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第14話 解呪

 幸い、倒れていたのはバッシュではなかった。


 探索者の声にノルマルたちが駆け付けると鎖帷子を着たオークが、うつ伏せに倒れていた。


 首から上がない。


 近くにはオークの物らしき剣も落ちていた。


 うつ伏せの状態で一通り確認した後、ライネットが倒れていたオークを仰向けにひっくり返した。


 オークの胸からはナイフの柄が生えていた。


 オークは鎖帷子を貫いて心臓にナイフを突き立てられていた。


「オークジェネラルで間違いない」


 ライネットが鑑定結果を口にした。


「心臓か首か、どちらが致命傷になったのかはわからないな。切断面を見ると立ったまま一撃で背後から首を切り落とされたようだ。倒れた状態で首を落とした断面ではない」


「バッシュのナイフだ」


 ノルマルがオークジェネラルの胸からナイフを力ずくで引き抜いた。


 死後硬直で肉が固まって抜きづらくなっていた。


「間違いないか?」


「いつもバッシュと魔物の解体をしていたから間違いない。その時、あいつが使っていた物だ」


「そうか。これは想像だがナイフを持った相手と戦っていたオークジェネラルの首を誰かが背後から撥ねたのだ。その直後か直前か同時か、いずれにしてもほぼ同じタイミングでジェネラルの心臓にナイフが突き立てられた。このナイフの傷は下から突き上げるようにできている。立ったまま刺された傷だ。そう考えると辻褄が合う」


「バッシュの戦法だ。あいつがひきつけて俺たちの誰かが背後からとどめを刺す」


 ノルマルたちは頷き合った。


「誰か助けが間に合ってくれたのか?」


「なぜナイフなんかで?」


「バッシュはどこに行った?」


「どこかのパーティーと合流できたならギルドに戻ったのかも知れない」


 捜索を続けていた別の探索者から近くで声が上がった。


「ここに折れた剣が落ちているぞ」


 根元付近で折れた刃と柄が近い距離に落ちていた。


 ノルマルたちは柄に刻まれた装飾に見覚えがあった。


 折れてなお引き込まれそうなほど、ぴかぴかな刃の輝きにも。


「バッシュの剣だ」とノルマル。


「だからナイフなんか使ってたのか」


 ノルマルはバッシュの剣を拾おうとした。


「触るな」


 途端にライネットが一喝した。


 ノルマルは、びくりと手を止めて拾おうとした姿勢から立ち上がった。


「どうしたんです?」


「その剣から不自然な『魅了』を感じる」


 ノルマルは意味が分からず不思議そうな顔をした。


「呪われているということだ」


 ライネットは『解呪』の呪文を唱えて落ちているバッシュの剣を指さした。


 折れた剣の刃と柄が光に包まれた。


 刃と柄から、しゅわしゅわと泡のような何かが漏れ出て空気中に消えて行った。


 光が消えると今までぴかぴかに輝いていた刃は、ひどい赤茶色の錆に覆われていた。


 剣の形をした、ただの平たい赤錆びた鉄の棒だ。


「これが剣本来の姿だ」


 とても物が斬れる剣ではない。


 相手にダメージなど与えられるはずがなかった。


 せいぜい鉄の棒で殴った程度の威力だろう。


 斬る効果ならば、ただのナイフのほうが数段マシそうだ。


「え! もしかしてバッシュの剣、ぴかぴかに見えていただけで本当はこんな(なまく)らだったってこと?」


「そうだ。斬れない剣なんか手放して買い替えれば良さそうだが、本人は呪いで魅了されているから剣が好きすぎて、そんなこと思いもしないんだ。思い当たる節は?」


「あいつ、寝る時も風呂に入る時も絶対に体から剣を離さなかった」

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