5話 ゴキブリという名のモンスター
「やっはりおひおいひ〜っ」
(やっぱりお肉おいし〜っ)
フォーク片手にそういったのはミシェリーという少女だった。
ちなみに苗字(?)はまだ分からない、そう言えばまだ聞いたことないかもしれない、ご主人の苗字。
やっぱり異世界だからミシェリー・シーリアンみたいな感じの名前なのかな…?
またいつかミシェリーの本名聞ける日を待ち遠しにしておこう!
話を戻してミシェリーが今食べているこの肉はテソテリケ肉という、見た目がまんまステーキの結構美味しそうな肉。
そしてこのお肉を食べている場所が「ただの飯処」という間抜けな名前をしたレストランみたいな場所だ。
あの豪邸の門を抜けたあと、「美味しい朝食が食べれる場所」というミシェリーのリクエストにより、ノルア館長の知っている中でミシェリーの言う「美味しい朝食が食べれる場所」を教えてもらい、今現在ミシェリー、ノルア館長、俺の2人+1匹で「ただの飯処」という所に行き着いたのだ。
俺とご主人は「ただの飯処」に入ってかから1番左端の角の方に陣取り、店員を呼んで朝ごはんの注文をした。
ミシェリーは今食べている「テソテリケ肉」を頼み、ノルア館長は「朝食サラダ」というなんともダイエット中の人に向いた朝ごはんを注文した。
ネコである俺はと言うと、店員さんの気遣いによりネコ用のご飯(肉の塊)を用意してくれた。
この世界の人達はネコに優しいのかも、そう思えた瞬間だった。
俺が朝食には少しきついネコ用の朝ごはんをムシャムソャかぶりついている時、突然ミシェリーが疑問に思っていたことをノルア館長にぶつけた。
「ねぇノルアさん、ノルアはいつも自分のこと’召使い’なんて言ってるけど私はそんなこと思ってないからかしこまって話しかけなくても、普通に話してくれてもいいんだよ?」
と、言うことだった。
ノルア館長とご主人の出会いがどんなものかは知らないけれど、何故かノルア館長はご主人の「召使い」という認識で働いているみたいだった。
けれどミシェリーはそんな酷い呼び方じゃない方が良い!と言い、ノルア館長に「もっと気軽に話しかけていいんだよ」と言った。
…言ったはいいのだが……
「有難いお言葉ありがとうございます。ですが私はどうもミシェリー様相手に崩した話し方をするのが難しいようで…」
「難しいかな?私がノルアさんにお話してるみたいな感じでいいんだよ?」
ノルア館長は何故かミシェリー相手に崩した話し方をするのが難しいらしい。
これまたどうしてこんな関係なのか知らないけれど、ご主人的にはノルア館長とお友達のような関係になりたいのかな?
そうならばノルア館長はもっと崩した話し方をしないとな、あ、もしかして今まで話すようなお友達がいなかったとか……?
と、そこで俺はノルア館長に殺気ある視線を向けられた。
「にゃにゃぁぁっ!!」
(だから勝手に心読むなってぇっ!)
「ほらほら、ミーちゃんもこう言ってるんだからノルアさんも、もう少しゆったり話していいんだよ?」
と、そこで心の叫びを勘違いしたご主人が一言、それに対してノルア館長は「そっ、そうだ…ね…?」と、ミシェリーに対する話し方を少し崩した。
それに敏感に反応したご主人は……
「そう!そんな感じだよノルアさん!」
「にゃにゃにゃ〜〜」
(頑張れ館長〜)
「ありがとうござ……あ、ありがとう……」
「うんうん!」
おおっ、これは珍しいんじゃないか?!
いつもは冷酷な感じでSっ気のある人が今は赤面状態で耳まで真っ赤になってるじゃないか!
おうおう、今度から館長をいじる時はミシェリーを味方にしとけば安心だぜっ
「すみませんミシェリー様、ミリーさんがトイレに行きたがっているようなので私がつれていってもよろしいでしょうか?」
「えっ、ミーちゃんトイレに行きたかったの?えっ、ええっと!じゃっ、じゃあノルアさんおおお、お願いします?」
「少し1人にさせてしまいますが、失礼します」
俺がノルア館長の弱みを握ってニシシと悪い顔をしている隣でご主人とノルア館長が何か話を進めていた。
だがそれに気づいた時にはもう遅かった。
俺はミシェリーに持ち上げられたあと、ノルア館長の手に渡り、「周りには注意を払ってください」と言って、先程まで楽しくおしゃべりしていたテーブルから離れ、何やらトイレの方に向かっている。
「にゃっ!にゃっ!にゃぁっっ!」
(えっ、ちょっ、何?!)
『ミリーさん?少しお話がありますのでお時間ただいてもよろしいですか?…いえ、いただかせてもらいますね』
俺がにゃーにゃー叫んでいると突然頭の中で声が聞こえた、その声はノルア館長であり、何やら笑みを浮かべながら裏に怒りを隠している。
そんな感じで語りかけてきた。
えっ、ちょっ、まじでなんなんですか!やめてかださい!たっ、助けて!ご主人!!
こっ、この館長!人の心を「勝手に」読むだけじゃなくて、人の脳内に「勝手に」入り込んで語りかけてくるんです!
誰でもいいから助けてくだ──
『あなた、先程私に友達がいないなどと言って、いや、思っていましたよね』
俺が心の中で助けを求めている所を横から入り、突然聞いてきた。
ノルア館長の声は先程の声とはトーンが下がり、初対面の時と同じような緊張感がそこにはあった。
しかも「思っていましたよね?」ではなく「思っていましたよね」と疑問符を取り払っていた。
「にゃ……にゃぁ……」
(え、勘違いでは…?)
『とぼけないでくださいね?ふふふふふ』
「にゃ、にゃぁぁっ!」
(え、何?何が始まるの?!)
ノルア館長がそろそろやばい、なんかイカれてる。
待って俺なんか実験とかに使われないよね?!俺モルモットじゃないよ?ネコだよ?!
えっ、ほんとに怖いんだけど……ノルア館長……きっ、気を確かに……
『イカれてるなど失礼な、私は今からあなたに、私とミシェリー様が出会った時のお話をあなたの頭に叩き込もうとしているだけで──』
ノルア館長が最後まで言い切ろうとした瞬間…
「キャァァッ!!」
「何事っ!はっ、ミシェリー様!」
ノルア館長が俺を手に抱えトイレ(♀)に入ろうとした瞬間、何処からか女性の悲鳴が聞こえた、だいたい予想する感じ、スタッフオンリーで ある厨房辺りから聞こた気がする、ここからじゃ、何も分かることはないと思う、ただこれだけは言えた、
ご主人の悲鳴ではないことは確かだった。
「にゃにゃにゃにゃ!にゃにゃぁぁっ」
(館長!さっきの話はまたいつか!今は何が起きてるか確認を!)
「あぁ知っている!」
そう言ってノルア館長は俺を強く抱き締めミシェリーの元へと小走りでかえった。
そしてミシェリーの安全を確認してから悲鳴の発生源であろう厨房の方を覗いた。
そして俺とノルア館長はソレを見た。
そのみっともない姿を…
「ごっ、ゴキブリ……」
そこには食べ終わった食器やそれを運ぶためトレーを床に落とし、腰を抜かして床にへたり込む、少女の姿があった。
そう、ゴキブリを見てあのバカでかい悲鳴を上げたのだ。
その悲鳴によって「ただの飯処」の空気は静まり返り、店の中にいる人の視線全てがその少女とゴキブリに注がれていた。
「ゴキブリさんは食べ物が欲しかったんだね〜」
それを見たミシェリーはゴキブリを嫌ともせず、逆に優しく語りかけるようにそう言い、
「モンスターでもないゴキブリ如きで悲鳴をあげるなど……」
それを見たノルア館長はゴキブリを、ゴミを見るような目で見ながら小声でそういった。
「にゃ…にゃ〜」
(ゴキブリという名のモンスター襲来…)
それを見た俺は今日の朝立てたフラグをちょうど回収したことに気づいた。
またまたこのあとがきを使って次回予告していきやす
前回とは少し違った感じにできたらいいな……
ミリー「いやぁ、まさかのゴキブリだったとはねぇ」
館長「全く、あの程度であの悲鳴を上げているようじゃ世の中生きていけませんね」
ご主人「ゴキブリさんも食べ物が欲しくてさまよってたのかなぁ〜〜」
ミリー「そうかもなぁ〜どんな生き物も生きるためには必死だもんな」
館長「ミリーさんは、必死に見えなそうですが」
ご主人「そんなことないよ!ミーちゃんは必死だよ!……なっ、何かに!」
ミリー「ご主人……分かってます…俺はまぬけってこと…」
館長「そろそろ次回予告をしないと行けないのですが」
ご主人「そっ、そうだね!」
ミリー「あっ、逃げた!ご主人逃げちゃダメだろ!」
館長「次回、生きるために必死だったミシェリーとノルアの出会いとは」
ご主人「いやぁ〜ノルアさんとの出会い…よく覚えてるよ〜」
ミリー「ぐっ、きになる……おっ、おい館長!あとで教えてくれよ?!」