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パスワードは『秘密』

作者: 鰯田鰹節
掲載日:2023/12/10


おじいちゃんが死んだ。

夜明けに病院から電話が来て、私はママに起こされた。

ママは泣いていた。


おじいちゃんの顔は、穏やかで寝ているみたいだった。

微笑んでいるようにさえ見えた。


ここ一年間の闘病生活が嘘みたい。

おじいちゃんはガンで、痛い時も苦しい時もあったのに。


親戚一同がおじいちゃんの家に集まった。

おばあちゃんを中心に、遺影を選ぶことになった。

お茶の間が人や物でごった返しになった。

アルバムや携帯電話の画像を持ち寄って、どれにしようとみんなで悩んだ。


その時、ママが、

「ねえ、おじいちゃんのパソコン、パスワードが分からないわ。」

と言い出した。

「おじいちゃん、写真が趣味だったから。もしかしたら色々画像データも入ってるかもと思ったんだけど。」

するとおばが、

「そうね。それにいずれはそのパソコンもデータ全消去して廃品回収に出さなきゃだし。」

そこへおじも、

「じゃあなおさら、パスワード分からないと困るな。」


…というわけで、遺影選びはどこへやら。

みんな、パスワード探しを始めだしてしまった。


まず、おじいちゃんの生年月日を入れてみた。

途端に、『パスワードが間違っています』と赤文字が出た。


同時に『パスワードのヒント』も出て来た。

親戚一同でパソコンの画面に記された文字を読むと…


「「「『パスワードのヒント』は…『秘密』?」」」


みんな、バッと振り向いて、おばあちゃんを見る。

「お母さん、お父さんのパソコンのパスワード、知ってる?」

ママが勢いのあまりに『おじいちゃんおばあちゃん呼び』を忘れて、おばあちゃんの足元に駆け寄った。

座椅子に座ったおばあちゃんは、手でママを押しのけた。


おばあちゃんは一言、

「秘密。」

と言った。


「秘密じゃなくて!」

「パスワード分からないと困るの!」

「おばあちゃん、教えて!」

おばあちゃんは、また、

「だぁかぁらぁ〜…『秘密』ぅ〜!!」

と大きな声で言った。


そこで私が閃いた。

『himitsu』

とパスワードを打ち込むと…

「「「あ、合ってた!!!!」」」

なんとログインできた。


画像フォルダは、おばあちゃんの写真ばかりだった。

若い頃から、こうして歳を重ねるまでの…

笑うおばあちゃん

はにかむおばあちゃん

テレビを見るおばあちゃん…


どれもこれも、愛に溢れた写真だった。


みんなは声を失い、おばあちゃんは真っ赤になった。


おじいちゃん。

おじいちゃんの、おばあちゃんへの愛は、『秘密』にできないくらい、大きかったみたいだよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おじいちゃんのおばあちゃんに対する愛が溢れる作品で微笑ましく思えました。 ホノボノとした作品をありがとうございます。 [一言] パスワードは「秘密」だったんで、数字で132かなっ…
[良い点] 素敵なご家族! リアルに思い描ける描写! めっっっちゃイイ話でした(;_;) [気になる点] himitsuで駄目なら次はhimituを試す予定の私でした。 [一言] 千文字で素敵な家族の…
[良い点] うわーいい話ですね! そしておばあちゃんが可愛い。 おじいちゃん、よいものを遺してくれました。 人が亡くなったとき、本当にこんなふうなひとときもあり得ますよね。 面白くも読め、ちょっと真面…
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