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残春はさ迷える子羊達のコンチェルト  作者: Mr.M
楽章間

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101/114

第101話 狼

廊下を歩きながら

僕は左手に持った小さなトートバッグから

はみ出ている包丁の柄へ目を落とした。

それは。

カードを引いた後、

男装の麗人から手渡された物だった。

「ゲームで使うことがあるかもしれません」

彼女は無表情でそう言った。

僕は訳がわからないまま

その物騒な支給品をバッグに突っ込んだのだ。


廊下の突き当りに階段があった。

僕はその階段を上った。


2階の廊下は建物の奥から正面に向かって

真っ直ぐに伸びていた。

そして。

廊下の右側に部屋が並んでいた。

その数は5つ。

2階の廊下には1階と比べて

明らかに違う点があった。

各部屋のドアの対面に窓があり

外の光が廊下に射し込んでいた。


僕は廊下を奥へと進んだ。

静かだった。

物音一つ聞こえなかった。


男装の麗人は

招待客が何人なのか言わなかったが、

僕も敢えて聞かなかった。

変に勘繰られて

僕が『鈴木太』ではないことが

バレると面倒なことになると考えたからだ。

兎に角。

しばらくの間。

ここに身を隠しておくことに決めた。

朝臣市の山奥。

周囲には人家もない。

これほど身を隠すのに適した場所は無い。


僕は何気なく一番奥の部屋のドアを開けた。

その時。

部屋の奥に立っていた男が振り向いた。

「な、何だよ、ノックくらいしろよ」

男の表情には驚きが広がっていたが、

それは僕も同じだった。

てっきり招待客は全員応接室に集まっている

と思っていたのだが。

「お前も参加者か?

 ・・にしては。

 随分と大人しそうな顔をしてるな。

 ま、どうでもいいけどよ。

 俺はこの部屋を使わせてもらうぞ、

 文句はねえよな?」

男に近づきながら僕は頷いた。

「で。

 何人集まってるんだ?」

僕は無言で首を振った。

「何だよ、まだ誰も来てねえのか?

 俺としては門の所にいた女でいいんだがな。

 で、お前はどんな女が好みなんだ?」

男はニタァと口元を歪めると

「ひっひっひ」

と下卑た笑い声をあげた。

男との距離が2メートルまで迫ったところで

僕は足をとめた。


「何だ?

 ノリの悪ぃ奴だな」

男が煙草を咥えた。

そして。

火を点けようと視線をそらしたその瞬間、

僕は男との距離を一気に詰めた。

左手のバッグから取り出した包丁を

刃を横に倒して男の心臓目掛けて突き刺した。

「ぐぶぉ、お・・おい・・」

男の目が大きく見開かれて

その口から呻き声が漏れた。

男の左手が僕の肩を掴んだ。

僕は体重をかけて

さらに包丁を男の体の奥へと刺しこんだ。

男が苦悶の表情で後ずさりして、

そのままベッドの上に倒れ込んだ。

僕は両手で包丁の柄を持ったまま

男の体に圧し掛かった。

徐々に男の体から力が抜けていくのがわかった。

僕は立ちあがって男を見下ろした。

男の目は真っ直ぐ天井を見ていたが、

その輝きは失われていた。


男の胸元に突き立っている包丁を

引き抜こうか迷ったが、

僕はそのままにしてユニットバスに入った。

右手に付いた僅かな返り血を綺麗に洗った。

それから。

鏡に映った自分の体を隅々まで観察して

服に目立った汚れがないことを確認した。


いきなり殺したのは拙かったか。

ある程度の情報を聞き出してから

殺すべきだったか。

せめてこの集まりの目的とその人数くらいは。

いや。

関係ないか。

どうせ皆殺しにするのだ。


僕は乱れた服を整えてから部屋を出た。

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