5 久しぶりの前衛②
「あのーライノさん、何ですかあれ」
「何ですかって、前衛を」
「ええ、あの、そうなんですけどね。心裡高速詠唱できるのは知ってましたけど、無杖詠唱、行動詠唱、多重詠唱も同時にしてましたよね……」
「まぁ、してたけど」
「す、すごいですね。聞いたことないですよ。剣も凄いし」
何だかスティナの語彙が減少している。
ちなみに字の通りだが
心裡詠唱:発声せずに心の中で魔法詠唱
無杖詠唱:杖なしで魔法詠唱
行動詠唱:他の行動をしながら詠唱
心裡高速詠唱:心の中で高速詠唱
多重詠唱:複数呪文を同時に詠唱
となる。
「スティナだって心裡高速詠唱できるし、そう大したことでも」
スティナの詠唱は凄く早い。並の魔法使いが声に出して10秒ぐらいかけて唱える魔法でも、2秒で完成させる。
「いや、個々はできてもですね、全部一度にできる人なんて居ません」
「小さい頃から爺さんにやらされてたからなぁ。でもうちの爺ちゃん昔は極域魔法を心裡高速無杖で剣ぶん回しながら3重で使ってたらしいよ。今はもう年で駄目だけど」
「何言っているのか分からないです……。極域魔法って私達魔法使いの人生の目標ですよ。」
魔法は一般的に初級魔法、中級魔法、上級魔法、極域魔法の4つに分類され、最高ランクの極域魔法を扱える魔法使いは僅かだ。
スティナは上級までしか使えないし、俺も実戦では上級までしか使いこなせない。
「話を戻しますが、敵にバフとデバフ同時にかけてました?体の部位単位で。そんなことできるんですか?できてましたけど」
「そうそう、あれ結構良いでしょ。アイディアの勝利だよね。踏み込む瞬間に右足と左足の筋力バランス崩されると、二足で戦うモンスターは大体転ぶから」
「いえ、そんな緻密な制御普通出来ないです。それ本当に凄いです」
そうかな?とは思うがスティナに褒められると悪い気はしない。
「あと、リザードマンの死体どうしようか。皮は剥げば売れるけど……」
正直時間もかかるし、面倒くさい。
「街道脇に避けて、腐らないよう焼きましょう」
「そうしよう。俺運ぶから焼いて」
ずるずるとリザードマンの死体を引きずり始めると馬車から何人か降りてきて一緒に運んでくれる。邪魔にならない位置に死体三つ。
「焼きますねー」
スティナはそう言うと何ともなしに上級火炎魔法を発動、死体を焼く。
高火力の魔法でモンスターの死体はあっという間に炭になる。
うん、やはりスティナの詠唱は早い。
「とりあえず、一件落着ということで、馬車出して貰おうか」
「はい。そうですね」
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執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。
この話少し短かったから寝る前にもう1話投げようかな。
ときにNTRは死ぬ程嫌いなので、絶対やりません。