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31 オパールワーム討伐④


 オルセン伯は信じられないものを見ていた。


 大厄災オパールワーム、その美しくも恐ろしい攻撃、ピグメントストーム。


 色とりどりの光球はどれも、上級魔法クラス。それを、一人の青年と、一人の女性が、剣で防いでいた。


 オルセン伯自身、魔法を修めた身だ。何をしているのか、理解はできる。


 だが、だからこそ信じられない。


 対属性をエンチャントした剣で、嵐の如く迫る無数の光弾を斬り散らすなど。


 一つの属性なら、まだ分かる。しかし、ピグメントストームの攻撃は火、風、水、土、雷、聖、闇の七種が乱れ飛ぶ異常なもの。


 一撃ごとにエンチャントを切替え、一振りで複数の光弾を破壊できるよう斬撃の軌跡を計算し、剣を振るっているのだ。


 何手も先を読み、常に3つ程度のエンチャント魔法を平行詠唱している筈だ。


 剣も魔法も極めた先の極限の技。


 あまりの美しさに涙が流れる。エンチャントされた剣の輝く軌跡、斬られた光球の弾ける光、満ちる煌めきは、ああオパールのよう。


 その神業を以てしても、防ぎきれぬ僅かな撃ち漏らしを防ぐため、オルセン伯達は防御魔法を展開している。最後はこの身を盾にしてでも、後ろの少女を守る覚悟だ。


 極域魔法詠唱による巨大な魔力が、後ろに渦巻いている。



◇◇ ◆ ◇◇ 



  ごれ無理ぃいいいいいい

 レピアス様のアホーーーーっ!!


 こんなの作戦じゃねぇええええ


 頭が悲鳴を上げる。自分へのバフを維持した状態で、エンチャント高速多重詠唱、光弾を見切って、斬り落とす?


 聞いていたけど、思ったより弾数が多い。


 でも、やるしかない。


 極限まで思考を加速し、体の動きは経験と反射に委ね、詠唱も染み付いたものを半ば無意識に走らせ、俺本体は全体統括みたいなイメージ。


 雷2つを土属性で斬り、次の次の次ぐらいに水属性が3つ来るから火のエンチャント詠唱開始、唱えておいた闇属性を剣に纏わせ、聖属性の白いの叩く。


 綱渡り。大丈夫だ、少し漏らしても四人も防御魔法を唱えてる。しかもサナリーさんに至っては二重!


 なんとか、詠唱終了まで。


 次の次の次は火属性4つ行けるぞラッキー、水詠唱。



◇◇ ◆ ◇◇ 



  楽しぃぃ~~気持ちぃい~~


 女神レピアス人間バージョンは笑顔だった。


 キラキラ綺麗な光が飛んでくる。8つ先くらいまでエンチャント順序を考えながら、剣を振る。粉末ハイス鋼で作られた剣は特別な力はないけど、丈夫で加工精度もばっちり、振り心地は良好。


 氷結属性エンチャントで斜めに降り下ろす、風属性光弾を3つ潰し、水属性エンチャントで斬り返し、火属性4つ破壊。


 聖属性エンチャントで途中斬撃の角度を変えながら、回転斬撃、自分の後ろにある光弾も含めて9つを斬り散らす。


 よし、一撃の最高記録更新っ!


 あー良いなぁ。お酒飲むのも良いけど、体動かすのも気持ちいいねぇ。


 食べられた人には悪いけど、楽しいなぁ。



 レピアスはご機嫌だった。



◇◇ ◆ ◇◇



 サナリーは杖を構える。


 そう、これだ、この感覚だ。

 私は冒険者だ、事務員なんて眠くなる。



「ママちょっとモンスターと戦ってくるね。帰って来れないかもしれないけど、でも行くよ」そう言って息子キスして、家を出た。行かずにいられるようなら、最初から冒険者になんてなっていない。


 敵は厄災オパールワーム、命をかけるに不足なし。

 我が子の暮らす街を守る為だ、親としても及第点は貰えるだろう。たぶん。


 正体不明の美人さんの合図で極域魔法が詠唱開始すると、すぐに巨大芋虫の攻撃が来た。


 サナリーは『セラフィムウォール』を二重展開する。初めて魔法に触れてから二十年、研鑽の成果。

 オパールワームという化物の前では余りにか弱く、しかしこの局面では重要な壁。


 2枚の壁と、この身、少なくとも3発は防げる。それに3秒あれば1枚張り直す。


 巨大芋虫の体にある多数の小さな孔、そこから光弾が生み出され、飛んでくる。


 眼の前には信じ難い光景、対属性エンチャントによるピグメントストームの迎撃。冗談のような技。


 そして、後ろから響く呪文。共同詠唱、これも御伽話だと思っていた技。

 2つの魂が寄り添い共に歌う。なんと美しいのか。


 ピグメントストームの一発がサナリーの展開した『セラフィムウォール』に衝突する。壁が揺らぐ、やはり一撃一撃が重い。

次いでもう一発、壁が砕ける。 


 前衛のミスではない。どうやっても防げない攻撃も出てくるのだ。


 すぐに再詠唱開始。


 サナリーの1枚目が壊れた瞬間、伯爵が前に出ている。火属性の光弾を受け止める。


 聖属性の光弾が衝突し、伯爵の防壁が壊れるが、伯爵の家臣が入れ替わりに前に出る。同時にサナリーの再詠唱は完了した。


 入れ替わり前に出る。


 詠唱完了まで、これなら行ける。



◇◇ ◆ ◇◇



「「その矛はただ重く、ただ早く」」


 果てしなく長く感じた詠唱が、ようやく終わる。


「「故に穿て穿て穿て」」


 最後の一句が響く。極域魔法『侵徹』が発動する。


 高速で飛翔する黒い槍がオパールワームを直撃した。


 巨大がのたうち、甲高い悲鳴が響く。


 だが、極域魔法といえど、一撃でオパールワームは倒せない。


「ライノさん!」


 詠唱から開放されたトレニアが俺に杖を投げ寄越す。


 キャッチし、一瞬目を閉じて気持ちを切り替える。

 畳み掛ける。『墜鳥』の詠唱開始。


「ある日空を仰ぎ見た」


 極域魔法の詠唱を感知したオパールワームが俺目がけてピグメントストームを放つ。


 しかし放たれる光弾は先程の半分以下、傷ついた体ではそれが限界。光弾の発射孔も多くが潰れている。


 立ちはだかるレピアス様、悉くを斬り落とす。


「済んだ空を、飛んでいた。白い翼の綺麗な鳥が」


 駆け寄るトレニアが五重防壁を展開する。鉄壁の守り。


「地を這う我らは(かいな)を伸ばす。届かぬそこへ虚しく伸ばす」


 最強のデバフ『墜鳥』それは呪いに属する極域魔法


「来る日も、来る日も仰ぎ見て、果てず妬み、絶えず嫉み」


 オパールワームが触手を伸ばし、振り下ろしてくる。あっさりと、レピアス様が弾く。


「今際の際のそのときに」


 杖をオパールワームに向ける。


「遂に(かいな)は翼を毟る」


 紫色の霞のような手が、オパールワームに襲い掛かる。


 全能力値大幅低下の苛烈な効果が、傷付いたオパールワームを蝕む。


 待ってましたと言わんばかりに、スティナの上級魔法が飛ぶ。


 『ヘビーランス』五重詠唱、詠唱時間は2秒を切る。つまり10秒あれば25発超、詠唱とは何だろうという程の連射。


 デバフで魔法防御力の大幅に下がったオパールワームを穿ち抉る。体液をまき散らし、苦しむ。


 サナリーさんとオルセン伯も『フレアバースト』を叩き込む。


 スティナも『フレアバースト』に切り替え高速連射。


 降り注ぐ熱弾に焼け焦げて、オパールワームは動きを止めた。



 評価や感想、ブックマークいただけたら、凄く嬉しいです。小躍りします。


 執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。


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