役得でしょ?
着替えて体育館に着いたら、田端さんが一人で体育のためにサーブ練習をしていた。
ボールの音だけが、広い空間に反響している。
「……遅い」
「ごめんごめん!」
「どこで道草食ってたの」
「ちょっといろいろ」
「いろいろって何」
「田端さんには関係ないかな〜」
田端が一瞬、むっとした顔をした。
でもそれ以上は聞いてこなかった。
「……早く来て。やるよ」
「ちょっと待ってよー」
―――――――――――――――――――――
練習をしてから
田端さんのサーブは、最初の頃と比べて全然違う。
きれいに入るようになってきた。
「うまくなったね!田端さん」
「当たり前じゃん。成長。」
「最初のこと覚えてる? 全然入らなかったじゃん」
「うるさい。神崎だって最初ひどかったじゃん」
「ひどくなかったよ」
「ひどかった。あのレシーブは何」
「あれは床が滑ったんだよ。僕は悪くない」
「言い訳じゃん」
田端さんが笑った。
珍しい。
田端さんもいい顔するんだなー
汗をかいてきた頃、田端さんがボールを拾いに来て、近くに来た
「ねえ神崎」
「え、あぁ、どうかしたの?」
田端さんが少しだけ近づいてきた。
「え、ちょちょちょ。どうしたのほんとに」
「……いい匂いする」
「……はい?」
「神崎、すごくいい匂いする」
田端さんがどんどん近づいてくる
頬が赤い。汗のせいか、それとも別の要因か
「汗かいてるのに、なんか……いい匂い」
そう言ってから、田端さんが少し目を逸らした。
「本当?」
「……1度言ったことは撤回しない」
へぇ~??
攻めてきた。
田端響が、自分から攻めてきた。
それもまた面白い!!
「じゃあ……もっと近くに来る?」
「──っ」
田端さんの目が止まった。
「いや……え?」
「だから、もっと近くに来る?って」
「な、なんで」
「え?だって僕の匂い好きなんでしょ?」
「そ、そういう意味じゃ——」
「じゃあ僕の匂い苦手だった?」
「そ……そんな訳―――」
田端さんが言葉に詰まった。
「……ない……けど」
「じゃあ近くにおいでよ」
田端さんが僕じっとこっちを見た。
探ってる目だ。本気なのか探ってる目。
「……本当に?」
「もちろん」
「嫌々じゃなくて……?」
「嫌ならいやって言ってるよ。田端さんだから僕は大丈夫なんだよ?」
「───ッ、じゃ、じゃあ」
田端さんがゆっくりと、僕に近づいてきた。
一歩。
もう一歩。
肩が触れそうになったところで、止まった。
「……これくらい?」
「ほんとにそこでいいの?」
「……え?」
「僕はもっと近くがいいかなぁ」
「——っ」
田端さんの呼吸が、少し乱れた。
そしてもう一歩だけ近づいた。
息がかかる距離になった。
「……これは」
「うん?」
「さ、流石に、近くない?」
「そんなことないって」
「そ、そう……?」
「そうだよ!何も問題ないって!」
田端さんは黙り、言い返せない顔をしている。
耳が少し赤くなっていく。
汗と、田端さんの匂いが近い距離にあった。
やっぱり、この世界の女の子は反応が可愛い!
それに、いい匂いもする。ラクトンって言うんだっけ
「田端さん」
「ヒェッ……ど、どうしたの?」
「さっきいい匂いって言ってくれたけど」
「い、言った」
「僕も今同じこと思ってるよ?」
「——っっ」
田端さんの顔が、一気に赤くなった。
「え、いや……、ほんとに―――」
「なんか、甘い匂いするね。田端さん」
「そ、そうかな……私には分からない、」
「自分の匂いって分からないもんね」
「それは……そうらしい」
「ねね、田端さん」
「……はい」
「僕、田端さんの匂いもっと欲しいからもっと近くに行ってもいい?」
田端さんが言葉に詰まった。
言いたいことがあるのに、言葉が出てこないかな
「……こ、これ以上?」
「この前僕にしたこと覚えてる?それに比べたら大丈夫でしょ?」
田端さんが完全に固まる
……この前の屋上の事思い出しちゃったのかな?
う~ん、ウブ!
「じゃあ、近寄っちゃうよ?」
僕は田端さんにぺったりとくっつく
田端さんおっきいなぁ、180以上あるんじゃないかな?さすが運動部!
「田端さん、おっきいね。安心する」
「そ、そうかな」
「うん!それにすごくいい匂い!」
「神崎も……いい匂いだよ」
「そうかな?」
「う、うん。すごいいい匂い」
「知ってる?いい匂いって感じる人は遺伝子レベルで相性がいいらしいよ?」
「……っ、そ、そうなんだ」
「ってことは、僕達遺伝子レベルで相性いいんだね」
田端さんの顔がみるみる赤くなっていく
この世界の事考えると、すごく我慢してるんだろうなぁ~。健気で面白い!
「田端さんはどう思う?僕は嬉しいなぁ、田端さんと相性よくて」
「わ……私は……」
「うん?」
「……」
……流石にやりすぎちゃったかな。
「だ、大丈夫……?」
「……ちょっと、クラクラする」
「え、大丈夫……?」
「……汗出ないから、水、足りない、かも」
え、ほんとにヤバいやつじゃん。
……汗かいてお水足りなくなっちゃったのかな。
水筒……今日持ってきてたよね
「え、大変じゃん!ちょっと待っててね、今水筒持ってくるから!」
そう言って体育館の端に置いた水筒を持ってくる
「はい、水筒!今日はスポドリだからきっと染みるよぉ~?」
田端さんが途切れ途切れに言う
「これ……神崎の……じゃ、」
「え、うん。僕のだよ?少し飲んじゃったけど……僕風邪ひいてないし大丈夫だよ!」
「間接キス……」
「……あぁ」
あ、そういう事ね?でも今そんなこと気にしてる場合なのかなぁ……?
「田端さんなら僕はいいよ、間接でも……それ以外でも……ね?」
「……ッッ!!」
やっばい癖が出た、まぁいっか!
「そういうことだから、ささ!飲んで飲んで!」
僕は結構水を飲む方だから1.5Lのやついつも持ってるけど、ラッキーだったなぁ
田端さんは水筒を受け取ったが口をつけない
「早く飲まないと倒れちゃうよ!田端さんおっきいから僕保健室連れてけないって!」
しかし田端さんは動かない
「んもぉ~しょ~がないなぁ~」
僕は田端さんの持っている水筒を受け取る
「紙コップ……保健室にあるかな、
少し待っ―――」
「いや、そのままで大丈夫。頂戴」
「ほんと?良かった!はい、どうぞ!」
田端さんはゆっくりゆっくり飲み口に口を近づけて飲みだす
「さぁさ!どんどん!ごくごく!」
「……ぷはっ」
田端さんは恐らく沢山スポドリを飲んで口を外す
「……助かった、ありがとう」
「うん!元気になってよかった!」
田端さんは何となくオドオドしている
「どうしたの、何かあったの?」
「さっきの……あの、それ以外もって……」
あぁ、さっきの悪い癖のやつね?
嘘ついた記憶はないし、別にいっか
「え?うん!田端さんだったらそれ以外でもいいよ?誰でもじゃないからね?勘違いしないでね?」
「……う、うん」
「僕も喉乾いたから飲んじゃうねー」
そう言って僕は受け取った水筒を飲む
「それ……さっき私が」
「知ってるよ?田端さんならいいって言ってるじゃん」
そう言って僕はスポドリを飲む
……あんま入ってない。別にいいけど
「ふぅ……疲れた!」
「……お疲れ」
「ほんとだよー、もー。おぶってよ~」
「え、お、おぶ?」
「田端さんもう体調大丈夫そうだし、か弱い僕を更衣室前まで運んでよぉ」
「で、でも私汗かいて……」
「僕もだけど、お互いにいい匂いって思ってるなら大丈夫でしょ?それにさ」
僕は田端さんとの距離を詰める
「田端さんにとっても役得でしょ?」
そう言って田端さんに笑いかけた
読んでいただき、ありがとうございました!
もし良ければブクマや評価をつけていただけると、とても励みになります。




