9話 明かされる真実
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「それにしてもルチーナさんはなんでこんな大雨の時に外にいたんですか?」
大人が5人も入れそうな大きな浴槽に肩まで浸かりながら春は聞いた。
「私も気になります」
ミシェリーはシャンプーで髪の毛をワシャワシャしながら顔を向けずに聞いた
「ん〜たまには大雨の中外に出て見たくなる時ってない?」
「分かります!!私も昔、お風呂に入る前に雨が降ってたら外でびしょ濡れになって遊んでましたよ!」
「いつも怒られてたけどなー、」
足を伸ばしリラックスしながら言う美希
「それにしてもこの雨いつになったらやむんですかね」
「停電食らってるから情報源がラジオしかないんだよな、ここってラジオある?」
「ラジオ……そういえばここでは見たことないですね」
「ラジオなら下崎さんの部屋にあったぞー、」
「なんでそこにあるって知ってんのよ……」
「潜り込んだ」
「馬鹿じゃないの……?」
今でも外からはザーーと強めの雨の音が聞こえてくる。
ルチーナはこの雨が止み次第、力橋のいた研究所へと乗り込むつもりである。
雨が止めば一緒に家に帰ろうとミシェリーに催促されるであろうが、その場合はミシェリー1人だけで帰らせておくつもりである。
ここまで準備してきて邪魔が入ることもあったがやっと自分のやりたかった事ができる、それを考えるだけでゾクゾクしてくるルチーナ。
「?」
シャワーで頭の泡を流し終わったミシェリーが不思議そうな顔でこちらを見つめつつ湯船に足を入れる。
「あつっっっ!!」
「ミシェリーちゃんって熱いの苦手だったっけ…」
「この前のお泊まりと同じようにちょっとずつ入るんだぞー、」
ルチーナが何を考えているのかなどの考察が一瞬でとんだミシェリーは、この前三四素瀬荘に泊まったときのお風呂の入り方と同じく、足からゆっくりとお湯の暑さに慣らしていき、肩まで浸かった。
「はーーーお風呂上がってもやること何もなさそうですね〜」
天井を見つめながら春は呟いた。
事実、いつも春と美希が部屋でやってることと言えば学校から出された課題かゲームの二択、たまに漫画などの本も読んだりするが基本的に気分が乗らない日が多いので読まないことが多い、学校からも何の連絡もなく家に帰れと言われ、ゲームをしようにも停電してるからハードはただの文鎮と化し、充電式のゲームはかなり昔から触れていないのでバッテリーも殆どからになって使い物にならないだろう。
「やはりここはミシェリーちゃんの黒歴史を──」
「しないわよ!」
春は美希にかるくチョップをし、ミシェリーに「いつもごめんね〜」と代わりに謝っておく。
「それにしてもルチーナさん静かですね、もしかしてお風呂入る時って静かに浸かるタイプの人だったりしますか…?!」
「そんなことないよ、ちょっと考え事してだけだから気にしなくてもいいよ」
「分かりました!でもそろそろあがりますか?」
「そこでのぼせてる人もいるからなー、」
「だな」
3人はミシェリーの様子を見てからお風呂を騰がることにし、さっさと体を拭いて服を着た。
「ルチーナさんとミシェリーちゃんは先に部屋に行っててください、私たちは下崎さんになにか暇つぶしになるものがないか聞いてきますので!」
「ありがと」
「春ちゃんありがとう」
「頼んだぞー、」
「アンタは私と一緒に行くんでしょ!!」
流れで部屋に戻ろうとした美希を強引に引っ張って2人は奥の部屋へと消えていった。
2人きりになったことを機に、ミシェリーはルチーナに聞きたかったことを質問する。
「ルチーナさん」
「ん?」
「お風呂にいた時考えてたんですか?」
「まーこの大雨のことかな、いつになったら止むのかとか電気復活するのかなぁとか、それだけだよ」
「……確かに天気予報でも雨は予想されてましたけどここまでになるとは思ってなかったです」
「まあいつかは晴れるだろうし、有難いことにそれまではここに泊めさせてもらえるんだから、下崎さんに感謝しないとね」
「ですねっ!!」
部屋に戻って少し時間が経つと、2人が両手でおろいら入ってそうな箱を持ってきた。
「下崎さんに聞いてみたらこんなに準備してくれたよ!」
「ラジオもくれたぞー、」
箱の中には、お菓子やジュース、トランプやオセロなどの娯楽ゲームや、ニュースを聞くのに欠かせないラジオ、そして緊急時用の懐中電灯なども入っていた。
「これで懐中電灯が3本になったなー、」
美希は元々この部屋にあった懐中電灯2つと今持ってきたひとつを並べる、見事に全部おなじ懐中電灯である。
「下崎さんが教えてくれたけどこの大雨1週間ぐらい続くってラジオで言ってたらしいですよ」
「まじかよ…?!梅雨はすぎたぞ……」
「停電の情報とか聞きました?」
結構本気で驚いているルチーナに続き、ミシェリーは聞いた。
「それならあと数時間ぐらいで順次復旧するって、階段登ってる時にこのラジオが知らせてくれましたよ」
「これでゲームができるぞー、」
「ほんとにゲームのことしか頭にないわね……このアホめ」
「アホとはなんだー、」
「もうすぐ晩御飯だけどちょっとだけならお菓子もいいよね〜……」
春は美希の言葉を受け流すかのように他の話題を振り、そして箱の中からガサゴソとクッキーの入った丸いカンカンを取り出して1枚だけ口の中に入れた。
「あー、ご飯の前にお菓子食べるのはダメだぞー、報告するぞー、」
「しっ!今日だけ!特別!……美希も食べればいいじゃん!」
「ぬっ」
そして流れるように美希も2枚口に入れた。
力橋と久城の前には、ひとりの人間と1匹のクロネコがいた。
「意識は朦朧としてないか?」
「もう大丈夫…です」
両手での問に清水だけが答える、その後にクロネコの方を見ながら言った。
「悪いが今のところ健君と話す手段がない、だがその姿でキーボードは打てなくもないだろ?」
聞かれて俺は大きく首を縦に振る。
人の言葉を話すことができないクロネコの姿の俺にある数少ない意思疎通法である、キーボードでの打ち込みなら多少のやりずらさはあるものの文字を打てないことは無い、伝えたいことも伝えることが出来るのだ。
「その手で打ちにくいとはおもうがこのキーボードで頑張ってくれ」
そう言って力橋は俺の体をキーボードのあるデスクの上へと持ち上げた。
「早速だが、今の状況は理解…してないよな」
「全く分からない…っていうか覚えてない?というか、今まで誰かに操られていたようなきがします」
『清水に同じく』
「今現在の状況は分からずとも今まで自分の置かれていた状態はあるていど理解しているようだな」
「?」
清水は分かりやすく首を傾げる、それに答えるかのように次は久城が口を開いた。
「2人ともルチーナの事は分かるよね」
「あぁもちろん、温厚で誰にでも優しい美少女だろ」
『いろいろめんどうみのいいやつ』
「確かにルチーナは昔、誰からも好かれてなんでも出来るような子だった、2人が操られる前まではね」
「?」
再び清水は分かりやすく首を傾げる。
「2人とも能力についてはわかるだろ」
「はい」
『もちろん』
「能力を発現させる薬があるってのも頭には入ってるよな」
「はいってますね」
『おう』
「じゃあ、その薬を使ってから能力が自由自在に扱えるまで何日かかるか知ってるか?」
「何日…1ヶ月とかですかね…?」
『ふつかとか 』
2人は分からずに当てずっぽうで言ってみるが、その予想は外れた。
「分かんねぇか、…答えは飲んだその瞬間からだ」
「飲んだ瞬間からですか……えぇっと、この話がなんなんですか?」
答えを言われ、まだ察することができない清水はヘルプを求める、クロネコもキーボードを不慣れながらも打ち込み『おなじく』と打つ
「話は相当過去に遡るが、ルチーナがまだ能力を発現させていなかった頃、それまではお前ら2人の言うとおり、温厚で真面目な少女だったな」
「意味深な言い方しますね」
「お前らの記憶にはないかもしれんが、一緒に実験体とされていたお前らは、ルチーナがなんの能力を手に入れたか知っていたか?」
「そういえば……知りませんね」
『たしかに』
「清水と久城は飲んで1月後に能力を使うことが出来たよな、だがさっきも言った通り、厳密に言うと能力自体は薬を使った直後から発現してるんだよ」
「…と、言いますと?」
「あの時のお前らは薬を使って能力が発現したが、まだ発現したのか分からない状態で自分自身でも制御出来てなかったんだよ、だから自分の知らないところで自分の意志関係なく能力が発動するっていうなんとも危ねぇ少年って言われてたんだぞ」
「そうだったんですか……」
『しにんもでるかもしれなかったんだな』
「その事を踏まえて、ルチーナの能力についてだ、お前ら2人はさっきルチーナの能力を知らないと言ったが、アイツの能力は生物の記憶を改ざんしたり、精神に入り込んでその生物を動かすことが出来るっていうとんでも能力だ」
「そうだったんですね……それがどうかしたんですか?今の状況となにか関わりがあったりするんですか?」
「ありありだよ、さっき俺は能力は制御できるまで少しばかり暴走するって説明したよな」
『しましたね』
「ルチーナの能力も暴走する訳がなく、その当時周りでは精神異常者が数名でた、そして、ある日を境にルチーナの性格がガラッと変わった、そうだろ?」
力橋はルチーナの友達であった清水、俺、そして久城に聞いた、そして3人とも「YES」と答えた。
その日までは相変わらず世話を焼いてくれる優しい性格だった少女が突然、少しだけガラが悪くなり、これまでの清楚っぽさも少しばかり失われ、口調も優しげな口調から崩された口調へと変化していた。
「予想するに、ルチーナ本人が制御できなかった能力が、そのルチーナ本人の精神を変えてしまって、あの姿になったと言ってもいいだろうな」
「あの姿って……どんな姿ですか」
『きになる』
「そうか、お前らはまだ見てないのか、つっても見せられる映像もないし……」
「とにかく、今のルチーナは2人の記憶にあるルチーナとは全く別の人間です。そのうちとんでもないことをしでかしますよ」
「そうならない為にはアイツを止めなきゃ行けないわけだが……」
そこで力橋は深く頭を悩ませる。
「話についていけないんでさけど、止めるんなら紐で拘束とかじゃダメなんですか?」
『ちなみにおれもわかってないぞ』
「そうか、ま時間が経てばルチーナがどうなってるのか分かる。あとルチーナを物理的に止めようとしてもすべて無駄だ、アイツは精神操者、なにをしようとも敵の意志を変えることが可能だ」
「じゃあ止めることなんて出来ないんじゃないですか?そもそもあっち側の目的も知らずに止めようとするのはどうかと思いますよ!!」
『もくてきぐらいききだすことってできないの?』
「いや、無理だろうな、アイツは恐らくこの都市にいる人間全てを操ることができる。実際に、この都市は治安が良すぎる。都市のどこを歩いてもゴミなんか落ちてないし落し物をしたらすぐに帰ってくる、なにより犯罪がここ数十年でゼロ件もおかしいだろ」
「そんなに治安いい都市だったんですかここ」
「ルチーナが悪いことに関する思いを消し去って無理やり善にしてるからな、良すぎて不気味だ」
『それならなおさらとめるきがわからない』
「そんなお前らに情報がある、本人に目的を聞き出すことが不可能でも、そいつの住んでるところに忍び込んで資料漁りすることは可能だ」
「資料漁り…?」
『どろほう?』
「ま俺は泥棒なんてしてねぇ、やったのは久城だ。勝手に人んち入って隅々まで見回ってからブツを盗む、完全に泥棒だな」
「ちょっと力橋さんが言ったから出向いたんですよ?!裏切らないでください!!」
「まあまあ、…んで、その泥棒してきてゲットした情報ってのがこれよ」
力橋はモニターにとある写真を映し出す。
その写真はいつぞやの久城の犯罪行為になるその夜に撮ったものだった。
「『100年物語計画』…?」
清水は写真内にある1番大きく太い字で書かれた文字を口に出した。
「詳細情報も写真撮ってるから自分で読んでね」
俺はそのメモに近い文章を読み進めていき開いた口が塞がらなかった。




