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第50話 食事

「探索者ギルドのライネットギルドマスターからオークジェネラルの出没に警戒するよう情報共有がなされています」


 若い兵士が、ぼくの言葉を補足するようにハーマイン副団長へ進言をした。


 ライネット?


 どこかで聞き覚えがある名前だ。確か隣町の探索者ギルドのマスターだった。


 高い鑑定の能力を持った人だ。


 ノルマルたちが休養の必要なぼくを残して倒したオークの死体がジェネラルで間違いないか確認してもらいに行った相手が確かライネット氏だ。


 近隣のいくつかの探索者ギルドのマスターを統括する中核的ギルドマスターだった。


 鑑定結果は聞けていないけれども、あのオークがジェネラルであったのは間違いない。その後、嫌になるほど遭遇した。


「多分、そのオークジェネラルの集落が、ここです」


 ぼくは地図に刺されたばかりのピンを指さした。


「オークは、ここで『長崖(グレートクリフ)』を上り下りできます。王国側から崖を降りて下にある集落に出入りしていたのではないかと思います」


「そういえば君の装備はオークの物だな? 匂うぞ。なぜ、そんな物を着ている?」


「装備を、ぼろぼろにされてしまったので、倒したオークから奪いました。ないよりはマシだと思って。逃げるためのカモフラージュです」


「だが、そこまでの装備はジェネラルクラスだ。君はFランクだと聞かされていたが?」


 オークジェネラルは本来百人規模の軍隊を率いている。ぼくたちのような探索者よりも、むしろ兵士たちに馴染みあるオークだ。副団長も過去に遭遇しているのだろう。


「先日『同期集団』のパーティーランクはCになりました。私は結成当初からパーティーのメンバーですが探索者ランクはFのままです。カードに問題があると疑っています」


 暗にぼく個人ではなく、パーティーでジェネラルを倒した、とも受け取れる言葉を口にした。


 オークジェネラルの討伐適正パーティー(・・・・・)ランクはC相当だ。


『同期集団』であればオークジェネラルを倒せても問題ない。事実、ライネット氏に鑑定を依頼したオークジェネラルの死体は『同期集団』が倒したものだった。


「カードの記載はFランクだが君自身としてはCランク相当の力はあると?」


「だったらいいな、と思っています」


「ふむ」


 副団長は腕を組んだ。


「探索者ランクについて私から言えることは何もないが『長崖(グレートクリフ)』の崩落は君の言うとおり緊急事態だ。軍としても早急に現地を確認して対策をとる必要がある。すまないが今すぐ案内を頼みたい。馬には乗れるか?」


 乗れるわけがない。


「そういう話になるだろうと思っていましたので案内はやぶさかではありませんが馬には乗れません。その前に、できたら何かまともな食事をいただけませんか? ずっと野宿だったので」


 マリアたちと別れた後、ぼくは崖の上に残したままだったベースキャンプで帰還に必要そうな荷物をかき集めて、それを持った。持てない分は、そのままだ。


 襲撃の前夜食料が残り少ないという話をマリアたちにした覚えがあったが、ぼく一人が帰るための量には十分だった。


 ただし、いい物は先に食べてしまっていたので干し肉とか簡単に齧れるような携行食しかない。


 帰路は一人なので周囲への警戒を怠るわけにはいかず『半血(ハーフ・ブラッド)』の食事当番をしていた時のような手間をかけた食事なんかできなかった。


 副団長は、ぼくの訴えに大笑いした。


「今すぐとは言ったが、こちらにも準備がある。食堂で好きなだけ食うといい」


 副団長は、「おい誰か」と部屋の外に呼びかけ、やってきた兵士に、ぼくを食堂に案内させた。


               ※※※※※


「どう思う?」


 士官にバッシュを食堂に案内させた後、副団長は同席していた若い兵士に訊ねた。


「やや口が回りすぎるきらいがありますね。まるで想定された質問への答弁です」


「アルティア神聖国の動きについて諜報部の意見は?」


 若い士官は諜報部に所属していた。


「大分、食料事情が悪いようです。いつ暴発しても不思議はありません」


「そんな相手の目の前に自分たちだけが知る国境の抜け穴か。飛びつきたくなるな」


「はい」


「彼の食事が済み次第、斥候を出す。明日にでも、まず千人を現地に向かわせよう。名目はオーク狩りだ」


「ランクの件と人となり(・・・・)について探索者ギルドに確認します」

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