7.呪詛
「呪詛かもしれません。」
国1番の回復術師が苦虫を噛み潰したよう顔で呟いた。
10歳の僕にはどう言う意味か分からず、メイドのメアリーに何度も説明を受けたのが記憶に残る。
1番の疑問は、なぜ、優しかった父や母に呪詛をかけた人がいるのか?と言う事だった。当時のメアリーはどう説明すれば良いのか困り果てたに違いない。
回復術師の話では、強力なHP回復魔法や状態異常回復魔法を使っても改善が見られず、即死するわけでもなく、徐々に能力の絶対値が減っていく事を見るに、呪詛と判断したそうだ。
今のところ、父に心当たりは無く、誰が何のために呪詛をかけたのかも分からない。
ただわかっている事は、呪詛の事に精通している呪詛師は、この国に確認出来ているだけで2人だけである。
しかも、1人は行方不明、1人は20年ほど前に老衰で亡くなっていた。
僕達は、何も出来る事がなく、ただただ時間だけが過ぎていったのである。
…
「父上。いかがでしょうか?何か変化はございましたか?」
僕はとても不安な気持ちであった。
初めてのスキル使用なのだから無理もない。
「すごい。驚くほど体が楽になった。…ん?これは…能力値が…HPの絶対値が徐々に戻っている?…」
「本当ですか!?父上!?」
「本当だとも!!本当に…本当に…」
父は顔をグシャグシャにして泣き始めた。
皆に迷惑をかけていたのが余程、心労になっていたのだろう。
僕達も、父の涙につられて、大粒の涙を流すのだった。