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社会見学3

 出会った時から経過年数だけで言えば当然、魔王の次に付き合いが長いのは彼の側近である。その所為か自分に対する態度はだいぶ気安い。自分としても、特にダミアンは緊張しないでちゃんと喋れる数少ない相手だ。他愛のない世間話もしてくれるので好きな部類だった。魔王や側近との会話より、ダミアンとの会話の方が一般魔族の会話に近いので対魔族のコミュニケーションの練習にもなる。

 社会勉強の一環で、ダミアンとシュテルンは最近オープンした店にやって来た。店内はピークを過ぎたのか客の数は疎らで、ダミアンから「これで好きなの買って来い」とお札一枚を渡された。四人分は買えそうである。ダミアンは奥の安楽椅子が向かい合わせになった場所を陣取ったので、あそこで付き合ってくれるつもりなのだろう。少し前、城付きメイドに連れられて、平民御用達の喫茶店に連れてきてもらった事はある。しかしファンシーな店とは正反対の、シックなデザインのカフェで注文するのは初めてで内心そわそわしてしまう。

 余談だが、ヴィルヘルミナの趣味全開で変装したシュテルンの、抜群に整った美少年ぶりに驚いて、店員の女性は目を丸くする。閑話休題。

 それに気付かないままシュテルンはメニュー表を眺める。知らない単語ばかりで、事前に決めてから来店すればよかったと後悔した。商品が多くてどうしても目移りしてしまう。

 ダミアンは普通にコーヒーと軽食でいいだろう。それにしてもサイズだけで何種類もあるし、数量が人間界と違う数で表現されている。取りあえず、期間限定の商品のホットにしてみるか。


「あまり飲まないなら、一番小さいサイズした方がいいですよ」


 ふいに、後ろからかけられた声に振り向く。

 シンプルな白シャツと袖なしセーターを着た、背の高い二十代後半と思われる男性だった。知的に整った優しそうな顔立ちに、細い目と短く刈った紅い髪。その背丈と肩幅や体格は、魔王の側近であり将軍と同じくらいだ。


「冬の期間限定ですからね。すごく甘いです」

「……どうも」

「いえいえ、悩んでいたようですから。ワッフルも美味しいですよ」


 印象はまるで似ていないのに、どこか引っ掛かるのは神経質になりすぎているからか。いつも外に出る時、見知らぬ男に親切にされた時、ナンパから犯罪紛いの猥褻行為に警戒しろとのメイドの言葉が次々と脳裏に蘇ってくる。しかし男の勧め通りに注文すると、彼も自分の注文をし、それ以上話しかけてくるような事はなかった。……考えすぎなんだろうか。店員に指定された場所で商品を受け取ると、椅子に座るダミアンの許に向かった。

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