表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/77

43 地上へ帰れました


 王宮の一室で会議が行われていた。さした装飾もない、小さな部屋だ。しかし、奥の椅子に腰掛けるのは国王その人。

 王と共に卓を囲むのは国の重鎮達、近衛騎士団長、大臣、通商監査官の3人だけ。


「ご承知の通り、議題はオルセン伯によるオパールワーム討伐に成功についてです。報告書はお読み頂けておりますでしょうか」


 話を切り出すのは通商監査官、妙な肩書の彼は王直属の諜報機関の長だ。


「ああ、見た。この情報の精度はどうだ?」


 王が問う。


「信じて良いかと。オパールワーム発生の情報を受け複数の勢力が偵察部隊を出していました。そのうちイェルド商会の雇った冒険者部隊とベーン伯爵の家臣達が戦闘を目撃しています」


「両方の証言が一致している、と」


「はい。口裏を合わせている可能性も排除して良いです。両者には繋がりが薄いですし、時間的にも不可能かと。ただ長距離からの目視であることは申し添えます」


「オパールワーム相手に死者ゼロか。凄いのが出たものだな。ピグメントストームって斬るものか?」


「正気ではありません。過去の討伐例では極域防御魔法の使い手を複数揃えて対処しています」


 返答する近衛騎士団長は半ば呆れた声だ。


「実際のところ、どうだ?」


 これに勝てるか、と言う問い。


「近衛騎士団324名で正面から戦うなら当然勝てますが……」


 近衛騎士団長は苦笑いで言う。


「現実には厳しいか」


「はい。対処できるかと言えば困難です。具体的には王宮を強襲されたら我らは王を守りきれません。もちろん事前察知できれば別ですが」


 近衛騎士団長は通商監査官に目をやる。


「ご想像の通り、たった4人だと事前察知は困難です。何の準備もいりませんからね」


 討伐は8人で行われたが、主力は4人だ。それに突撃されれば王を取られる。それが卓越した個人戦力の恐ろしさだ。


「身元は分かったか?ヘドルンド侯爵の身内という話だが」


「3名は。ヘドルンド侯爵の姪孫トレニア=ガルメル、家臣の娘であるスティナ=モルビク、冒険者ライノ=ナサカ。しかし最後の1人は何の情報も掴めません。金髪、見た目は二十代半ば、美人それだけです」


「そのトレニアというのとヘドルンド侯爵の関係は?」


「多少複雑ですが、良好です。トレニアの祖父は先代のヘドルンド侯爵と関係が悪く、家を放逐された人間です。しかし彼は兄である現ヘドルンド侯爵とは仲が良かったようです。侯爵はトレニアを孫同然に可愛がっているとか」


 つまり、父親に勘当された仲良しな弟、の孫だ。ややこしいが、完全に身内。


「ヘドルンド侯は子供も孫も男ばかりだからな」


 大臣が呟く。


「やるつもりは全くないが、可能かだけは聞いておく。監査官、暗殺はできるか?」


 本心、やる気はない。厄災から民を救うと殺される、そんな国に未来はない。強者はひっそり他国へ去るだろう。証拠を残さなくても誰がやったかは分かる。


「出来なくはないですが、全員まとめて仕留めるのは難しいかと」


「近衛騎士団としては生き残りの出る暗殺は悪夢です。後衛の魔法使い二人はまだ常識の範疇ですが、ピグメントストームを斬った二人はヤバ過ぎます。単騎でも王の首を落とすかと」


 近衛騎士団長が言葉を添える。


「ふむ。理解した。幸い、ヘドルンド侯爵との関係は良好で大きな利害対立もない。静観が最良だな」


「ええ、彼ら4人は元よりクーシュタに住んでいたようです。今回の活躍にヘドルンド侯爵の政治的意図はないでしょう。むしろ対外的には有利な要素です」


 王と関係良好な侯爵が持つ武力だ。外国からすれば単純な脅威だ。



◇◇ ◆ ◇◇ 



 数日ぶりにダンジョンを出ると、外は夜だった。なのでいきなり野営である。


 黒い狼モンスターを倒した後の道のりは順調だった。荷物は重かったし、多少道には迷ったが、危険を感じることなかった。


 地下ダンジョンと違って火が炊けるのは良い。雲は少なく星も綺麗だ。

 4人で焚火を囲む。アニタは寝ている。


「ところで、黒い狼みたいなモンスターの核石なのですが、流石に個人では持て余します。下手に売り捌いて悪用されても嫌なので、王都の錬金術ギルド総本部に引き渡すのが良いと思っています。どうですかね?一応謝礼は出る筈ですが、売るより大幅に安いです」


「お金に困っている訳ではないし、私はトレニアの言う通りで良いと思う」


 スティナがトレニアに同意する。俺も「同じく」と答えた。


「では、明日勇者フロックスのところにアニタさんを送り届けるとして、その後直接王都に向かいましょう」


 ここからクーシュタと王都は逆方向だ。当然直接向う方がいい。


「王都か、子供の頃以来だな」


「私も久しぶりですが、私達の状況だと長居は無用です。オパールワーム倒せる戦力が城下に居るって王家にとって脅威ですから」


 あ、なるほど。スティナとデートとはいかないな。残念。


「せっかくですが、サクッとギルド行って、スッと帰りましょう」


「それがいいと思います。本当はライノくんの剣を新調したいですけど」


 と、レピアス様。

 そう、俺は剣が欲しい。今の剣、酷使し過ぎてそろそろ限界である。


 何にせよ次の動きが決まった。


 しかし、当分は薬草とか採りながら魔法の練習して、のんびり暮らす筈が、なかなか忙しい。



すみません、投稿ミスして内容が一部抜けてました。38話として割込み投稿してあります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ