第40話 しじま 22時30分
遊戯室の柱時計が
ボーンと22時30分を告げた。
西岡は床に転がったキッチンバサミを拾うと
ビリヤード台に置いた。
「ふぅ。
世話の焼けるおばさんだぜ」
そう呟いて前髪を掻き上げた。
西岡はまるで壊れた玩具を見るような目で
倒れている六条を見下ろしていた。
「や、やるじゃない、坊や!
見直したわ!」
菅野がパチパチパチと大袈裟に拍手をした。
「ねぇ、凄い音がしたけど
死んだんじゃないの?」
「まさか。
人間そんなに脆くねえよ」
六条はピクリとも動かなかったが、
微かな呼吸が確認できた。
「ねぇ、彼女をどうするの?
このままにしておくの?」
「そうだな。
また暴れ出したら面倒だな。
何か拘束できる物があればいいんだが・・」
西岡は部屋の中をぐるりと見回した。
「それなら、アタシがいい物を持ってるわ。
ちょっと待ってて。
取ってくるわ」
そう言って菅野は部屋から出ていった。
「これで一件落着だな。
鈴木くん。
『マティーニ』を頼む」
宮崎がカウンターの椅子に腰を下ろした。
僕は菅野が出ていったドアの方を
何気なく見つめていた。
「おい、鈴木くん!
聞いてるのか」
「鈴木さん、宮崎さんが呼んでますよ」
車椅子の佐藤が僕の横にきて囁いた。
「は、はい!」
僕は慌てて返事をした。
「何をボーっとしとるんだ。
『マティーニ』だよ。
さっさと作ってくれ」
「は、はい、すみません」
僕は急いでカウンターの裏へ回った。




