第84話 車椅子探偵誕生
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
千雪の発言に
僕は言葉を失っていた。
西岡は僕が改めて出したジンジャーエールの瓶を
険しい表情でじっと見つめていた。
「恐らく。
六条さんの支給品は
【市民】を証明する『クラブの8』だった
のではないでしょうか。
そして。
彼女が引いた本当のカードは【犯人】である
『スペードの8』だったはずです」
「・・じゃ、じゃあ。
六条さんが持っていたと証言している
髑髏の小瓶は一体・・。
あれは支給品ではなかったと?」
僕は少女に疑問をぶつけた。
「その髑髏の小瓶こそが
郷田さんの支給品だったのです」
「・・あのおばさんが
郷田を殺して小瓶を奪ったと言いたいのか?」
ここまで黙って聞いていた西岡も口を挟んだ。
「・・それは違うと思います。
菅野さんと平原さんが
いつ現れるかもわからない状況で
そんな危険な橋を渡るとは考え難いです。
六条さんが部屋に入った時、
すでに郷田さんは殺されていた。
そう考えるのが自然です。
死体を発見した六条さんは
このゲームの主催者が
本気だと悟ったのではないでしょうか。
同時に。
彼女の頭によぎったのは
【犯人】は最低でも
1人は殺さなければならない
というルールだったのでしょう。
そんな彼女の目に髑髏の小瓶が留まった」
「平原さんを殺したのはやはり六条さんだと?」
僕の問いに千雪は小さく頷いた。
「直接手を下す必要のない毒殺という手段は
女性が使うことが多いと言われています。
六条さんにとっても
髑髏の小瓶は或る意味、
救いだったのではないでしょうか」
そこまで話すと
千雪はテーブルの上のグラスを手に取って
こくりと一口飲んだ。
それから僕の方を見て微笑んだ。
その笑顔を見た瞬間、
雷に打たれたような衝撃が体を貫いた。
堕天した美しき天使は
名探偵へとその姿を変えた。
『安楽椅子探偵』ならぬ『車椅子探偵』
佐藤千雪。
今ここに誕生せり。




