第47話 騙り 23時30分
「とりあえずこれで一応、
当面の問題は片付いた
ということでいいんだな?」
宮崎が「ふぅ」と美味そうに煙を吐いた。
「じゃあここからは
【犯人】について話し合うか?
郷田を殺した奴と・・
それにそこの女の話が本当なら
盗んだ毒をワインに仕込んだのも
その【犯人】の可能性が高いんだからな」
「あの・・。
平原さんが【犯人】だったという可能性は
ありませんか?」
僕は思い付いた希望的観測を口にした。
皆の視線が僕へ向けられた。
「そ、その・・。
郷田さんを殺したものの、
罪悪感に駆られて自殺したとか・・。
毒についてはどうやって知り得たのか
わかりませんが・・」
あり得ないことはわかっていたが、
それでも僕は続けた。
平原が【犯人】なら問題は解決だ。
毒殺犯が他にいるとは考えたくはない。
「残念だが。
その可能性はないな」
西岡が僕の考えをきっぱりと否定した。
「何で言い切れるんだ?
よくよく考えたら
鈴木くんの意見も一理あるだろう?
それにあの拳銃だ。
【犯人】でもない人間が
あんな物を所持していると思うか?」
宮崎はゆっくりと煙を吐き出した。
それを見た西岡が「はぁ」と溜息を吐いた。
「最初に役職を明かした時のことを忘れたのか?
まず初めに。
そこのおばさんが
『クラブの8』のカードを見せた。
で、次にあの死んだ婆さんが
『クラブの5』を宣言した。
そして俺が『クラブの3』
派手な姉ちゃんが『クラブの4』
だったよな?」
「そ、それがどうしたのよ?」
突然話を振られた菅野が
僅かに動揺しつつ頷いた。
「ゲームのルールにも書かれてただろ?
”すべてのカードの数字は連続している。
同じ役職のカードについても同様である”
と。
つまり。
カードの数字は被っていない」
「まぁね。
そもそも同じマーク同じ数字のカードなんて
トランプには存在しないもの」
「くっくっく。
その通り。
にもかかわらず。
あの婆さんは
2番目にカードの数字を申告したんだ。
あの時。
もし婆さんが適当な数字を答えていたとして、
その場合『クラブの5』を引いた
本当の【市民】がいたら
どうするつもりだったんだ?
そしてその【市民】が
カードを持っていたら?
実際に。
カードを破棄しなかった人間もいたんだ」
「そ、それは・・」
宮崎が口籠った。
「くっくっく。
わかっただろ?
あの状況で【犯人】が【市民】を騙るのは
リスクがあり過ぎるんだよ」
西岡の推理に皆黙り込んだ。
死神がふたたび救世主の片鱗を覗かせた。
いや。
ここは「名探偵」と呼ぶべきか。
兎に角。
この状況において西岡は頼もしい味方だった。
ただし。
彼が【犯人】だった場合・・。
僕はその考えを頭を振って否定した。
その時。
遊戯室の柱時計が
ボーンと23時30分を告げた。




