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第109話 可能性 佐藤千雪の視点
応接室の柱時計が
チッチッチッと時を刻んでいた。
男が肩を上下に動かしながら
辛そうに呼吸をしていた。
私は小さく息を吐き出した。
「よく考えて下さい。
実際に確認できたのは
郷田さんのポケットから見つかった
『クラブの2』と
貴方の持っていた『クラブの6』だけです。
つまり。
【市民】の数字は
2から6までしか確定していません」
私がそう言うと
男は苦しげな表情で眉をひそめた。
「まだわかりませんか?」
私は先ほどとまったく同じ質問を男に投げた。
男が苛立たしげに首を振った。
私は「はぁ」と大袈裟に溜息を吐き出した。
「【探偵】の数字はA。
【市民】の数字は2から6まで。
そして。
【犯人】の数字は7と8。
その可能性を見落としていませんか?」
男の目が大きく見開かれた。
続いて男の唇がプルプルと震えた。
男が口を開きかけたが、
ただパクパクと動いただけで
言葉は発せられなかった。
私はそんな男に微笑みかけた。




