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20 勇者はリザードマンにリベンジします


 勇者パーティーは灰雫の森に向かった。リベンジマッチだ。


 パーティーの荷物には大量の筋力増強ポーション。まずは森の入口で一本、皆で飲む。


 魔法使いや僧侶が飲む必要はないとフロックスは思っていたが、彼女達自身が「私も飲みます」と言うので飲ませた。

 確かに万が一、杖で敵の一撃を受けざるを得なくなった時、それの有無が生死を分ける可能性もある。


 探索を開始する。その直後に茸型モンスターのマジックスポア3体と遭遇した。毒の胞子弾を発射してくるモンスターだが、これは勇者フロックスとシーフ二人が突撃しあっさり殲滅、探索を続けた。


 ダンジョン指定されていないこの森、そこまで頻繁に敵には会わない。


 薄暗い森を2時間程彷徨い、ついに会敵した。


 因縁の相手であるレッドリザードマン3体、更にマジックスポア2体。しかもレッドリザードマンのうち1体は体がやや大きい。モンスターも稀にこういった個体差を持つ。


 敵も既にこちらに気付き、目を敵意に光らせている。


「大型は俺が持つミーナ、茸を頼む!」


 勇者フロックスは抜剣、筋力増強ポーションはばっちり効いている。


 曲剣を振りかざし突進してくるリザードマン達。騎士アニタと戦士ヘルヴィも武器を構え迎え撃つ。


 大型リザードマンの振り下ろす曲剣をフロックスは剣を斜めに受け流す。凄まじい衝撃。当然だ、敵の腕はフロックスの太ももより太い。こんな筋肉の塊みたいな敵の腕力をナメていたのが、そもそも間違いだったのだ。


 二度の苦戦を経て、フロックスはモンスターの強さを認めることが出来るようになっていた。


 筋力増強ポーションは仲間達にもきっちり効果を発揮していた。アニタはギリギリといった感じではあるが、盾でリザードマンの攻撃を受け止めている。ヘルヴィも槍で曲剣を弾いている。



「お姉ちゃん!足場っ!」


 シーフのミーナが叫んで走る。魔法使いシーラが初級魔法『一時の足場』を発動。それを使って、ミーナは前衛達を飛び越え敵の後方へ。僧侶マルケッタの防御魔法も飛び、ミーナを包む。これで胞子弾が直撃しても数発は問題ない。


 フロックスは剣を横なぎに払い大型リザードマンを斬り付ける。後ろに躱そうとする敵、切っ先は敵の腹部を捉えるが傷は浅い。

 フロックスは再びリザードマンと斬り結ぶ。ポーションのお陰でなんとか対処できていた。


「キノコ排除っ!」


 ミーナの声が響く。


 視線を走らせる、アニタは無事、ヘルヴィにはレベッカがフォローに入り敵を押している。



 その時、目の前の大型リザードマンの肩に矢が突き刺さり、敵が怯む。ミラが木の上で弓を構えていた。敵後衛が倒れて安全が確保されたから、登って上からの射線を確保したのだろう。


 フロックスは剣を振り上げ、真っ直ぐに叩き下ろす。リザードマンは曲剣で一撃を防ぐが体勢を大きく崩した。


「勇者しゃがんで!」


 後ろからシーラの声を聞き、フロックスは身をかがめた。

 フロックスの頭上を通り過ぎた魔法弾が大型リザードマンを直撃する。だがまだ致命傷ではない。

 フロックスは立ち上がりつつ、剣を振り上げる。今度は完全に敵を捉えた。皮膚を裂き、肉を断つ。


 崩れるリザードマン。丁度そのときヘルヴィが槍でリザードマンの喉を貫いていた。駆け戻ったミーナが後ろから斬り付け、怯んだスキに渾身の突きを叩き込んだのだ。


 フリーになったフロックスはアニタと戦うリザードマンに容赦なく横から斬り付け、頭部を叩き割る。



 勝った。



 前回より数も多く強力な敵に危なげなく勝利することができた。パーティーメンバーも逐一フロックスが指示をしなくても動いてくれた。

 メンバーが成長しているのもあるが、やはり前衛に余裕があると後衛も安心して動けるのだろう。


 よし、ポーションもっと買おう!勇者フロックスはそう思った。



 ◇◇ ◆ ◇◇ 



 勇者パーティーは危機的状況に陥っていた。


 激しい腹痛でパーティー全員が半ば行動不能になったのだ。


 レベッカとヘルヴィは今ここにいない、故あって少しだけ離れた場所にいる。


 幸いなことに灰雫の森と呼ばれるエリアは既に脱している。ただの森、ここでモンスターに襲われる可能性は極めて低い。しばらくすれば戻ってくる筈である。


「ぐぅう、何だこれは、まさか毒か?」


「マジックスポアの攻撃は受けていないし、それは無いはずです」


 フロックスの言葉に、シーラが否定的な見解を示す。確かにそうだ。


「でも何か毒ガスとか」


「それなら喉や肺に全く影響がないのが不自然です」


 確かにそうだ。勇者フロックスは原因が思い付かない。生ものも食べてはいない。


「あの、もしかして、ポーション飲みすぎでは?」


 マルケッタの言葉にフロックスは「ハッ」となる。すごくそれっぽい。


 慌てて鞄からポーションを買ったときに貰った説明書きを取り出す。この説明書きは持続時間を確認するため一度読んだつもりだが、改めて見る。


 持続時間は十五分程度という説明の上に、赤い字で「服用は一日二本までを厳守して下さい。深刻な下痢を引き起こします」との記載があった。


 全く見えていなかった。これだ、間違いない。何せフロックスは今日9本飲んだ。他の皆も同じだ。


「そ、そういうことか。皆んな済まない。俺の確認不足だ。面目な……」


 フロックスは大切な女性達に辛い思いをさせていることを、素直に恥じる。だが、反省の言葉は途中までしか紡げない。

 勇者フロックスには今すぐ少し離れたところに行く用事ができた。超至急である。


「い、いっでくる」



 フラフラと進む勇者、少し間に合わなかった。



 評価や感想、ブックマークいただけたら、凄く嬉しいです。小躍りします。


 執筆初心者ですが、頑張ってみますので、よろしくお願いします。


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