第80話 『クラブの2』
遊戯室のドアの前で僕は千雪の表情を窺った。
少女はやや憔悴していたが、
口をきつく結んで精一杯気丈に振舞っていた。
僕はゆっくりとドアを開けた。
奥のカウンターに座っていた西岡が
振り返って椅子から立ち上がった。
「どこに行ってたんだ?」
「・・君に聞きたいことがある」
僕は西岡の問いを無視して詰め寄った。
「その前に。
まずは俺の話を聞いてもらおうか。
このゲームの謎を解く
決定的な証拠を見つけたぜ」
そう言うと西岡は
両手をデニムのポケットに突っ込んだまま
「くっくっく」
と不敵に笑った。
僕が千雪の方へ目を向けると
少女は小さく頷いた。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
千雪はカウンターの横の
小さな丸テーブルの前に車椅子を寄せていた。
西岡は千雪とは真逆のカウンターの端に
座っていた。
「何か・・作ろうか?」
僕はカウンターの中から2人に声をかけた。
「俺はコイツがあるから大丈夫だ」
西岡はそう言って
ジンジャーエールの瓶を揺らした。
「わ、私は・・
アルコールの入った甘いモノを
お願いできますか」
千雪はやや躊躇いがちに呟いた。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「『カルーア・ミルク』だよ。
甘口で飲みやすいけど
アルコール度数は高いから気を付けて」
僕はそう言葉を添えて
千雪の前にグラスを置いた。
千雪は恐る恐る口をつけた。
それから僕の方を見て微笑んだ。
僕は小さく頷いてから
西岡の背後を大きく回ってカウンターに戻った。
「それで。
・・西岡くん。
一体君は何を見つけたんだい?」
西岡は僕の問いには答えずに
瓶に口をつけてゴクゴクゴクと呷った。
それから徐に1枚のカードを取り出して
カウンターに置いた。
それは端々が僅かに折れ曲がった
『クラブの2』だった。




