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8 はじめまして女神様

 翌日、俺とスティナはまた乗合馬車に乗っていた。


 ガタガタのんびり揺られていく。今日も天気がいい。


 あくびを噛み殺す。


 昨日はなかなか寝付けなかった。


 一つのベッド。手のひら二つ分ぐらいの距離にスティナ。その状況ですぐ熟睡できる程に神経は太くない。

 結局はいつの間にか寝ていたが、やや寝不足である。


 森の街道を進む馬車、昨日と景色はそう変わらない。木々の香りを感じつつ、ぼんやり外を眺める。


 と、視界の端に何か白いものが見えた。


 何だと思って目をやると、森の中に一瞬うずくまる女の子のようなものが見え、すぐに見えなくなる。


「スティナ、なんか女の子みたいなのが見えなかった」


「はい。一瞬だったので自信がありませんけど、私も見ました」


 どうしよう。気になる。もし助けを必要としていたらと思うと、放っておくのは気が咎める。


「降りて確認してみようか。気になるし、次の町まではあと少し、残りは歩けばいい」


「はい、そうしましょう」


 運賃は前払いしてある。途中下車しても問題はない。


「すみません!降ります!飛び降りれるので気にせず進んで下さい!!」


 御者に向け叫ぶと走行中の馬車から飛び降りる。少し強めの衝撃が来るが、そこは冒険者、俺もスティナも着地に成功。


 道を少し引き返し、探すと居た。


 馬車から見たときは小さな女の子のように思えたが、実際はもう少し上のようだ。年齢的にはスティナより少し下ぐらい……あれ?翼生えてない?

 

「あの、ライノさん、背中に翼ありますよね。あの人?」


「あるように見えるね。でも、モンスターには見えないし」


 白い服に白い翼、金色の髪、そんなモンスター聞いたことない。


 恐る恐る近づく。すると翼付き少女の声が聞こえてきた。


「ねぇ、ローズウッドさん。聞いて下さい。パーティーで一番強い人と二番目に強い人をクビにしちゃったんです。信じられます?戦力ガタ落ちです。元々弱かったパーティーがですよ。レッドリザードマン相手に3対8で辛勝ですよ。ローズウッドさんは森の木なので知らないと思いますけど、それって精精中堅冒険者パーティーぐらいの強さです。もう……私、悲しくて……」


 木に何やら真剣に話しかけている。


「あのー大丈夫ですか」


 スティナが声をかけると、翼付き少女は顔を上げた。少し目が潤んでいる。


「あれ?スティナちゃんとライノくんだ。え!どうしよう!あれっ?」


 疑問符と感嘆符が入り混じったような声を上げる少女。どうして俺たちの名前を知っているのだろう。


 少し警戒心が芽生えかけるが、しかしすぐに霧散する。どう見ても危険な存在には感じられなかった。少女は混乱した様子で、右を向いて左を向いてを繰り返していたが、突然”ポン”と手を打つ。


「そうだ、もうスティナちゃんとライノくんは勇者パーティーじゃないから大丈夫だ。はじめまして。女神のレピアスです」


 翼付き少女改め女神レピアスはぺこりと頭を下げた。



 ◇◇ ◆ ◇◇ 



「えっと、つまり女神様が勇者パーティーに関わることは禁止されていて、でも見守ってはくれていたということですか」


 ひとまず町に向かいながら話そうということになり、街道をのんびり歩いていた。女神というのは間違いないだろう。俺程度でも目の前にいるのが高位存在であることぐらいは感じられる。


「うん。だからスティナちゃんとライノくんのことはよく知ってるよ。ここで会ったのは偶然だけど」


「それで……さっきは何を?」


 俺は勇気を出して聞いてみる。


「上司への定例報告作り終わって確認したら、勇者パーティーで一番強かったライノくんと二番目に強いスティナちゃんが追放されててね。ちょっと色々溢れちゃって、それで森の木に少し愚痴を……」


「あーそれは、ええ、ほんと……」


 何と返していいか分からない。


「でも、森の木と会話ができるなんて流石女神様ですね。素敵です」


 フォローしようという感じで話を逸らすスティナ。


「もう。スティナちゃんたら、木が話す訳ないじゃないですか。まぁ腹話術みたいなことならできますけど」


 フォローをぶった切る女神レピアス。辛い。


「あの……女神様、愚痴ぐらいなら幾らでも聞きますので」


 スティナがそう言うと、女神はパァアと表情を明るくした。


「ほんとっ!わーい。スティナちゃんとライノくんとは元々お話とかしたかったんだー。勇者パーティーは弱くなったけど、悪いことだけじゃないね」


「その、勇者パーティーあれで魔王は大丈夫なんですか?さっきの女神様の愚痴からすると、リザードマンに苦戦とか……」


「駄目だよ?」


 駄目なのかー


「まぁ、でも猶予はあるかな。先代の魔王が討たれて以降、今の魔王が現れるまでの空位期間、魔族勢力は弱体化して本拠地のシェオリア半島の維持が精一杯だったし。人間を本格的に脅かす力を取り戻すには暫くかかると思うよ」


 と、話しながら歩いていると町が見えてくる。今夜はあそこで宿を取る。


「着いちゃったね。じゃあ私は今日はこの辺で。私のことは無闇に人に話さないでね。今度遊びに行くから、よろしくね」


 そう言うと女神は空に舞い、飛んでいく。スティナと二人手を振って見送る。


 さて、あの町の宿は二部屋空いているかなぁ。




 評価や感想いただけたら、凄く嬉しいです。

 ブックマークされたら小躍りします。


 執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。


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