6話 何気ない日常に潜むモノ
文字数(空白・改行含まない):2513字
その世界は、人間の五感を完全とまでは行かないがある程度再現したゲームの中の世界であり、聴覚や視覚、痛覚さえも現実そのものに、ましてや設定を変更すればさらに刺激的なものへとなり、様々なユーザーが様々な使い方をこのゲーム出していた。
そのひとりとして、ルチーナはそのゲームを楽しむのではなく、何やら観察するような気でゲームの世界へと入ってきた。
(さてさて〜この前の平和さはどうなったかな〜)
このゲームは基本なんでもありである、街や国でスローライフを送るのも、冒険に出て強敵と戦うのも、現実世界にはない景色を探し求めて来るのも、こんなザ・ゲームのようなことをする者が少なくないが、さらにディープな事もやることが可能である。
子供には見せられない大人の街を形成したり、痛覚の感度をMAXにして痛みを味わったり、日々の何気ない鬱憤を爆発させたり、更に、直接ゲームのシステムに介入することも、可能であり、"許可されている"のだ。
そんな世界で過去がとても平和だったのは、まだゲームソフトどころかそのソフトを使うハードすら発売されたばかりで、そんな時の世界なんてお金を沢山持ってるものや相当なゲームマニアしか居なかったので、ユーザー人口も少なく、とても平和な期間であった。
しかし今現在ルチーナがその世界の入口となる門を出ると、そこはまさしく地獄と化していた。
(おお〜思ってた以上に爆発してるなぁ…!)
ルチーナは意味深じみたことを思いながら足を動かす。
発売当初ならここら周辺には宿屋や混合ギルド、武器屋などの序盤にあると助かるような建物や、ガイドNPCが置かれたりしているはずなのだが、今のここら周辺には全ての建物が半壊か全壊、綺麗に残っているものは後ろの世界の入口である門しかなく、所々の建物には文字化けした文面や英数字記号のコードが表示され、初めて来た人なら全く理解できない状況であった。
(そろそろゲームのサーバーにまで攻撃が入っちゃう頃合いかな?)
ルチーナは歩くのをやめて、羽もないのに空を飛び、最初の街を空から確認しながら考えた。
(されたら面倒臭いことが増えるからもうさっさとこっちも動かないとな……)
ルチーナは"一般ユーザーには不可能"であるコマンド機能で管理者権限のページを視野内に表示し、現在のこの世界のありとあらゆる情報を見ていった。
(ふむふむ……うわっ、総 PK数がもう400万超えてんじゃん、物騒ねぇ……ま、こんな物騒な状況にしてるのは私なんだけどね〜)
ルチーナはさらに情報を頭に入れていく
(えぇっと、マップマップ……これも酷いなぁ)
ルチーナが表示されたマップは、縦横それぞれ200×200の40000キロメートルの相当広いマップであるにもかかわらず、そのうちの3分の1、13000平方キロメートルが《表示不可能エリア》とバグが生じていた。
これもユーザーが地形の大幅変更をしようとシステムに介入した結果なのだろうと、ルチーナは解釈し、そしてそのゲームを楽しむことなくそのまま世界から離脱した。
「ルチーナさーんっ、一緒にゲームしましょうよ!!」
ルチーナが現実世界に戻って意識を取り戻すのと同時、部屋の扉の向こう側からミシェリーの声が聞こえてきた。
「今日こそ勝ってやるぞー、ハンデありでなー、」
その次に千歳美希の声の声も聞こえてきた。
どうやら今日は友達を家に連れてきてるらしく、その友達は来る度来る度ルチーナにゲーム勝負を要求してくるのだ。
いつもなら快く受けていたところだが、今回はパスの選択をとった。
「んあー、ごめん、今日ちょっと疲れてるから寝とくわーゲームはまた今度なー」
扉越しなのでルチーナは少し大きめの声で言い、そして今度はゲームの世界ではなく夢の世界へと入り込むのであった。
「ルチーナさん疲れてるのかな……」
扉を見つめながらミシェリーは呟いた。
「私に負ける訳には行かないから徹夜でゲームしてたんだろうなー、」
「ルチーナさんもそこまでしないと思うよ」
美希が言ったことに対し苦笑い気味に返すミシェリー、2人は頑固という訳では無いので、すぐに諦めて再びリビングへもどった。
「あれ?ルチーナさん来なかったの?」
「なんか疲れてるらしくて今日はお休みしとくって」
「きっと怖気付いたんだなー、」
「連勝無敗のルチーナさんがお前の何に怖気付くんだよ」
「ハンデだぞー、」
「みっともない……」
美希と春はいつもの何気ない感じで仲良くしていた。
ミシェリーはというと、キッチンの方にあるテーブルの上に視線を向け、あることに気がついた。
(あれ?ミーちゃんどこに行ったのかな……)
いつもならルチーナか私のどちらかのそばに居るはずなのに、今はルチーナの部屋にもいる気配はなかったし、ミシェリー自身の傍にいる訳でもなかった、さっきまで机の上に座っていたのに。
「ねぇねぇ、ミーちゃんどこにいったか知らない?」
きっとどこかで歩き回っているのだろうと、あまり心配しないでいたが、1度そんなことを考えてしまうと、沢山の妄想をしてしまい、心配事が増えてしまうミシェリーは、何気なく春に尋ねてみた。
「黒猫のことか?それなら……あれ、知らない間に居なくなってたな…」
「そっ、そう……」
「ま大丈夫だよ、滅茶苦茶懐いてるんだから今ごろ外に出て迷子とか無いはずだよ」
「そうかな……?」
「あんな賢いネコは今まで見たことないぞー、」
「そうだよね、ミーちゃんは賢いから迷子になったりなんかしないよね!!」
ミシェリーは先程までの不安を打ち消すかの如く自分に言い聞かせ、そして「ジュースなくなったからまた注いでくるね」と一言いい冷蔵庫の方へと足を運ぶ。
「ほんとにしらないのかー?」
「まあ見とけとも言われてなかったからゲームに集中しちゃっててね」
「まったくダメな子だー、ネコの行方も分からないなんてー、」
「お前もお前で他人の家なのに自分の部屋みたいな過ごし方してるのやめろよな?」
ミシェリーがジュースを注いでいる間にも、美希と春はおしゃべりをしていた、本当に、何気ない会話。心配事や不安なんて一切感じさせないその会話は、ドタバタするような日常とは真逆の、とても平穏な日常ともいうことができた。
投稿空いてしまって申し訳ございません!!m(*_ _)m
この時期いろいろと忙しくてなかなか手が出せませんでした……そろそろGWも近づいて来ますし踏ん張らないとですね!!




