第66話 魔女狩り
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
娼婦は空になったショットグラスを
手の中で弄んでいた。
老豚はプルプルと体を震わせてた。
死神はそんな2人をニヤニヤと口元を歪めて
静観していた。
車椅子の堕天使はオロオロと不安げな表情で
周囲に目を走らせていた。
堕天使の目が僕を捉えた。
僕は堕天使に向かって小さく頷いた。
宮崎の発言はある意味正しい。
【探偵】は【犯人】を探す。
そして【犯人】は
必ずしも【市民】を殺しているとは限らない。
本人は否定しているが、
平原を毒殺したのは恐らく、
【市民】である六条の可能性が高い。
それを踏まえて。
僕と千雪は郷田が【犯人】ではないか
と推理した。
さらに千雪は
六条が郷田まで殺した
と考えているようだが・・。
「・・いいか?
証明するのは儂ではなくお前さんの方なんだ。
お前さんは
自分が郷田を殺してないということ、
そして自分が【犯人】ではないことを
今ここで証明してみせろ。
何せ。
同じ理屈で
六条は手錠に繋がれてるんだからな?」
宮崎の演説は続いていた。
宮崎は菅野が【犯人】だと結論付けていた。
たしかに。
これまでの彼女の言動を考えると、
宮崎の推理にはある程度納得はできる。
しかし・・。
宮崎は菅野に
【犯人】ではないことの証明を求めたが、
それは悪魔の証明だった。
魔女は自分が魔女ではないことを
証明する義務がある。
つまり魔女狩り。
理不尽だが。
今この瞬間、
遊戯室は死臭漂う中世ヨーロッパへと
時計の針を巻き戻していた。
「わかったか。
ここは警察署でもなければ
裁判所でもないんだ。
儂らが従うのはゲームのルールだけ。
そしてルールには【探偵】は
”犯人を推理して中庭にある牢屋に
投獄することができる”
と書かれていただろう?
儂はそのルールに従って、
【犯人】と思う人物を牢屋へぶち込むだけだ」
老豚がドスの効いた濁声で凄んだ。
娼婦はショットグラスをカウンターに置くと
老豚に向かって中指を立てた。




