに嵌った。
まいったな、なんかおかしな事になったな、考えて、すぐ止めた、またポカっとやられそうだ。
「私ね、学校中の声を聞いて、同じような人がいないかずっと探してたの。」
「そしたら、君がいた。」
「最初は、変な事考えてる、気持ち悪い人だと思ったけど」
こら・・・
「ごめん、怒らないで。」
「こないだ、2年のヤンキーにいたずらしたでしょ? 下駄箱で、あの時、私もあの場所にいたんだよ。」
「それで、本物だって、わかったの。」
あの時か・・
生活指導の先生の声を再現した時、絶対にばれないと思っていたけど、自分の考えている事が、分かる人があの場所にいたら、話が変わってくる。
「でも、君は、私とは持ってるものが違うね、聞こえないもんね。」
「僕は・・」
「あ、嘘ついてもだめだよ、私聞こえるんだから、あなたの思った事。」
はい、正直に。
「僕は・・、そうだな、音が出せるんだ、他人の考えてる事が分かったりはしないよ。」
それから、彼女と屋上で立ち話をした、彼女も春頃から、おかしな能力に気づいたらしい。
「最初はね、ノイローゼだよ、頭がおかしくなったと思ったわ、だって目の前の人の声が、口も開いていないのに聞こえてくるんだもの。」
「私、勉強がんばってる方だし、ちょっとおかしくなったと思ったわよ。」
「学校にもしばらく来れなかった、だってあれだけの人の声がいっぺんに聞こえるんだよ、しかも年頃のガキの声だよ、聞いてられない・・・」
そういえばこの子、たしか成績も凄くが良かったような・・名前はたしか・・
「日坂 鈴です、よろしくね。」
あ、やっぱりと思った、張り出される学年順位の常連だ。
「君は?」
「え?」
「名前!」
「・・・近江 壮士 (おうみ そうし) 3組だよ、学年一緒だよな。」
「お互い、自己紹介だね。」
「今は、大丈夫なのか?」
「うん」
さっきより、返答がゆっくりになった、彼女も少しは落ちついたんだろうか?
「途中からね、コントーロール出来るようになったんだ。」
「だから、今は大丈夫。」
「意識すれば、全く聞こえないようにする事も出来るし、特定の人の声だけ聞くこともできるようになったの。」
「かなり練習したんだよ。」
確かに、似ているけど違う。 彼女は自分の能力に随分思い悩んでいた様子だった。
自分も、もしこんな能力だったら、彼女のように辛い思いをしたかもしれない。
続く