8話 女神の前で寝かける者
ついて行った先には今までいた所とはまったく違った雰囲気の場所だった。
今までは床、壁、天井全てが医師に囲まれており、所々かけていたり苔があったりといい気持ちはしなかったが女神さまに案内された先は簡単に言えばお花畑のようなところである、足元は緑の芝生のような短い草と花で埋め尽くされており少し先には寂しげに椅子とテーブルだけが数個ほどあった。
やがてその椅子とテーブルの元へとたどり着いた女神さまとルチーナ、清水、俺、転生者のキリガミレイヤともう1人の少女の計5人と一匹は女神さまの指示に促されてその椅子に座った。
「では何からお話すればいいでしょうか……」
座ると目の前のテーブルの上に洒落たティーカップが5つ出現した。
「別に何でもいいけど〜…っとじゃあこのキリガミレイヤなる転生者について細かいことを簡単でいいから教えて貰っていいかな」
ルチーナは目の前にいきなり出現したティーカップに驚くことなく、そして話している相手が女神さまだということすら感じさせない崩れた口調で聞いた。
「この方については殆どあなたが察したようなもので間違いはありません」
「じゃぁその隣にいる獣人?がどんな人なのかを」
「その隣の子は猫科の獣人です。名前は「ミーナ」と言って、一人っ子であったミーナは幼い頃に両親をなくし、ぼろぼろな洋服をきて食べ物を探しに待ち中を歩いていたところ、見事に大人に騙されて奴隷商へ持っていかれました。そのあとの話は言わなくてもわかると思います」
「んー……ねえ女神さま」
「なんでしょう」
「女神さまはこのキリガミレイヤの今までの行いが悪いことをしているように見える時があったりした?」
「そうですね……細かく気になってしまう事を除けばしていないきがします」
「だよなぁ〜……」
………正直に言って、今ルチーナが何を考えて女神さまに質問したのか全く意味がわからない、ほんとに。実際俺だけじゃなくて清水もずっと口開いたまま耳だけ傾けて清水の口から言葉を発することないし…ちょっと今からもルチーナに任せるか……うん。
『お兄ちゃん私が何考えてるのか分からなかったの?!』
『えっ、あっ、おう、もちろん分からないぜ』
『そんな誇らしげにされても……じゃ説明すると──』
『ちょっとまて、説明しなくていい、お前は女神さまと色々話してていいぞ、俺と清水はこっちで色々やっとくから』
『……それに何かしらの意味って…』
『ない。断言したくないけど、ない。』
「………」
いきなり黙ってクロネコと意思疎通をしているルチーナを見て女神さまは首を傾げることもなく全てを察してティーカップを手に取り1口啜った。
その後も長い時間をかけて女神さまとルチーナの話は続き、俺と清水が眠りかけていたところで終わりを告げた、
「そちらの方からはなにかありませんでしたか?」
一応と女神さまは清水にも聞いてみたが、ほとんどルチーナが話していたおかげで清水の聞きたいこともなかったし、途中から集中力が途切れてどんなことを話していたのかすら分からなかったので清水の答えはNOだった。
「それじゃあ後のことはよろしく!」
「はい、わかりました。この度は様々な面でご迷惑をお掛けして申しわけございませんでした。また何か用がありましたらこちらの『神願の塔』の近くにいらっしゃってください」
「わかった、また困ったことがあれば聞かせてもらうよ」
さようならの挨拶を交わしたところで本当にお話は終了、正直俺と清水要らなかったんじゃないかって思うところもあるが、まぁその辺は気にしないでおこう。
俺たちはお花畑のような広間から出て、層ごとに分かれていた『神願の塔』を降りていった。
降りだから登る時よりかは疲れないかと思えばこれが意外と足に来た、思いっきりつかれて息切れしつつも数時間ぶりに外に出ると、太陽がてっぺんに登っており、今は真昼間であった。
「それでぇ、今からっ、どうするんですかぁ?」
普段から運動しない清水が息切れしつつルチーナに聞く
「ちょっと…まってぇっ、はぁ…はぁ…っ」
どうやらこっちの方は清水よりもやばかったらしく全然喋ることが出来そうにない。
直接脳内で話し合おうかと思ったけど今の状態なら脳に充分な酸素が行き届いてなくて考えもままならないだろうからここは大人しく待っておくか…。
「普通に考えてまずは家に帰りますか」
先に息切れ地獄から脱出した清水はとりあえず家に帰ることを提案、それを聞いたルチーナも一言も喋らずに親指をグッと立てていた。
「…えっと〜ここまで運転してきたバギー持ってきていいですか」
清水が次の提案をするとルチーナは少しマシになったのか顔を上げて首を縦にふる。
「それじゃあ少しお待ちを」
そう言うと清水はさっさとどこかへ姿を消してしまった。
キルカイア都市の外の世界の人にあの窓ひとつないバギーを見られるといろいろと問題になりかねないので、なにかしらの特別な許可がない限りキルカイア都市の技術で作られた物は持ち出し厳禁なのだが、ルチーナなどの人の記憶をいじれる特定の人物がいたら話は別である。
そんなキルカイア都市の技術物を外に持ち込んでいる清水はどこか近くの洞穴にでも隠していたのか、砂だらけのバギーをもってきた。
「ルチーナさんこのバギーもう燃料ないんですけど」
「あー、行きの時みたいに事故ることがないんであれば浮かしてもいいよ」
いつのまにか完全復活していたルチーナは言った。
「あれは普段経験しないようなことに少し興奮したといいますか……でも今回は安全運転です、心配ご無用」
「まあソファよりは安定して座れそうだし、りっきーのことだから反省してくれてることでしょう」
「ですです反省してます」
「んじゃまあ帰りますか!中学生組が心配してそうだし」
「それじゃぁ全速力で行きますよ〜っ!」
「安全運転!」
「勿論ですって」
清水の自信のある声とともにそのバギーはどんどん加速していく、今走っている所はまだ段差や石など事故になる原因が少ないからここまで速度をだして良いものの、後に少し不安定なところも出てくるのでそこら辺に差し掛かったら注意がけぐらいはしようかな……荒れまくっているバギーの上で静かに思う俺であった………
さて、今回の話し合いでこれからの方針もけっこう固まってきたところだし、早く行動に移していかないとな。
まぁ、まずはフェミアやノルア館長、それにミリーに心配させないようはやくキルカイア都市に帰るところからだな。




