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明日

作者: 雪傘 吹雪

「ただいまー」


 そう言うけどおかえりの言葉はない。まさか社会がこれほど厳しく苦しい場所だとは思わなかった。毎日恐ろしいことがあって、明日も絶対同じなんだろうなとしか思えない。何の為に生きているんだろう。もうそれなら明日なんて来てほしくないとさえ思う。

 毎日同じことの繰り返しで、何かちょっと変えてみようと思っても、結局面倒臭い。


 明日が怖いから寝たくない気持ちと、明日も仕事だから早く寝なきゃという気持ちがずっとグルグルしてる。帰ってから寝るまで一瞬で終わる。

 自分の時間を手に入れるのは難しい。布団に全身を入れるのが唯一の幸福だ。


 でも、なぜか今日はいつもよりも寝たい気持ちが強い。流石に七時間も残業していればそうなるか。ここまでくると家がある必要性を感じない。

 ぼやぼやと考えているとベットの横に誰かがいる気がした。恐る恐る覗いてみるとそこには背中になにかある女がいた。よく見るとそれは翼だった。あまりにも驚いてベットから滑り落ちた。すると、彼女は語りかけてきた。


「怯えなくても大丈夫です。私は天使です。あなたを救いに来たのですから」


 彼女はゆっくり優しく話して。それを聞くとなぜか落ち着きを取り戻せた。


「あなたは明日もきっと同じ、だから来なけりゃいいのに。そう思っていますね?」

「は、はい。なんで分かるんですか?」


 彼女は微笑んで言った。

「天使はなんでもお見通しですよ。それでは早速願いを叶えたいと思いますが大丈夫ですか」


 あまり深く考えず、首を縦に振った。


「分かりました。あなたにはもう明日は来ませんよ。安心しておやすみなさい」


 彼女がそう言い終わると、私はすうと眠りにつく感覚があった。


 窓から日光が射してくる。もう朝か。スマホを見ると五時。急いで準備すれば間に合うか。って、そうだ、明日が来ないとか言ってたな。しかし、スマホの日付は変わっていた。なんだ結局夢か。淡い期待を抱いた自分が馬鹿だった。


 ベットから降りて歯磨きをしようとしてとき、ふと思った。


 元々、明日は一生来ないのではないか。たとえ今日にとって明日でも、明日になった瞬間それは今日だ。私はただよく分からないぼんやりとした明日に怯えていただけだ。そう思うとなぜか心の底から力が沸き上がってくる気がした。


 私はペンと紙を取り出して辞表を書き始めた。

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