003
死体はもう見なかった。
振り返らずに、その空き地を後にした。
分かっていた。もし振り返れば、心が囚われる。あの光景の一部に引きずり込まれ、きっと壊れてしまう。
だが、俺はもうあの惨劇の観客ではない。先へ進むことを選んだのだ。
一歩、また一歩と、鬱蒼とした葉をかき分けながら進む。枝がシャツに絡みつき、肌をひっかく感触が気持ち悪い。足をもつれさせ、膝から崩れ落ちた。脇腹に、肩に、擦りむいた掌に、熱い痛みが迸る。
歯を食いしばる。立ち上がる。
そこに悲壮感はない。ただ、そうしなければならないからだ。
周囲の世界は、もはや敵意に満ちているとは感じなかった。痛みが、自分がまだ生きているという確かな証になった。
指にはまだ血がこびりつき、動きを鈍らせている。それが誰の血か、自分のものか、もはやどうでもよかった。肉のぬめりが放つ臭いは鼻腔に染みつき、舌の上に居座って、死がすぐ側にあったことを思い出させる。本物の、間近に迫った死だ。
以前のような吐き気は催さない。今やその臭いは、ある種の信号になっていた。
――ここでは、綺麗なままではいられない。
立ち止まり、木の幹に手をつく。顔を手でこすると、泥と血が混じり合って smeared った。
森が息を吹き返していた。鳥――あれが鳥ならば――が再び鳴き始め、虫の羽音がそこかしこで響く。遠くで、何かが短く、鋭く鼻を鳴らした。
安全を意味するわけではない。だが、生命の気配がある。それだけで十分だった。
音は支えになった。それらが存在する限り、俺は独りではない。森が呼吸を続ける限り、世界はまだ終わっていない。
木々の天蓋の下から這い出し、岩がちな小さな突き出た場所に出ると、空が大きく開けた。そして、世界の様相が一変した。
光が、変わっていく。
二つの太陽はまだ空にあったが、大きい方――燃える盾のような恒星――はゆっくりと地平線の向こうへと沈みかけており、雲に緋色と銅色の絵の具を滲ませていた。
そして、その弟星である錆びついたような橙の星は、すでに空高くで、暗い水面に映る炎の残光のように揺らめいている。
その二重の光が、影を歪に引き伸ばし、砕いていた。眼下の木々が落とす影は、柔らかな斑点ではなく、まるで大地を削る爪のように、鋭く、捕食者のごとき筋を投げかけていた。
島々の間では、水面が時折きらめく。まるで磨かれたガラスの上に血の染みを広げたかのように、夕焼けを反射している。大気に満ちる塩気を含んだ湿気が、群島のラグーンから這い上がってくる。
この光の中では、全てがどこか非現実的に見えた。世界が夜になるべきか、それとも全てを忘れてしまうべきか、まだ決めかねているかのようだ。
正直に言えば、それはぞっとするほど美しかった。
だが、その美しさを感じていた時間は短く、すぐに内側から不安が湧き上がってきた。空気が冷えてきたのだ。ほんのわずかだが、肌に鳥肌が立つには十分だった。
この世界が夜にどう変貌するのか、俺は知らない。だが、昼間であれほどのことが起こるのだ。夜は、もっと酷いことになるに違いない。
古い記憶の、生存本能が先に動いた。ふと、頭の中で過去の記憶が再生される。昔、キャンプか何かで教わった知識だ。まず確保すべきは、隠れ家。入り口は一つだけの。眠っている間に誰にも不意を突かれない場所。
あたりを見回すと、小さな岩山が目に入った。木々の合間に、巨岩の影がちらついている。苔むした、巨大な岩だ。そのうちの一つが、特に幅広く見えた。そして、その根元に暗い穴が開いている。
俺は動きを止め、目を細めた。
それはただの裂け目か……あるいは、どこかへの入り口か。




