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007

意識の浮上は、光の閃光ではなかった。濁った井戸の底から、ゆっくりと、苦痛に満ちて引き上げられるような感覚。


最初に訪れたのは、リズムだった。


鈍く、重い衝撃。間。また衝撃。


一つ一つの揺れが、胃を鈍い痙攣で締め上げ、酸っぱい苦みを喉元までせり上がらせる。世界は回転しているのではない――嵐の中の甲板のように、揺れていた。だが、鼻孔を突くのは塩辛い風ではなく、濃密で、息が詰まるような臭気。古い汗、湿った革、何か魚臭いもの、そして安物のタバコに似た、えぐみのある匂いが混じり合っていた。


目を開けようとした。瞼は固まり、乾いた泥で睫毛が重い。ようやくこじ開けた時、自分が何を見ているのか理解できなかった。


地面が、近すぎた。


苔むした木の根が、緑と茶色の帯となって、ぼやけながら通り過ぎていく。俺自身の両手が、まるで布人形のように、だらりと顔の前に揺れていた。


俺は逆さまに吊るされていた。誰かの肩に、ジャガイモの袋のように担がれて。


「……ぐる……Osar……」


すぐ側で、低く、唸るような声がした。その音の振動が、俺を運ぶ者の体を伝わり、俺の胸郭に響いた。


「Mov! Ni sed!」


後ろから、別の声が鋭く怒鳴った。甲高く、どこか空気が漏れるような音だ。


言葉は異質で、粗野だった。旋律はなく、機能だけがあった。会話のためではなく、命令のために削り出された、短く、無骨な音。


身じろぎしようとした。

――間違いだった。


一瞬、目の眩むような痛みの閃光が右肩を貫き、背骨を駆け下りた。俺は呻き声を抑えきれなかった。歯の間から漏れた、惨めで、押し殺された喘ぎ声。


俺を運んでいた男が、立ち止まった。服の下の筋肉が、木のように硬く強張るのを感じた。


「Mas Amn?」と、男は唸った。問いかけるような響きがあった。


俺の体は揺さぶられ、担ぎ直された。肋骨が男の肩にめり込み、肺に残っていた空気が絞り出される。この男――あるいは生き物か、顔は見えない――は、巨大だった。異常なほどに。俺は決して軽量ではないし、この重力の強い世界では、さらに重いはずだ。それなのに、男は息一つ乱さず、戦車のような確実さで、不整地を歩いていく。


再び地面が見えた。後ろを歩く者のブーツ。縄で締められた粗末な革、コルクのような分厚い靴底。丈夫そうな、濃紺の生地のズボンがブーツに押し込まれている。


彼らは腰布一枚の蛮族ではなかった。これは衣服だ。機能的に、仕立てられた。


「海賊か?奴隷商人か?」


思考は閃いたが、生理的な苦痛に押し潰されて消えた。


頭に血が上り、こめかみが脈打ち、頭蓋骨が今にも張り裂けそうだった。目の前を、赤い円が漂う。再び吐き気が込み上げてきた。


「Tac!」後ろからの、短い叱責。「Mov ka Zul!」


Zul?Zulとは何だ?一言も理解できない。担ぎ手は、再び前進を始めた。


衝撃。間。また衝撃。


俺は分析しようとした。それが、意識を保つ唯一の方法だった。


両手は縛られている。……そうだ――手首が背後で、何か硬く、繊維質なもので締め上げられている。足も同じだ。手際がいい。過度な残酷さはない――ただ、無傷で目的地まで運ばれるべき、荷物として。殴られるよりも、その事実の方が恐ろしかった。


俺の運ばれ方には、個人的な感情が一切なかった。俺は主観的存在であることをやめた。客体になった。資源に。


網にかかった魚は、こんな気分なのだろうか、と俺はぼんやり考えた。


影が濃くなるにつれて、森も変わっていった。煙の匂いが強まり――そこに、焼いた肉の香ばしさと、酢のような酸っぱい匂いが混じり始める。


胃が裏切るように収縮した。空腹は、恐怖よりも、痛みよりも、屈辱よりも強かった。


不意に、担ぎ手が濡れた根に足を取られた。体勢を崩しかけたが、俺を落とさないように強く掴み直し、持ちこたえた。


「うぐ……Oth-Tul……」と、不満そうに呟いた。


地面が間近に見えた。後ろの人物が落とした何かが、泥の中で光っている。ナイフか?いや、革紐のついた、幅広の骨製の錐のようなものだ。


二番目の足が止まった。泥に汚れた筋のついた、細く色白な手がその道具を拾い上げる。手首に彫られた刺青が一瞬見えた――黒い円から三本の波線が広がる模様。


誰かが近づいてきた。俺の顔に、何かが触れる感触。無骨な指が顎を掴み、頭をぐいと捻った。


「Vis!」女、あるいは少年の声だ。嗄れているが、他の者たちよりは高い。「Il amn-in」と、確認するように言った。


逆さまの世界で、顔が俺を覗き込んでいた。女の顔だ。不揃いに切りそろえられた、日に焼けた麦わら色の短い髪が、汚れたバンダナからのぞいている。肌は浅黒く、荒れていて、細かい傷跡で覆われていた。


だが、その瞳……


瞳は、鮮やかな琥珀色をしていた。光に反応して収縮する、垂直の瞳孔。これは人間ではない。あるいは、完全な人間ではない。


彼女は、職人が道具を検分するように、捕食者のごとき好奇心で俺を吟味していた。それ以上でも、それ以下でもない。唇が動き、歯が覗く――人間より少し鋭いが、獣の牙ではなかった。


「Osar」と彼女は言った。俺の視界の外にいる誰かに向かって。「Ni Oth」


彼女が顎を放すと、俺の頭は再び力なく垂れた。


「……水……を!」


ひび割れた唇から、声にならない声で喘いだ。


「……飲ませ……て……」


言葉は、惨めに響いた。


彼らはもちろん意味を理解しなかったが、イントネーションは察したらしい。笑い声が聞こえた。


「Sel?」と、後ろの声が聞き返した。


「ハッ!Sel ka Zul だ」


誰かが担ぎ手の背中を叩き、「Mov!」と命じた。


それを聞くと、男は再び歩き始めた。


あまりに長く、頭に血が上りすぎていた。耳鳴りは、もはや途切れのない轟音と化している。目の前に黒い斑点が浮かび始め、木の根を、ブーツを、地面を覆い隠していく。


再び意識が救いようのない虚無へと沈む直前、最後に感じたのは、足音の変化だった。


—————————


腐った魚の袋でも下ろすかのように、俺は地面に投げ出された。背中が、乾いた塩で覆われた木の幹に打ち付けられ、ねじれた肩の痛みに歯を食いしばる。痺れた指先には、無数の針が燃えるような感覚があった。


空気が変わった。ジャングルの淀んだ蒸し暑さの代わりに、鋭く、冷たい匂いが肺に流れ込む。塩、ヨウ素、そして何か――腐りかけた海草のえぐみのある香り。そして音…低く、すべてを貫くような轟音。大地そのものが震えているかのようだ。


海だ。


口の中の舌は、乾いてざらついた石のようだった。瞼には砂でも撒かれたかのように重かったが、なんとかこじ開ける。


三人がいた。俺を運んできた巨人は、凝った首を揉みほぐしている。二人目の刺青の男は、石で短い、鋸歯状の刃を研いでいた。三人目――琥珀色の瞳の女――が、こちらへ歩み寄ってきた。


彼女がしゃがみ込むと、再びあの異質な、麝香のような匂いがした。その視線に悪意や好奇心はなく、ただ事務的なだけだった。品定めをするように。これにいくらの値がつくか、決めるように。


木のように硬い指が、俺の顎を掴んだ。彼女は無遠慮に俺の下瞼を引き下げる。俺は反射的に身を捩った。


「Vis... Ad-Ra」と、彼女は嗄れた声で言った。


異質で、喉の奥から出すような音。一言も理解できない。彼女は俺の片目を調べ、次にもう片方の目でも同じ言葉を繰り返した。まるで診断を下しているかのようだ。「Ad-Ra」。俺はその音を記憶した。その響きには、どこか…事実を述べるような?あるいは、失望のような響きがあった。俺には分からない。


次に、掴む場所が変わり、指が俺の頬を圧迫し、無理やり口を開かせた。歯医者で感じるような、屈辱的な無力感。だが、滅菌された手袋の代わりに、汚れて爪の欠けた指があった。彼女は俺の歯をコツコツと叩いた。


「Zant... Mik」


彼女は舌打ちをした。「Mik」という言葉は、短く、侮蔑的に響いた。それが何を意味するにせよ、目にしたものが気に入らなかったのだろう。


彼女は俺の頭を放し、腕へと移った。上腕二頭筋を、そして前腕を確かめるように揉む。かつては少しばかり誇りに思っていた俺の筋肉が、彼女の鉄のような握力の前では、まるで生地のようだった。


「Ni Tul」と、彼女は判決を下した。


これなら、少し分かり始めたかもしれない。「Ni」。森で聞いたことがある。一人が止まった時、もう一人が叫び、再び歩き出した。「Ni sed!」と。「Ni」は禁止だ。「~するな」。そして「Tul」は、おそらく足元の土のように硬い、あるいは頑丈な、という意味か。骨のことかもしれない。「硬くない/頑丈じゃない」。どんな論理にでも必死に食らいつこうとする脳が、最初の微かな推測を立てた。


彼女は立ち上がると、他の二人に向き直り、短い言葉をいくつか投げかけた。


「Osar... Ni Tul」


彼らは俺を見た。刺青の男が、ふんと鼻を鳴らす。つまり、「Osar」が俺のことだ。そして俺は「Ni Tul」なのだ。


刺青の男が水袋を取り出すのが見えた。水が揺れる音が聞こえた。その瞬間、他のすべて――痛みも、恐怖も、屈辱も――が背景に退いた。残ったのは、ただ一つ。渇き。すべてを飲み込み、狂気に駆り立てるほどの。


「Sel...」と、俺は喘いだ。彼らが繰り返していた言葉を思い出して。「Sel...」


刺青の男の動きが止まり、視線が俺へと移る。その顔に、ゆっくりと残酷な笑みが広がった。彼は俺に近づいてくる。俺は、縄が許す限り身を乗り出し、水袋に目を釘付けにした。男はそれを口元へ運び、大きく一口飲む。喉仏が動くのが見えた。


そして、かがみ込み、俺の顔に唾を吐きかけた。温かく、塩辛い液体が俺の視界を奪う。俺は凍りついたまま、汚れた雫が頬を伝っていくのを感じていた。刺青の男と巨人が、下品な、吠えるような笑い声を上げた。


生存本能がすべてを上回った。意思に反して、舌が勝手に、乾ききった唇の湿り気を舐め取っていた。吐き気を催すほど、それはおぞましかった。


「Mov!」と、女が俺たちへの興味を失ったように命じた。


彼女はブーツのつま先で俺の脛を蹴った。強くはない。ただ、急かすように。


「Movt!」


刺青の男が近づき、一息に俺を立たせた。世界が揺れ、足は震え、体を支えるのがやっとだった。


Mov。動く。Mov-Tu。足か?


俺は無遠慮に前へ突き飛ばされた。轟音がする方へ。黒い火山性の砂利が混じった砂の上を、つまずきながら進む。分かっていたのは、一つだけ。理解し始めた彼らの言葉の一つ一つが、俺が彼らにとって人間ではないという事実を裏付けるだけだった。


お読みいただきありがとうございます!


今回の章から、海賊たちが話す『低位交易言語ロウトレード』が登場しました。これは詠うような響きを持つ「高位エリエル語」とは対照的に、文法を簡略化した、命令と実利のための言葉です。


主人公の「値踏み」が終わりました。下された判定は『Ni Tul』――頑丈ではない、と。


さて、商品価値が低いと判断された彼を待ち受ける運命とは?


少しでも続きが気になりましたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

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