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第6話 人間と魔人

「なんで、ジェネラルなんかがこんなとこに!」


 スレイスが悲鳴のような声を上げた。


 先日の戦闘で、ぼくに怪我をさせた相手がオークジェネラルだ。


 そいつは何とか『同期集団』で倒せたけれども、その際、ぼくは怪我を負った。


 普段はいるはずがない場所でジェネラルらしきオークを倒したため、現在、本当にオークジェネラルか鑑定能力が高い別のギルドに持ち込んで調べているところだ。


 ぼくが休んでいる間に探索者ギルドから『同期集団』が受けた配達依頼の内容が、それだった。


『同期集団』の魔物遭遇率が本当に高いのかどうかは分からない。


 けれども、今までずっと引きが良いとは言われていた。


 例えばゴブリンの群れに混ざってホブゴブリンやゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジなど、ちょっと割のいい手強い相手が含まれているといった具合だ。


 倒せればラッキーだけれど駄目だと殺される危険がある奴だ


 幸い『同期集団』は、うまい具合に切り抜けてきた。


 そのあたりも、ぼく以外のメンバーの効率的なランクアップにつながったのだろう。


 オークアーチャーは、たまに見かけていたけれども、つい先日までこのあたりでオークジェネラルなんか見たことなかった。


 ぼくが別のパーティーに入っても魔物の引きが良いってことは『同期集団』の引きが良いんじゃなくて、ぼく自身の引きが良かったということになる。


 それかオークジェネラルが大量発生中のどちらかだ。


 そんな馬鹿な。


 粗末なぼろ布を腰に巻いた程度のゴブリンと違ってオークはそれなりの武器と防具を身に着けている


 そのため、倒すのに手間がかかる面倒な相手だった。


 人型種族だけあって複数になると連携もしてくるため、なお厄介だ。


 オーク自身は自分たちで武器や防具を作るような頭と器用さは持っていない。


 もともと殺した人間から奪ったり他の魔人(・・)や人間から手に入れた物を使うだけだ。


 強いオークほど強い武器や防具を揃えて、さらに強くなっている傾向があった。


 自分で武器や防具を作れないからといって上手に使えないわけではない。


 それを言うなら普通の探索者は武器や防具なんか作れなかった。


 作れるのは鍛冶屋とか特殊な技術を持った人だけだ。


 剣の達人だって自分で剣なんか作れない。


 それでも剣の達人は剣の達人だ。


 作れなくても使うのは上手くできる。


 オークも同じだ。


 脳筋集団だが戦闘に特化した強さを持っていた。


 さすが魔人の先兵(せんぺい)と呼ばれるだけはある。


 ちなみにゴブリンは魔人の雑兵(ぞうひょう)だ。


 人間と魔人の違いは簡単だ。


 意思の疎通の可否はともかくとして同族も含めて殺した人型種族を自分たちの食べ物としても利用するのが魔人、利用しないのが人間だ。人間はオークなんか食べない。


 人間は裸猿人族(ヒューマン)だけでなく猫人族(キャッティー)熊人族(ベアール)など多岐にわたる。


 魔人もオークだけでなくゴブリンやコボルトなど様々いた。


 両方合わせて人型種族だ。人型種族同士だと、どの組み合わせでも子供ができる。


 何が言いたいかというとオークの脳味噌が筋肉でできているからといって喰われたり、はらま(・・・)されたくなければ絶対に侮るな、という話だ。


 ぼくの場合は喰われたくない一択だ。


 オークアーチャーの二矢目が飛来した。


 相変わらずヘイトは、ぼくに向いていた。


 何とか身を躱す。


「誰かアーチャーを!」


 ぼくは叫んだ。


 矢で狙われながら接近戦も行うなんて冗談じゃない。


 抜いた剣を持ち、オークジェネラルが、ぼくめがけて駆けてきていた。


 ぼくは腰から、ぴかぴか輝くロングソードを引き抜いた。


 何かの魔法がかかった魔剣。


 ずしりとした重みが両腕にのしかかった。


 スレイスパーティーの戦士職がオークジェネラルを迎え討とうと前に出た。


 ジェネラルが盾を振るった。


 戦士職の突く剣を盾で払い、その勢いのまま戦士職自体を盾で殴って吹き飛ばした。


 吹き飛んだ戦士職は木の幹に背中からしこたま打ち付けられた。


 ずり落ちて動かない。


「回復っ!」


 ぼくは回復職に指示を出した。


 慌てて戦士職に駆け寄っていく回復職。


 ジェネラルは、どちらにも見向きもせずに、ぼくまっしぐらだ。


 アーチャーの第三矢。


 駆け寄ってくるジェネラルの上を越えて矢が飛んできた。


 重たいロングソードを振るって矢を切り落とす。


 魔法職の『眠り』の呪文が矢を射終えたアーチャーの意識の隙をとらえた。


 アーチャーが崩れ落ちる。


 駆け寄ったスレイスがアーチャーの首を撥ねた。


 これで遠距離の心配はなくなった。

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