3話
☆ 〇 ☆
私とエリオットは幼い時、いわゆる「居残り面談」で出会った。
魔力が弱いワースト2。それが二人とも貴族の家系。
なんということでしょう。なんとかこの人たちに威厳を持たせることはできないのか? みたいな試行錯誤だ。
だけどエリオットはその時すでに我が道を行っていた。
魔法の指導に当たっていた仕事できる系なおば様が、エリオットの肩をたたく。
「エリオット。何をしているんです?」
「裁縫だよ。もう魔法は諦めたんだ。どう頑張っても僕の活躍する道具とはなり得ない」
葉っぱの上で休んでいるカエルみたいなポーズをとるエリオット。
「はあ。でも裁縫は役に立ちませんよ」
「そんなことないって。ほらできた」
「それは何ですか?」
「カエルのバッジだよ。技術があればこういうのを作れるんだ」
「確かに、裁縫を生業にしている人もいるけど、王国の第二王子が極める物じゃありませんよ」
「そうかなあ。色々な物を作れてすごいのに。世の中全体の平均魔力だって年々落ちてきてるんでしょ。なら、これからはこういうのが重宝されると思うなあ」
☆ 〇 ☆
今思えば、エリオットは先見の明があった。
実際エリオットに影響されて裁縫を始めた私だって、それを仕事にしている。
けど、当時はみんなから馬鹿にされていたんだ。
☆ 〇 ☆
「え、バッジ誰もいらないの?」
しばらくして。自分の裁縫技術の証明としてなぜかカエルのバッジを作ったエリオットは、周りのみんなに呆れられていた。まあ周りはみんな、魔法も使いこなせる貴族の子どもたちだし、年齢以上に大人びている。
「そんなのただのガラクタだよ」
「いらんな」
「ええー」
いやマジで、なんでカエルにしたんだよ。
そこがもらえない理由の半分占めてるでしょ。そしてもう一つの理由はエリオットが変人ってことね。
かわいそうだなって思った私は、エリオットのところへと行った。
「一つちょうだい」
「えっ、も、もらってくれるの? さすが、居残り組!」
「居残り組っていうのやめて!」
「ごめんごめん」
まあとにかく私は、カエルのバッジをもらってあげた。