表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/77

36 勇者パーティー救助作戦②

 薄暗いダンジョンを小走りで進む。視界の隅に捉えたグールを、足を止めることなく火炎弾で焼く。


「雑魚モンスター、無視しても良いけど、勇者の帰り道を考えると駆除すべきだよな」


「ええ、特に地下11階以降はフロックスくん達にとっては雑魚ではありません。可能な限り処理しましょう」


「了解です。しかし、地図があれば」


 地下24階までのモンスターなど全部雑魚だが、だからといって楽な道のりとも言えない。モンスターが弱くても道には迷う。

 普通この手の地下ダンジョンはマッピングしながら少しづつ進むか、先人から地図を買うかだ。

 最低限どう進んで来たかだけ、スティナが紙にメモしてくれている。

 先人達が光カビを繁茂させてくれたお陰で松明が無くても見えるのは嬉しいが、可視範囲は狭い。


 角からスケルトンウォーリアーが飛び出して襲ってきた。レピアス様がジャンプして回し蹴りを一閃、頚椎が砕け、頭蓋骨が転がっていく。

 これにフロックス苦戦してたなぁ……


 階段を見つけ、駆け下りる。これで地下3階、先は長い。


「話には聞いた事ありましたけど、妙なダンジョンですね。王が死後アンデッドとして蘇る為に掘った、が最有力の説でしたか」


 呟くトレニア。

 このダンジョン『果てなくの墓地』は古代の王が掘らせたという事までは分かっている。

 理由は不明だが伝承によれば、死後アンデッドの王となる為に瘴気の流れる深い龍脈まで穴を掘り、最深部を自分の墓としたとか。いずれ死の軍勢を率いて地上を滅ぼすと警告する学者もいる。


「あー、これ昔の王様がね、異世界の書物を一部だけ半端に解読して『国費で穴を掘ると国が栄える』って勘違いしたんだ。頑張って掘ったら瘴気の龍脈ぶち抜いて、こんな事に。最深部には不運な作業員の骨しかないよ?」


 出た、レピアス様のさらっと情報開示。


「レピアス様のネタバレ芸、俺好きですよ」


「芸?え、神様……」


「しかし、そんな理由でよくこんなに深く掘りますね」


「掘り始めたら偶然にも豊作が続いて、待望の王子も生まれて、『ウォーこれだぁー』ってなったんだよ」


 そうか。謎を解き明かそうと、ダンジョンで死んだ先達よ、すまん。俺達知っちゃった。


 部屋の中にグールの群れ、とりあえず『フレアバースト』で纏めて焼いておく。


 次の階段を見つけた。駆け下りて、地下4階へ。今のことろ順調だ。



◇◇ ◆ ◇◇ 



 この小部屋に籠もってどのぐらい経っただろうか。一日は過ぎていると思うが時間感覚がない。


「フロックス、アニタの顔色は一時期よりは良いよ」


 ヘルヴィが言う。


「そうか、ありがとう」


 勇者フロックスは一つしかない出入口を警戒しつつ答えた。

 モンスターの襲撃は今のところ一匹のみ。フロックスがタゲを取り、必死で倒した。


「食料の残りはどうだ?」


「あと3食分ぐらい残ってる。香木もあと一日半は保つ。水はマルケッタの魔法生成でギリギリ足りてる」


 ヘルヴィの答え。なら、まだ大丈夫。しかし少しづつ猶予は消えていっている。食料は我慢してもいいが、モンスター避けの香木はまずい。

 どうするべきか。アニタの症状が悪阻(つわり)なら、波はあっても一日や二日で回復はするまい。

 医者がいる訳でなし、実際のところ他の病気の可能性も否定出来ないが、せめて地下19階までは戻りたい。

 しかし、今この時は比較的安全なのだ。動いて良いのか?フロックスは自問する。


「ねぇフロックス、皆で決めよう」


 フロックスの様子から悩んでいる事に気付いたのだろう、ヘルヴィが言う。


「そうだな。すまない、みんな起きてくれ」


 フロックスの呼び掛けに仲間がもぞもぞ起き上がる。


「対応を相談したい。上層階を目指して移動するか、もう少しここに残るかだ」


「……私は動くしかないと思う。怖いけど、これ以上ここに居ても先がないです」


 少しの沈黙のあと、マルケッタが口を開く。疲労の回復という意味では十分休んだのだ、冷静に考えれば当然の結論。

 他のメンバーも頷く。


「私も今ならなんとか歩くのは大丈夫」


 弱々しく、アニタが言う。


「俺も、そう思う。準備を始めよう」


 荷物をまとめ、移動の準備をした。



◇◇ ◆ ◇◇ 



 ようやく地下11階まで来た。


「ここからはモンスター積極的に叩きながら行きますよ!」


 レピアス様が宣言する。

 アンデッド系モンスターなど瘴気さえあればまた湧くが、勇者パーティーの離脱までに元に戻ることはない筈だ。


 玄室があればとりあえず覗いて、モンスターが居れば攻撃魔法を放り込む。倒したかの確認もしない。別に手負いのモンスターが残ってたとしても、大した問題ではない。気を付けるのは人間への誤射だけだ。


 横の部屋を覗く、リッチ2体とスケルトン系の何が居た。人間なし。とりあえず聖属性攻撃魔法を撃ち込んでおく。通路沿いにいくつか部屋がありそうなので、そのまま次へ。

 覗いて、よく見えないけど、グールとかゾンビ系のが居たので『フレアバースト』をポーンして次へ。


 雑過ぎて、ダンジョンに心があれば泣いてるだろう。ダンジョンさんごめんね。


 ドッカン、バコーンと炸裂音を響かせて、俺達は地下ダンジョンをひた走る。


 おとなしく待ってろよ、フロックス!



 評価や感想、ブックマークいただけたら、凄く嬉しいです。小躍りします。


 執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ