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26 結局こいつら飲んでます。

「ライノくん、スティナちゃん、トレニアちゃん、よく頑張りました。明日この島を離れ帰還します。でもまたこの店には来ようね。お魚食べに」


 漁村の酒場、ここでの食事も一旦はこれで最後だ。


「ということで、店主さんも飲みましょう。他にお客さん居ないし」


 上機嫌のレピアス様は女神バージョン。既に『お米のお酒』を取り寄せ済み。皆に注ぐ。


「かんぱ~い」


 くっと飲み干す。美味い。


「よし、この際やっちゃえ。神権濫用、お取り寄せっ!」


 何やら出すレピアス様、何だろうか。


「店主さん、これ使ってお料理作って~調味料なんだ。美味しいから」


 瓶やら陶器の壺やらを差し出すレピアス様。


「おいおい、そんな初めての調味料でいきなりなんて無理だぞ」


 無茶な要求に当然の抗議をする店主さん。だが、レピアス様は胸を張る。


「大丈夫です。貴方はできます。魂の奥底に染み込んだものは消せないんですよ。一舐めすれば、どうすれば良いか理解できる筈です。ささ、騙されたと思って試して下さい。これがお醤油、これが味噌、これがみりんですっ」


 なんかよく分からないけど、本当に神権を濫用していることだけは分る。イナゴ平気かな?まぁ、世界への影響は小さいか。


「あーもう分かったよ。不味くても文句言うなよ」


 そういって、厨房へ向かう店主さん。心付けいっぱい置いていこう。


「クーシュタに帰ったら、暫くはゆっくりしようね。薬草採りとか、私もやるよ~」


「はい、女神様。でも一人でも極域使えるようになりたいから練習は頑張り続けます」


「うんうん。スティナちゃんなら時間の問題だよ。まぁ半年以内を目標にしよう。トレニアちゃんもね」


「ええ、スティナ先輩は大好きですが、遅れは取りたくないので。一緒に進みます」


「仲良しで素敵だね。あ、一点だけ注意しておくよ、二人が極域魔法を”本来の勇者パーティー後衛レベル”で使えるようになった場合、共同詠唱で”極域の上”が使えちゃいますが、使っちゃ駄目です。一度ぐらいなら目こぼしされると思いますが、二回目は確実に私の上司が介入しますので。嬉々として攫いに来ますよ。私みたいになりたくなければ、やっては駄目です」


 さらりと、怖い話をするレピアス様。ちょいちょい感じていたけど、もしかして。


「あの、今の話だと、レピアス様って元々人間ですか?」


 さらりと聞いてみる。


「あれ、言ってなかった?うん、言ってなかったね。そーだよ。こことは別の世界だけど、間違いなく最初は人でした。剣も魔法も、何もかも極めて、昇りつめて、人として存在することを許して貰えなくなった。今では上司の虐めに耐える日々。世知辛いよねぇ」


 世知辛いとかいう話だろうか。世界の真理っぽい話を開示されている気がするけど。まぁ、いいかレピアス様だし。


「おう、作ってみたぞ」


 店主さんが料理の乗った皿を持ってくる。何だろう、凄く良い匂い。


 ああ、もう、匂いで分かる。これ、この酒に合うやつだ。凄く合うやつだ。


「やったー。ささ、店主さんももう一杯。幾らでもありますからね~」


 幸せそうなレピアス様。


 ごめんなフロックス。お前の責任だと思ってたけど、このパーティ―酒の消費が多いの、主犯はレピアス様だ。



◇◇ ◆ ◇◇ 



 空の酒瓶が何本も何本も、トロフィーのように並ぶ。


 神の力を以ての取り寄せに制限はない。米の酒だけでなく、芋の蒸留酒、栗の蒸留酒、なんか分からないけど美味しい酒、いっぱい空になった。


「そうか。その青髪のお嬢ちゃんがお前さんの恋人か、美男美女でお似合いだなぁ」


 店主さんも完全に出来上がっている。


「えへ。そうなんです。恋人なんです」


 赤い顔して、嬉しそうなスティナ。可愛い。


「くぅうう、それは構いませんがっ!私と半分こですっ!!いいでしょ!?私女ですよ、スティナ先輩が妊娠したら確実にライノさんの子供ですよ?半分くれても不利益ないです」


 俺の胸倉を掴んで、カックンカックン揺さぶるトレニア。


「前言った通りですね、私が名目上第二婦人でいきましょう。お得ですよっ私の縁者なら色々と顔が効きますよっ!」


「トレニア、家柄的に私が第一で貴方が第二になれるわけないでしょ。対外的には私が第二だよ」


「いや、突っ込むのそこ!?」


 もう全員へべれけ。今までは翌日も特訓だったから、少しセーブしていたが、今日は気にする要素は何もない。


「兄ちゃん、そっちの娘も娶るんか、凄いな!!」


 肩を組んできて、ガハハと笑う店主さん。楽しい人だ。


「それは楽しい家ですね。私は屋根裏に住み着いた妖精枠で一緒に暮らしますね」


「いや、レピアス様は毎日酒持って現れる謎の呑兵衛枠でしょう。そんな枠あるかは知りませんけど」


 突っ込む俺、俺も相当酔っている。


「はぁ、もうね100歩譲って名実共にライノさんの二号でもいいですよ。スティナ先輩が好きなだけで男性が駄目なわけではないので。スティナ先輩と家族になれますからね」


 トレニアさんも、もうよく分からないことになっている。


「あっ、なら!凄いこと思いついた。スティナちゃんとトレニアちゃんにいっぱい子供を生んでもらって、兄弟姉妹で次世代の勇者パーティー作ろう。皆なら子育て失敗しないだろうから、フロックスにはならない筈。わぁ、勝てる!勝てるぞ。覚悟しろ魔王~~~」


 ぶんぶん手を回すレピアス様。


 そんな感じで収拾付かず、キサント島での最後の夜は過ぎていった。



◇◇ ◆ ◇◇ 



 それなりの金を積んで漁船を出して貰い、島を出る。

 海原を超え、港町へ。そこで馬車を御者付きで手配し、都市クーシュタに向う。


 ガタガタと、平和に馬車に揺られていたが、異変に気付く。


 街道を反対、つまりクーシュタから離れる方向に進む大量の馬車。



「変ですね。街道を反対に行く馬車が多すぎます」


 トレニアが緊張した声を出す。


「一旦馬車を止めて確認しよう。反対に行く馬車に聞いてみればいい。御者さん!止めて下さい」


 御者は横に寄せ、指示通り馬車を止める。


 俺は馬車から降りると、反対へ向う馬車に並走し、声を張り上げて聞く。


「すみません、異様に馬車が多いように見えます。何かありましたか?」


「オパールワームが出たんだよっ!」


 反対に向かう馬車の御者が叫んだ。



 評価や感想、ブックマークいただけたら、凄く嬉しいです。小躍りします。


 執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。


 すみません、この話は酒飲みながら書きました。

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