第38話 凶器②
「ちょっと、何よこれ?」
「・・どうして・・このような物が・・」
驚いた顔をした菅野と
不安げな表情を浮かべた佐藤が
ビリヤード台の上に置かれた黒く光る拳銃を
じっと見つめていた。
拳銃の隣ではキッチンバサミが
バツが悪そうに自らの存在をアピールしていた。
六条の部屋を出た後、
僕と宮崎そして西岡の3人は
念のために死んだ平原の部屋も調べたのだ。
そして。
平原の荷物から拳銃を発見したのだった。
「とりあえず今は拳銃のことよりも、
そこのおばさんの話を聞いた方がいいな」
西岡が少し離れた所でポツンと立っている
六条の方を指差した。
彼女は焦点の合わない視線を天井へ向けていた。
その表情からは完全に感情が消えていた。
無表情。
僕はそんな六条を見てブルっと体を震わせた。
「・・せん」
その時。
六条の口元が小さく動いた。
「何だって?
何て言ったんだ!」
宮崎がやや大きな声で聞き返した。
「・・りません」
六条はビリヤード台の方へ顔を向けたが、
その瞳はいまだ空間をゆらゆらと彷徨っていた。
「はっきり声を出せ!
聞こえんだろうが!」
宮崎が徐々に
苛立ちを募らせていくのがわかった。
「わ、わたしはそんな物・・
し、知りません。
こ、これは罠です・・」
六条がボソボソと小さな声で答えた。
「そんな言い訳が通用するか!」
宮崎が声を荒げると
六条の体がビクッと震えた。
「・・誰かが六条さんに
罪を被せようとしているのは
確かだと思います」
ふいに佐藤が口を挟んだ。
「キッチンバサミの紛失が明らかになることは
盗んだ人にもわかっていたはずです。
それなのに。
すぐに見つかるようなところに
隠すでしょうか?
それに身体検査を提案したのは
六条さん本人です」
佐藤が六条を庇った。
しかし。
「身体検査を言い出したのは
たしかにそこのおばさんかもしれないが、
部屋を調べようと言い出したのは
そっちにいる派手な姉ちゃんだぜ」
西岡が僕の考えていたことを代弁した。
死神の前では堕天使の慈悲も無力だった。




