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命断つ剣に約束の花束を  作者: 宇奈木 ユラ
第三章 人々の聖剣
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ACT.42 処刑人と王子(Ⅰ)

「――君は、自身の家の成り立ちを知っているか」


 王子のその言葉に、俺は静かに首を横に振る。

 ジュワユーズ家の成り立ちについて、俺は無知だった。

 そもそも、王族の口から語られるほど()()()起源があるという方が驚きだ。

 ジュワユーズ家は確かに古いが、言ってしまえば()()()()という認識であった。

 だが、王族との関わりというところでは、一つ知っている事がある。


「確か、家名は国王から下賜されたものだと聞いています」


「そう、祖王が盟友である初代ジュワユーズに、自身が持つ聖剣の名を与えたそうだ」


 その言葉に、俺は少し驚く。

 祖王ジークと聖剣ジュワユーズ。

 この国の子供達なら、誰もが知っているルーレンス建国物語。

 そんな御伽話の時代まで、遡れるのか。

 いや、そもそもそれは事実なのか?


「ちなみに、この件は王家の歴史書にも記されてる事実だし、聖剣も現存している」


「聖剣があるんですか?」


「まぁ、実際はただの儀礼剣で、物語の中みたいな特別な力はないけどな」


 そう言って笑う王子の言葉に、俺はがっかりして肩を落とす。

 俺の様子を見て、ふっと王子は吹き出す。


「悪いな、夢を壊して」


 全くだ。


「話を戻すと、古き時代に初代ジュワユーズは祖王の家臣であった。そして建国の際に、なぜか自身は敢えて王家を離れ、法の正しさを示し畏れられる処刑人になったとされている」


「――でしょうね」


 その話を聞いて、不思議と俺は「何故?」という疑問を感じなかった。

 むしろ、ストンと府に落ちる感覚があった。

 おそらく、自分が初代でも同じことをしそうだと思ったのだ。

 俺のその反応に、王子は片眉を上げて怪訝そうな顔をする。


「それは何故だ?」


「――その時、多分祖王に使える仲間が他にいたんでしょう。そして、誰かが名誉を捨てて、誰もがやりたがらない、しかし重要な役目を担う必要があった」


 国を作り、法を敷いた。

 そして法に背いた者を罰する者も、権力を持つ王族貴族だと、国民からの心証は悪い。

 故に、王族からも貴族からも、そして民からも離れた場所にその役目を置く必要があった。

 それが、初代の処刑人、刑罰の執行者。

 祖王は、その役目に重大な意味を見ていたんだろう。

 だから、仲間の誰かに託そうとした。


「それなら、自分がやるでしょう。――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 だから、自分から行ったんだ。

 大切な人の苦しむ姿を見たくないから。

 敬愛する祖王の為に、使命を受けた。

 その覚悟への対価として、祖王は、聖剣の名を与えたのだろう。

 ――それだけ、大切なのだという気持ちを込めて。


「――」


 俺の回答に、王子は無言だ。

 そして、しばらくの沈黙の後に、深く頷いた。


「成る程な。――君が、次代のジュワユーズで、良かった」

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