24 日本酒も美味しいです。
漁村の酒場、今日も美味しそうな魚料理が並ぶ。メインは香草と共に煮た白身魚、他にも揚げた小魚や、蒸した貝など。
「店主さん!抜栓料なら払うので持ち込んだお酒飲んでもいいですかっ?」
レピアス様が店主に尋ねる。スティナとトレニアが共同詠唱で極域魔法に成功したお祝いだ。
「抜栓料なんざ要らないが、うちの料理に合う酒じゃなきゃ嫌だなぁ。先に少し飲ませてくれや」
テーブルにやって来て店主は言う。
「分かりました。神権行使、お取り寄せっ!」
歪む空間、現れる酒瓶。
「ささ、店主さんどうぞ」
小さな陶器の器に透明な液体が注がれる。「おう」と言って飲む店主さん。
しばし静寂。
そして……ぽろりと店主の目から流れる涙。
「うまい。なんだこれ、うまい。ああ、でも何だろう。初めて飲むのに懐かしいような、そんな気もする」
「ふふっ、米のお酒です。どうですか」
「ああ、もちろん文句はない。くそう、料理負けちまうかもな。ありがとよ、素晴らしい酒だ」
「負けたりしませんよ。ここのお魚本当に美味しいです。じゃあ飲みましょう!!」
レピアス様が皆に次いで下さる。店主さんにももう一杯。
「ではっ、スティナちゃんとトレニアちゃんの極域成功を祝して!かんぱ~い」
杯をキュッと、くぅ美味しい。
何だろう、すっとして、キリッとして、まろやか。
ああ蒸し貝が言っている、そいつの相方は俺だと。パクリ。うん、合う。
「改めて、極域おめでとう。『エクスブリニー』の大爆発は素敵だったよ。今度『侵徹』も練習しようね。そして、勇気出して告白したライノくんも讃えます。偉い!」
あぐふっ
「な、なんで」
何故それを知っていらっしゃる。
「部屋に戻って、2秒でばれたよ」
と、苦笑いのスティナ。
「女神の力は使ってないよ。人間バージョンだし。でも、顔に書いてあったからね。誰でも分るよ。あ、トレニアちゃんが今度じっくり話があるって」
「ええ、じっくり」
少し怖いトレニアさん。
「さ~て、煮魚行くぞ~」
魚をつつくレピアス様。俺も頂く、うん香草の風味と塩味がいい感じ。
食は進み、お酒も進む。
明日からはまたダンジョンだ、より強い敵を求めてもっと奥へ。
◇◇ ◆ ◇◇
勇者パーティーは引き続き『果てなくの墓地』で少しづつ訓練を積んでいた。
結果、浅い層の敵であれば、安定してモンスターを倒せるようになっていた。中堅冒険者として恥ずかしくないレベルである。
なので、そろそろもう少し深くという事になり、勇者達は地下11階層に進んだ。ダンジョンはここから中低層とされる。
そして早速その洗礼を受けていた。
会敵、リッチ。1体のみ。
ライノとスティナが居た頃にはザコでしかなかったが、中堅冒険者にとっては強敵である。
会敵した瞬間、前衛三人は筋力増強ポーションを飲み干す、何度も練習した動作は流石に早い。
紫色のローブを羽織った骸骨、その眼孔の奥が光り、木々の軋むような音が響き渡った。詠唱だ。
「行くぞ!アニタとヘルヴィは皆を守れ!俺は突撃する。支援頼む!」
勇者フロックスは走り出す。
戦ったこと自体は何度もあるのだ、何をして来るかは知っている。こいつは通常初手でスケルトンを召喚する。
案の定、ガリガリと不快な音を立て、スケルトンが生み出されていく。
一体一体は弱い。武器は尖った骨を手にしているだけで、遠距離攻撃手段は持たない。
問題は一つだけ、リッチの召喚速度が極めて早いこと。時間を与えれば大量に召喚され、骨の海に飲まれて負ける。
つまり速攻一択。
フロックスは走る。マルケッタの防御魔法が飛んで来て彼を包む。リッチの魔法でも1撃は防いでくれるはずだ。
暗い紫の光弾が三つ生まれ、同時に放たれる。リッチの闇属性攻撃魔法だ。
フロックスは必死に横に飛び退き、回避を試みる。しかし、うち1発は避けきれず直撃、防御魔法が剥げた。
次を撃たれるのは不味い。フロックスは再び突進する。間合いを詰め踏み込み、斬りかかる。しかしリッチは空へ浮いて剣を避ける。
空に浮くリッチに矢が飛ぶ。ミラの攻撃だ。リッチは防壁を展開してそれを防ぐ。続いてシーラの攻撃魔法がリッチの防壁に直撃、防御を破壊する。
後衛がきちんと機能している。
再び光弾を三つ生み出すリッチ。対してフロックスは手にした剣をリッチ目がけてぶん投げる。
不意を撃たれたリッチは攻撃に使うはずの光弾を飛び迫る剣に向け発射し、迎撃する。弾かれる剣。
だが、そこにミラの第二射が飛び、リッチに突き刺さる。怯んだところにシーラの攻撃魔法が直撃、集中が切れたのか、リッチが地面に落ちる。
武器を拾う時間はない。フロックスはリッチに走り寄ると、そのまま足で踏み付ける。骨の砕ける音。格好のいい倒し方ではないが、何度も何度も踏み付ける。
やがて、リッチの眼孔から光が消えた。
振り返る。皆無事だ。アニタとヘルヴィ、シーフ二人はきっちり後衛を守ってくれた。
「よし勝った!」
右腕を振り上げ、フロックスは叫んだ。
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執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。




