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第35話 最後尾

 案の定、オークたちは誰も、ぼくが裸猿人族(ヒューマン)である事実には気づかなかった。


 ロープ伝いに崖上からぼくが降りてきた事実にも気付いていない。


 オークたちの注目は石壁付近での騒ぎだけだ。


 手近な建物から手に手に武器を持ったオークたちが出て来ては石壁方面へ駆けていく。


 けれども、前方は長屋から出てきた他のオークたちで塞がっていたため、すぐさま小走りになり歩きになっていった。やがて完全に先が詰まって、皆、足を止めていく。


 何が起きているか崖の上からならともかく同じ地面の高さに降りてしまうと石壁付近で行われている戦いの様子は居並ぶオークたちの群れに阻まれて、まるで見えない。


 かろうじてルンが石壁の上で戦っているとはわかるが下からオークアーチャーなどに弓で狙われだしたため見える位置には出て来なくなっていた。


 厚みのある石壁の中央部か表に近い位置で戦っているのだろう。


 足止めされたオークたちは騒然としてオーク語で何か喧嘩腰に言い合っていたが、ぼくにはわからない。


 前の様子がわからないとか、何事だとか、そんなことでも言ってるのだろうか?


 想像するにマリアを遠巻きにオークたちが囲んで、その後ろに次のオークが止まって、さらに次が溜まって、どんどん滞留を起こしたのだ。


 ぼくは、そんなオークたちの間を抜けて、なるべく前に出ようとした。


 オークと体がぶつかりあって、ぎろりと睨まれた。


 みんな殺気だっているから、そのまま殴り掛かられそうである。


 オークの腕力で殴られたら、ぼくの体なんか一発でぽっきりだ。


 殴られなくても揉めて、万が一、ぼくが裸猿人族(ヒューマン)であるとバレれば寄ってたかって、あっという間に八つ裂きにされる未来が待っている。


 生きてマリアたちと合流したい。


 けれども、そのオークは、ぼくを見るや積極的に道を開けて、ぼくを前へ通してくれた。


 ぼくは、全身をオークジェネラルから奪った装備で固めている。


 ということは通常のオークよりも立派な身なりをしているというわけだ。


 オークからすればオークジェネラル様である。


 見れば、ぼくだけではなく他のジェネラルや、アーチャー、リーダーといった肩書付のオークたちは、どんどん道を譲られていた。


 さっきの言葉は、ただのオークでは相手にならないから肩書付は前に出ろ、ということらしい。


 マリアたちは、まだ生きて戦っているのだ。


 問題は、もちろん敵の数と自分の体力。


 早く隙間通路を開いて味方を引き入れないと全員討ち取られる未来しか思いつかない。


 というか、速攻で隙間通路を奪えず、こんな状況になっているという時点で作戦は予定通りではないはずだ。


 失敗なのか、まだ挽回ができる見込みが残っているのか?


 失敗だとしても、はたして脱出はできるのか?


 何とか石壁の表側に逃げ出し、『半血(ハーフ・ブラッド)』本隊の中に逃げ込めれば助かるかも知れない。


 さっきまで、ぼくの周りには、ただのオークしかいなかったが今は肩書付のオークしかいなくなっていた。


 オーク。


 オークアーチャー。


 オークメイジ。


 オークリーダー。


 オークジェネラル。


 探索者による評価の低い順だ。


 乱戦なのでアーチャーやメイジは遠距離攻撃の強みを生かせない。


 リーダーでは力不足。


 畢竟(ひっきょう)、ジェネラルの出番だった。


 単体だったらジェネラルだとしてもマリアたちの相手には力不足だ。


 だから、オークジェネラルばかり三十人ほどがまとまってマリアと対峙する形で、ぼくの前に立っていた。


 ぼくは、その最後尾に、なぜかこっそりと混ざっている。

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