『長者と婿と六色プレスマン』
掲載日:2026/03/19
嫁に行った娘のことがかわいくて仕方がない長者が、婿を家に呼んで馳走を振るまい、帰りに銭一貫を持たせた。婿は、銭一貫を背負って帰ったが、途中、山の中で、沼に鴨が数え切れないほど休んでいたから、おどかしてやろうと思って、銭を一枚一枚投げつけているうちに、銭は一枚もなくなってしまった。
家に戻ると、母親が、しゅうと殿から何かもらわなかったかと聞いてきたので、かくかくしかじかと答えると、何ともったいないことだ、そういうものはふところに入れてくるものだ、と言うので、今度はそうする、と答えた。
次のとき、長者から、馬を一頭もらったので、ふところに入れようと頑張ったが、馬は嫌がって、どこかへ走り去ってしまった。家に戻ると、そういうときには、手綱をつけて引いてくるもんだ、と言うので、今度はそうする、と答えた。
次のとき、長者から、六色のプレスマンを一本ずつもらったので、ひもにくくって、引きずって帰ったところ、ひもだけになっていた。
教訓:銭一貫は、一文銭が千枚だそうである。鴨をおどかすために、千回も銭を投げるのは、根気があると言って言えないこともない。が、言わない。




