夢/魔王と星の子
ルートヴィッヒは夢を見た。自分は子供の狼になってしまって、城に帰れずに困っていた。星のでない夜の空は雨を落とすので、ルートヴィッヒは慌てて複数の岩が連なる影に隠れた。
「――あ、こんなところにいらしたのですね」
ところがルートヴィッヒの隠れた岩からシュテルンの声がした。ルートヴィッヒは狼なので言葉は喋れない。けれど彼女はルートヴィッヒだと気付いてくれた。
「ああよかった! でも、困りました。今の私は岩なので、貴方をお城に連れ帰る事が出来ません」
なんて事だろう! シュテルンは岩だったのだ。しょうがないのでルートヴィッヒは岩に寄り添って聞いた。
「いつの間に岩になったんだ?」
「さっきまで木でしたよ」
「何故、木になった?」
「その前は川でした」
「どこから来たんだ?」
「山の上です。川の前は私は山だったから」
「山で何ををしていた?」
「山の前では星になって空にいました」
「あの雨雲の向こうにいたのか」
「はい、でも今は見えませんね。夕暮れの時には見えていました。ちょうどいいなって」
「何のために?」
「ルーイ様を探すのにです」
「俺を探して山や川、岩になったのか?」
「そうです。見つけられたので結果オーライですね」
シュテルンは嬉しそうな声でルートヴィッヒを腕に抱えた。
「星の子、岩をやめたのか?」
「今のルーイ様を持ち上げるにはこの姿が一番良いと思って」
「そうか。では俺も星の子に合わせよう」
「あら? ルーイ様、狼はやめたのですか?」
「お前に持ち上げられるならこの姿が一番良いと思った」
ルートヴィッヒも狼をやめる事が出来た。強くなろうと思ってなったが、もうやめた。ルートヴィッヒは爪の無い手で彼女の服を掴み、牙の無い顔を胸に埋めた。シュテルンがそっと立ち上がる。
「さあ、お城へ帰りましょう。魔王様」
「そうだな」
帰り道、ルートヴィッヒはいつの間にか出てきた月明かりに照らされたシュテルンをずっと見つめていた。目が覚めるまで、じっと見つめていた。




