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ミスリルの為に 上 未

 今日も今日とて地道な戦力増強を繰り返しているとお姉様が俺達の部屋に兄上を抱えて連れてやってきた。


「メラン、久しぶりね」


 そうそう、お姉様は最近学校に通っていてなかなか会えなかったのだ。もうすぐ学年が上がるので春休みに適度に甘えまくろう。

 兄上はあまり喋らない人らしく少し手を降ってきただけ。


「久しぶり、お姉様!」


「だからお姉様じゃないって。」


─えへへ~


 お姉様にポンポンと頭を撫でられてご満悦のメラン。

 俺は頭の中で魔力とゴーレムの管理をしている。


─おーい、声が漏れてるぞー。


─黙ってて!


 うぅ辛辣。まぁ俺が逆の立場でもそうする。


「寂しかったです〜」


 我ながら強烈な威力を備えていると思われる上目遣い。1歳児にできていい芸当じゃない。我ながら?メランがやっているのに我ながらでいいのか?まぁいいや。


「ほら、ロータスも挨拶くらいしなさい。」


「ん」


 なかなかに短い挨拶である。

 なっ!?


─ちょっと変われ!2番だ!


─えっ?2?ラジャ!


 2番とは命の危険は無いが比較的重要度の高い時の合図である。因みに10番まであるがそれはまたの機会に。

 それより今は!


「お姉様、抱っこして!」


「えっ?」


「早く!」


「分かったわ?」


 兄上よ、邪魔だどけ!俺が占領する。


─バカなこと言ってないで説明しなさいよ。


─指示を出しながら説明してやるから待ってろ。


 漸くお姉様に抱えて貰ったので、いざ突撃!


「お姉様、お父様のいる部屋!なるべく急いで!」


「あんまり走るのは行儀悪いわ。速歩きが限界よ。」


「ありがとう」


─父上が屋敷の屋敷の明かりを変えるらしい。つまり


─ミスリルね!


 公爵家なので明かりにも装飾などが施されており、普通の材料に加え、ミスリルが微量だが手に入るのだ。このためなら少しくらい不審になってみせる。

 しばらくして父上のいる部屋に着いた。


「お姉様、お父様の仕事の邪魔したら怒られちゃいます。なのでここからは私一人で行きます。」


「え、それじゃあ貴方が」


「お姉様を連れていっても巻き込むだけです。それに私は1歳ですから。」


「えぇ、分かったわ…この子1歳で悪知恵働かせてるわ…」


 何かお姉様が言っていたが聞こえない。聞こえないったら聞こえない。


─そう言えばトレニアはどうしたんだ。俺達を見ていたはずだろ。


─うふふ。謎の蜘蛛軍団に追いかけ回されてるかもね。


─はぁ?てめぇ他の人に見られるなよ。上手く母上の部屋に追い込め。


─わかってるわよ。お母様になんとかしてもらうわ。


─では、いざ戦場へ!


─おー!






「いやぁーーー!!」


ガダガダッ ゴソッ カサカサカサカサ


「ヒッ!前からも来る!誰か!誰か!何で誰もいないのよー!あっ!奥様、奥様!どうかお開けください。」


 絶望の中、礼儀も忘れ横に見つけた扉を必死の形相で叩く。


「どうしたのよ!はしたないわよ!」


「ヒッ!追って来るんです。どうかどうか入れて下さい。」


 元悪役令嬢の眼光に貫かれ恐怖で震えながら必死に訴える侍女。


「なにもいないじゃない」


「えっ見てください。ほらっ!えっ?いない。」


「ほら、仕事に戻りなさい。」


「でも、蜘蛛が、蜘蛛が…」


「蜘蛛?まさか・・・疑ってごめんなさいね。さぁ入りなさい。よしよし、犯人に目星はついたから一緒に締め上げましょう。」


「えっはい失礼します。」


 とある幼女の欲望の為に犠牲になった英雄と仲間が増えて内心喜んでいる復習者がいた。


 






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