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平和な日常にはバトルが必須【圧倒的処女作】  作者: 作作ころっけ
5章 神願の塔
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11話 必ず守ってみせる

「ルチーナさんこれっっ!!」


 ルチーナがエリアスタ魔法学園のランクダウンの記事を見た次の日の昼、突然清水が大声を出してルチーナにタブレットの画面を見せつけた。


「エリアスタ魔法学園で事件が起きたんですって!」


「エリアスタで?あぁそれなら昨日見たよ」


「昨日?何言ってるんですか、この事件起きたのさっきらしいですよ?」


 そう言いつけながらタブレットを押し出してくる清水に従い、ルチーナは画面を見てみる、すると確かにその画面にかかれている記事の日付は今日の2、3時間前を示しており…


「んなっっ?!?!今度は女生徒が攫われただぁ?!」


(なになにっ?!いきなりなに?)


『いや、なんかまたエリアスタで事件だってよ!』


「そうなんですよ!ってそれよりもさっき昨日見たとか言ってましたけど何かあったんですか?」


「あー、りっきー疲れて寝てたんだっけか。ちょっとそのタブレットかしてかして」


「いいですよ」


 お互いが驚いてばかりのこの状況でルチーナはタブレットを器用に操作し、昨日見た記事を清水にみせた。


「エリアスタの方で昨日もあって立て続けに2日…それもどっちも生徒行方不明って…」


「私の予想だけど、その犯人はキリガミレイヤ関連だと勝手に思ってる」


「それは…あっ、瞬間移動的なやつが使えるからですか?」


 清水はハッとしたかのように思い出し、そして続けて言った。


「でも、そうじゃなくても都市の秘密機関が関わってる〜とかなんとかありそうじゃないですか?」


(なは…やっぱ男なら最初はそう思ってしまうよな…なんかロマン感じるし)


『りっきーと同じような反応して……そんな』


「んな映画みたいなことがあるわけないでしょ」


「やっぱりキリガミレイヤの仕業なんですかね…」


「だから!また行くよ」


「行くって、どこにですか?」


「そりゃ『神願の塔』に決まってるでしょ」


「なんでですかぁぁっっ?!?!?!」


(はぁぁぁっっ?!?!?!)


 清水は絶叫した(ついでにクロネコも)、絶叫して四つん這いになって少し震えてる。


「?…どうしたんですか?」


 そんな今にも魂が家出しそうになっている清水を見つけたノルアは空になった洗濯カゴを持ちながらこちらに寄ってきた。


「いや、説明すんのだるいからちょいと能力つかうけどいい?」


「構いませんが…」


 不思議そうな眼差しでルチーナと清水を交互に見ていたノルアに能力を使って手短に説明をする。

 そしてものの数十秒で今までの話を伝え終わったルチーナは冷蔵庫の方へお茶を取りに行き、次にノルアが口を開いた。


「……少しぐらい頼ってもいいのではないですか?」


「……!!!!その手がありました!いいですよねルチーナさんっ!」


 ノルアの言ったことに対して何かを全て把握したのか清水はその体をはね上げてルチーナの元へ駆け寄る。


「アイツを……ねえ」


「いいじゃないですかルチーナさん!」


「「完成品にして失敗作の我が妹」……まっ、正直わたしももう一度『神願の塔』に行くのはだるいとは思ってたから」


「いいんですかっ?!」


 ルチーナは目をキラキラさせている清水を目の前にして断る事なと出来なかった。

 だから答えは1つ……


「ご自由にどうぞっ」


「っしゃぁぁぁっっ」


 数分前の清水とは一変、今の清水は好きな女の子と付き合えた時の中学男子のようなキラキラした顔になっていた。


「では早速ですが攫われた女生徒と昨日の事件の魔法を使用した生徒の上方を……」


 そう言うノルア、もとい「完成品にして失敗作の我が妹」は目を閉じ集中し始めた。

 完成品にして失敗作の我が妹、誰の妹?……ルチーナの妹である。

 完成品にして失敗作?……この妹は人間ではない。

 完成品?失敗作?……人を守る力は誰よりも劣らない、でも姉であるルチーナの力には負けてしまう。

 どうして妹?なんでルチーナが姉?……この「完成品にして失敗作の我が妹」──ノルアは"被検体番号04、猫塚 結望のクローン実験の失敗作"なのである。


 その昔、4人の少年少女は被検体となり実験をさせられた、そこで1人は物体を操れる力を()、1人は空気を操れる力を、1人は生物の精神を操れるものとなり最後の一人、猫塚 健は二人目の空間操作、三人目の精神操作の2つの力を同時に取得できないなかと、実験のさせられ、そして失敗した。


 それにまだ諦めのつかない研究者はルチーナを母体としたクローンの制作に成功、そしてそのクローン相手に健と同じような実験をした所、複数の力を扱えるノルアが誕生した。


 そんなノルアは本当に様々な力を扱うことが出来、今だってものの数分という短時間で今回の事件の概要を理解することが出来た。


「まず、関係するエリアスタ魔法学園の生徒2人についてですが、共通点としては魔法が使えるというものと、2人とも能力発現剤を使用した形跡があります」


「それって……」


「更にその生徒に襲われた一般人も同じく能力発現剤を使用しています」


「まさか能力のことを認知してる奴の仕業か?!」


「ルチーナさん、御明答のようです。この事件の中心の人間はあなた方がよくご存知なさっている御方です」


 ルチーナや清水の数少ない知っている人の中で能力について認知しているもの、それは……


「「力橋(りきばし) (わたる)……」」


 2人が声を揃えて言ったその人物、力橋(りきばし) (わたる)とは、能力を魔法の上位互換として考えている人物で、その能力をこの都市全体に広めようとルチーナや清水といった能力を使える3人を毎度毎度秘密の実験所に呼び出している張本人、ルチーナや清水の敵である。


「ついでに朗報ですが、力橋からはっせられる貴方(ルチーナ)に対する殺気が物凄いことになっていますよ」


「殺気…?」


 なんのこっちゃと清水は首を傾げているがルチーナには心あたりがある。いや、心当たりしかない。


「清水には言ってなかったっけ。毎回毎回実験される度にその研究者の記憶とコンピュータ内のデータを改竄してんの」


「……それって……あれがこうなってそれがこうなって……」


「理解してる?」


「理解し………ぃぃぅ…!!た!理解しました!」


「まっ、力橋はどうにかして私の力で変えられた記憶を取り戻したんでしょ」


「その通りです、どうなさるんですか?」


「はぁ……どうにかできると思う?」


「と、言いますと?」


 その場のルチーナ以外の全員が理解していないようなのでしっかりと分かりやすく説明しだした。


「私の精神操作を逃げきれたってことはそれに対する何かしらの力を手に入れたって訳、そうなると私以外の清水の物体操作とか久城の空感操作に対抗できる何かも手に入れた訳、もう理解できるでしょ?」


「はい、なんとなく理解は出来ましたけど……えっと、ノルアさん、殺気ってどのくらいなんですか?力橋の」


「「殺したいぐらいイラついている」とかではなく、完全に「殺したいぶっ殺したい潰したい死ねぇぇ」と嘆いています」


「それって単なる恨みじゃないですか?!」


「そうだよ、清水もあいつの性格知ってるでしょ、あの生意気な」


 清水の今日の情緒は不安定だった、今の清水は先程よりもガクガクと震えている。


「知ってはいますけど……るっ、ルチーナさんはどうしてそんな平気なんですか?」


 震える声で訴える清水、それに対してルチーナはこれまで震えるどころかなんの表情1つも変えずに話し続けている、声だって全く震えていなかったのに……


「あっ、あぁ…内心びびってるよ……」


 そんなルチーナの表情がいきなり崩れ始め、目から涙を流し始める。


「……ルチーナさん?大丈夫ですか……?」


「…っっ…」


 清水の心配に答える暇もなく嗚咽しはじめた。


「ルチーナさん?!」


 流石のノルアもただ見守ることを辞め清水と同じく心配し始める、しかしルチーナの涙はどんどん増えていき、手に持っていたペットボトルのお茶の事も忘れ腰を抜かし立てずに床にへたりこんでしまった。

 その拍子にキャップの開けっ放しだったお茶はルチーナの服に思いっきりかかってしまった。


「清水さんタオルを!」


「わかりました!」


 途端にニルン邸のリビングは慌ただしくなる、クロネコの俺はずっとルチーナの足下にいた、ルチーナに話しかけようとも相手側が能力を使っていないので意思疎通も不可、ただ横にいることしかできなかった。

 それも意思疎通ができなくなったのもルチーナが泣き始めてからではない、ノルアがやって来てから事件の真相を聞かされた時から。


 ルチーナは能力を使って俺と話しをすることすらままならない程に、内心おどおどしていたのだ、実際、話してる途中ルチーナの脚に水滴のようなものがツーっと降りていった。最初は汗かなんかかと思っていたけどそれから直ぐにルチーナは泣き出しへたりこんでしまった、さっきだってお茶をがぶ飲みしていたのだ。


 そんな結望の姿をみて俺はある前世の日のことを思い出した。

 俺がスーパーで買い物をしだした帰り、十字路の角を曲がったところでカバンを背負った1人の少女が大人の男と話をしているのが目に入った。

 最初は兄妹なのかとおもって素通りしようと思ったがその直後、少女は腰を抜かしてアスファルトの上にへたりこみ、背中をふるわせていた。

 それを目撃した俺はスーパーの袋を投げ出しそしてその少女の元に駆け寄った。

 駆け寄った瞬間その男はその場からダッシュで逃げ出し、俺は気がついた。


「ゆみ……」


「お兄ちゃん…うぇへぇぇん!!!!」


 その少女は俺の妹、結望だった。

 アスファルトは結望を中心に濡れて色が変化していく


「大丈夫だ、これからは俺がいるから安心しろ…な?」


「ぅ……うん…」


 思えば結望がブラコンになる原因はこれが始まりだったのかもしれない…と。


 そんな昔話を思い出しながら俺はこの世界でも結望(ルチーナ)を助けなければならない、もうコレ以上怖い思いをさせたくはない、そう心に決めた。

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