第31話 魔女の正体
僕と西岡は協力して
ベッドの上の郷田の死体の横に
平原の死体を並べた。
「あんた。
見た目はアレだけど、
随分と肝が据わってるんだな」
「これでも動揺してるんだけど・・」
西岡の挑発ともとれる発言に
僕は適当に返事をした。
それに関して言えば
全く同じことが西岡にも当てはまるのだ。
西岡は平原が倒れた時に、
すぐに駆け寄っていた。
あんな場面に遭遇して
咄嗟に行動できる人間がどれほどいるだろう。
さらに西岡は瞬時に死因まで特定していた。
その知識はとても素人とは思えなかった。
彼のことを死神と名付けたが、
それは誤りで「救世主」たり得るかもしれない
と密かに反省した。
「気付いたか?」
部屋を出ようとしたところで
ふいに呼び止められた。
僕は振り向いて西岡を見た。
長い前髪の奥の生気のない目が
僕を見据えていた。
この表情にその目。
全身をまとうどこか陰湿な雰囲気。
やはりこの男は死神だ。
「・・君は何か気付いたのかい?」
僕は逆に問い返した。
すると死神はベッドに横たわる魔女の死体を
指差した。
「この婆さん。
男だぜ」
一瞬、西岡の言葉の意味がわからなかった。
「・・お、男?」
僕は首を傾げた。
「ああ。
だから正確には
『婆さん』じゃなくて
『爺さん』になるけどな」
そう言うと西岡は平原のドレスの裾を
捲り上げた。
女性用の下着の中央部分が
不自然に盛り上がっているのが見えた。
「このことは他の奴らには秘密だぜ」
そう言って西岡は「くっくっく」と笑った。
「どうして・・?」
なぜ隠す必要があるのか。
僕はふたたび首を傾げた。
「この婆さんが爺さんだったとして。
何の問題もない。
参加者の個人的な事情はゲームには無関係だ。
それに。
余計な情報は混乱を招くだけだろ?」
たしかに。
多すぎる情報は混乱を招く。
しかし。
この情報は本当に何の役にも立たないのか。
僕は僅かに逡巡したものの、
最終的には首を縦に振った。
西岡が満足そうに頷いた。
「・・ところで、あんたは誰だと思う?」
「えっ?」
「犯人だよ、2人を殺した犯人」
西岡に言われて
僕は平原が死んだ時の状況を思い返した。
平原の隣に座っていたのは宮崎。
そして対面に座っていたのは西岡。
毒を仕込むなら位置的にこの2人が怪しい。
「君の考えはどうなんだい?」
僕は答える代わりに問い返した。
この賢い死神の頭の中が知りたかった。
「自分の考えは話さずに
情報だけを得ようっていう作戦か。
案外食えない男だな、あんた」
「い、いやそういうわけじゃ・・」
僕は慌てて否定した。
「ま、いいさ。
いずれ犯人はボロを出すだろうから」
そして西岡はふたたび「くっくっく」と笑った。
「とりあえず。
さっさと戻って飯を食おうぜ」
結局、西岡にははぐらかされたが、
死体を運んだ直後にもかかわらず
平然と食事をしようとしている
この男の図太い神経に
僕は僅かばかりの恐怖を覚えた。




