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49 フロックスの旅路


 野盗の襲撃を退けたフロックス一行は、程なく中規模な村に辿り着いた。今日はここで一泊する。

 人口は300人ぐらいだろうか。野生動物の侵入を防ぐための柵に囲まれ、木の家が並んでいる。

 街道沿いにある村のため、宿屋はきちんとある。

 すぐに宿屋に向かい部屋を取ると、皆でだらける。2段ベッドが4台の部屋をまるごと取れたので全員一緒だ。


「街道外は大変だねぇ。揺れが酷くてお尻が痛い」


 レベッカがぼやく。


 悪路と野盗の襲撃で皆疲れていた。ここからは再び街道を進めるのが救いだ。


 後は適当に食事をとって寝ればいい、そうフロックスが考えていると不意にドアかノックされた。

 何だろうと思いつつ「どうぞ」と返す。するとドアが開き、1人の白髪頭の男性が入ってきた。


「村長のトムフバと申します。冒険者方とお見受けいたしますが、どうでしょうか?」


 と、老人が言う。村長がいきなり何だろうか。


「ええ、冒険者です」


 マルケッタが素直に答える。別に隠す理由もない。


「お願いがあって参りました。行方の分からない村の娘を1人探して貰えませんでしょうか」


 村長は頭を下げ、状況を語りだした。


 話はこうだ。


 昨日山に山菜を取りに行った娘が戻らない。状況から考えて、近頃この周辺に出没する盗賊に攫われた可能性が高い。

 冒険者ギルドに依頼を出したいが、最寄りのギルドまで馬で2日の距離がある。移動に募集にと考えると、最短でも捜索開始は7日後だろう。

 一刻も早く対処したいところに冒険者らしき一行が現れたので、直接依頼をした。


「なるほど」


 フロックスは考える。


 ここユフォルト王国の治安は良い。街道で盗賊行為を行えば、すぐに討伐隊が現れる。

 盗賊団は街道から外れた場所で活動する集団が少し存在する程度だ。恐らく道中で撃退した野盗と同じ盗賊団だろう。そう幾つもの盗賊が存在できる筈はない。

 ならば戦力的には問題ない。時折しか人の通らない街道外れで大人数の盗賊団など維持出来ない。既に先程の戦闘で相当な割合の戦力を消耗している、そう考えるのが妥当だ。


 アニタも安定しているし、彼女を村に残し7人でも十分対処出来るだろう。


 とはいえ、全ては推測、危険はある。


「皆、どう思う?」


「受けても良いんじゃないかな」


 ヘルヴィが答える。


「条件次第ですけど、私も賛成です。見捨てるのは寝覚めが悪いです」


 と、マルケッタ。


「アニタ、1人で留守番でも大丈夫か?」


「うん。トレニアさんに貰った薬もまだあるし、大丈夫」


「私もいいよー、急ぐ旅でもないし」


 ミーナがそう言い、シーラも頷く。レベッカに目をやると親指をグッと立てる。


「分かりました村長さん、条件について話させて下さい」



 報酬小金貨70枚、万が一盗賊団の戦力が対処困難な場合はキャンセル可、盗賊団を壊滅させて村娘が発見出来ない場合も依頼は成功、という条件でフロックス達は依頼を受けた。




◇◇ ◆ ◇◇ 



 翌日フロックス達は夜明けと同時に捜索を開始した。

 まず昨日襲撃を受けた地点まで戻って、馬に乗った盗賊の逃げた方向に向かい、足跡を探す。

 皆でしゃがみ込み、草を分けて探す。


「あった、馬の蹄の跡」


 程なくミーナが足跡を発見した。それを慎重に辿り、森の中を進む。

 ミーナとレベッカが足跡を辿り、残りの5人で周辺を警戒する。


「早く助けてあげたいね」


 ヘルヴィが呟く。

 行方不明の村娘は15歳の少女だという。この国では奴隷売買は禁止されており、攫った人間を換金するのは困難だ。

 身代金の要求もない以上、自分達で"使う"用だろう。


「そうですね。でも慎重に行きましょう。その方が結局は早いです」


 マルケッタが言う。

 急ぎたいが、足跡を見失う訳にはいかない。敵に先に発見されるのも避けたい。


 ゆっくりと進み、太陽が一番高くなる頃、発見した。


 木々に隠れるように、粗末な小屋が4つ建っている。見張りはいるが、人数は少ない。ひとまず見える範囲には2人のみ。


 フロックスはミラとシーラに目配せする。頷く2人。

 ミラが弓を構え、シーラが小さな声で詠唱し氷の槍を形成する。


 同時に放たれる矢と魔法、どちらも見張りの頭に直撃する。良い腕だ。


 これで昨日と合わせて11人を仕留めた計算だ。小屋の大きさと数からして、残りは数人程度だろう。


 見張りを倒したが、気付かれた様子はない。


「ミラは木の上、シーラとマルケッタは草影で待機して掩護を。俺とヘルヴィ、レベッカ、ミーナで小屋を攻める。それで良いか?」


 小声でフロックスが指示する。皆、小さく頷く。


 フロックス達は足音を殺して小屋の一つに近付く。窓の類いはない。小屋の壁にそっと耳を当てる。

 何かを話す男の声が聞こえた。暫くそのまま聞き続けるが、女性の声は聞こえない。


「音を立てておびき出す。後は臨機応変」


 言って、フロックスは小屋の壁を蹴った。ガッと音がする。


 小屋の扉の横で待機、数秒して扉が開き男が出てくる。フロックスはすかさず斬り付ける。


「何だてめ」


 セリフも途中で、男の頭はフロックスの剣に叩き割られる。

 男の体を蹴りどかし、フロックスは小屋の中へ突入する。中に居たのは若い男一人だけ、手に短剣を持っている。


「敵襲だぁ!!!」


 男が叫び声を上げる。他の小屋にも聞えただろう。

 フロックスは飛び込んだ勢いのまま、男に突きを放つ。相手も短剣を構えはするが、リーチはフロックスの方が長い。

 フロックスの剣は男の胸に突き刺さる。フロックスは刺さった剣を捻り、傷を広げる。「あぐぁぁ」と呻き、血の吹き出す胸を押さえて倒れる男。

 小屋の中をもう一度見回すが、やはり他には誰も居ない。


 フロックスは小屋を飛び出す。他の小屋から武器を手にした男達が出てくるところだった。

 フロックスから見て手前の小屋から2人、奥の小屋から3人。

 手前の小屋から出てきた男の片方は体が大きく、毛皮を纏っていて盗賊の頭という雰囲気だ。手には柄の長い大きな戦斧。


「冒険者かっ!殺せ!」


 大男が叫ぶ。やはり盗賊のリーダーのようだ。


 盗賊達はフロックスの方を向き武器を構える。ミラとシーラにはまだ気付いていない。


「撃て!」


 フロックスが叫ぶと、シーラの『石槍』とミラの矢が飛ぶ。狙いは奥の小屋から出た男達、矢は僅かに外れ小屋の壁に突き刺さるが、『石槍』は1人の男を直撃し、腹部を大きく穿つ。


「レベッカ、ミーナは奥をやれ!ヘルヴィ手前を叩くぞ!大男は俺がやる!」


 フロックスはそう叫んで、剣を構えて大男に向かい駆け出す。


 大男が斧を構える。


 さほど怖くないな、とフロックスは思った。巨体から繰り出す斧の一撃が強力でも、躱せばいいだけだ。

 一瞬だけ地面に目を向ける、木の根や岩など足捌きを制限するような物はない。

 大男が斧を振り上げ、フロックス目がけ振り下ろす。

 フロックスは落ち着いて、半歩分左に飛んて躱す。斧は地面を叩き、大きな音を響かせる。

 フロックスは剣を横に振るい、大男に斬り付ける。大男は仰け反って剣を躱すがバランスを崩し、よろめく。

 フロックスは剣を素早く構え直し、振り下ろす。剣は大男の頭を叩き斬った。「うぐぼぁ」と妙な呻きを残し、大男は倒れる。


 隣ではヘルヴィの槍がもう1人の男を貫いていた。


 奥に目をやると、レベッカとミーナが敵を牽制している。そこに横からシーラの魔法が飛び、男を貫く。

 さらにミラの矢が樹上から放たれる。矢は最後の1人の首に突き刺さった。数秒苦しんだ後倒れ、動く盗賊はいなくなる。


「よし。油断せずに、女の子を探そう」


 言ってフロックスは手前の小屋に入る。まだ敵が残っている可能性はある。剣を手に、中を見渡す。誰も居ない。ミーナもついてくる。

 何やら箱にごちゃごちゃと物が入っている。中を確認するが、食器やら服やらが入っているだけだった。


 次の小屋移動し、中に入ると縛られた女の子が居た。服は乱れて肌が露出し、怯えた様子だ。

 他には誰も居ない、隠れられそうな場所もない。


「ミーナ、頼む」


 男のフロックスより良いだろうと、後ろに付いていたミーナに対処を任せる。

 ミーナは頷き、女の子に近付く。フロックスは入口脇に下がる。


「あなた、名前は」


「あ、あのリクリです」


 行方不明の少女の名だ。


「よし。村の人に依頼されて貴方を助けにきた冒険者だから、安心して」


 他の小屋も探したが、盗賊の生き残りも他の囚われた人も居なかった。



◇◇ ◆ ◇◇ 



「乾杯!」


 宿の部屋、フロックス達は蜂蜜酒の入った木製のコップをぶつけ合う。アニタだけは白湯だ。


 村に帰還し、少女を両親に引き渡して、村長にお金を貰って任務を完了した。

 1日で解決したことを随分と感謝された。


「いやーしかし無事に助けられて良かったねぇ」


「そうだね。心の傷は深いだろうけど、私達に出来ることはちゃんと出来た」


 誇らしげにレベッカとヘルヴィが言う。


 想像通り、盗賊達は少女を自分達で"使う"用に攫っていた。攫われてから2日、比較的早く助け出されたとはいえ、既に散々な目に合った後だ。

 しかし、ヘルヴィの言う通り、そこはフロックス達にはどうにもできない。


「しかし、弱かったですね。盗賊達」


 ミラが呟く。確かに戦闘面でも、アジトの警戒態勢の面でもお粗末だった。


「そうだな。まぁこの国は治安が良いから盗賊なんて割に合わないし、あんなものだろう」


 戦闘能力があるなら、冒険者なり傭兵なりになった方が良い。彼らにどんな人生があってそうなったかは知らないが、愚かな事だ。


「油断は駄目ですよ。パメリ王国西部とか治安の悪い地域の盗賊はかなり手強いらしいですし」 


 マルケッタが言う。確かに、治安の悪い地域の盗賊は魔法使いなども抱え、相当に強いと聞く。


 何はともあれ、人を1人助けられた。潜在的には今後あの盗賊に襲われたかもしれない人々も助かっただろう。

 人を斬る手応えは気持ち良いものではないが、冒険者らしい良い仕事ができた。


 フロックスは杯を傾け、仄かに甘い酒を一息に飲み込んだ。



 評価や感想、ブックマークいただけたら、凄く嬉しいです。小躍りします。


 執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。

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