表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残春はさ迷える子羊達のコンチェルト  作者: Mr.M
第10楽章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/114

第64話 宮崎の推理①

遊戯室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「『スペードの2』が【犯人】という

 お嬢ちゃんの推理は正しい」

そう言って宮崎はジャケットの内ポケットから

葉巻を取り出した。

「はっ、馬鹿馬鹿しい。

 それならアタシは【犯人】じゃないわね。

 アタシは『クラブの4』だから」

菅野はグラスに残った酒を飲み干すと

「ふぅぅ」と溜息を吐いた。

宮崎はそんな菅野にチラリと視線を投げてから

改めて口を開いた。

「嘘吐きの言葉は信用できんな。

 お前さん、本当は何歳だ?」

僅かに菅野の顔色が変わった。

「女狐が随分うまく化けたが、

 20代を騙るのはさすがに無理があるぞ。

 わっはっは」

宮崎が口を大きく開けて笑った。

菅野は顔を真っ赤にするとカウンターに

空のグラスをドンッと置いた。

宮崎は満足そうに頷くと

葉巻を咥えて火を点けた。

「最初に六条が『クラブの8』を出した。

 あの時点で

 儂は【犯人】のカードが

 『スペードの2』だとわかっていた。

 これは当然のことだろう。

 ゲームのルールには

 ”すべてのカードの数字は連続している。

 同じ役職のカードについても同様である”

 と書かれていたからのぅ。

 儂の数字がAである以上、

 最大の数字が8であることは必然。

 とすれば【市民】の数字は3~8の6つ。

 つまり残った数字の2が【犯人】のカードだ。

 一方、

 【犯人】にも同じような推理が可能だが

 【犯人】には【探偵】のカードが

 Aなのかそれとも3なのかもしくは9なのか

 わからないということだ」

そこまで話すと

宮崎はゆっくりと煙を吐き出した。

「続いて平原が『クラブの5』を宣言した。

 そして西岡が『クラブの3』を宣言したことで

 【市民】のカードが

 3~8であることが判明する。

 蛇足だが。

 この時点で【犯人】は【探偵】のカードが

 Aか9のどちらかだとわかる。

 一方【市民】は

 【犯人】と【探偵】の数字に関しては

 Aと2。2と9。9と10。

 この3つのパターンがあって絞り込めない。

 それを踏まえて。

 『クラブの3』が宣言された時点で、

 まだ数字を公表していなかったのは

 菅野、鈴木、佐藤、死んだ郷田、そして儂」

宮崎はそこで口を閉じて皆の顔を見回した。

そしてその視線が千雪を捉えると

徐に口を開いた。

「ここで【犯人】は考えた。

 騙るなら今しかないと。

 初めに六条がカードを見せて以降、

 2人続けてカードを破棄していたことも

 【犯人】が騙るきっかけとなった。

 おそらく他の者も

 カードは破棄しているはずだと。

 空いている【市民】の数字は4.6.7の3つ。

 敢えて平原と西岡の数字に

 被せてもよかったが

 それをするなら死んだ郷田の数字を

 引き当てる博打をした方が

 分が良いと判断したんだろう。

 それにこの後、

 もし数字が誰かと被った場合でも、

 先に宣言した方が

 周囲への心証が良いと考えたのか?」

宮崎の視線に耐え切れなくなったのか、

千雪は顔を背けて俯いた。

宮崎はニヤリと微笑むと

視線を千雪から菅野に移した。

菅野はカウンターにもたれ掛かって

長い髪の毛先をくるくると指に巻いていた。

「そして。

 そこの女狐は『クラブの4』を騙った。

 結果。

 数字が被っている者は現れず、

 見事博打に勝ったんだ。

 つまり。

 『クラブの4』は死んだ郷田の数字だった。

 その女狐のカードこそが『スペードの2』だ」

宮崎は勝ち誇ったようにそう言うと

ビリヤード台の横の小さなテーブルの上にある

ガラスの灰皿で葉巻の火を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ