4話 新たな目的
それから時間は進みに進み、気がつけばもう日が降りようとしている時間、『神願の塔』の根元に2人1組の計4人が対峙していた。
「今度は何もしてこないのか?」
まず最初に挑発するような言い方で口を開いたのは、様々な力を使える日本からの転生者、キリガミレイヤで、そのすぐ後ろに猫耳としっぽのはえた少女が威嚇をするようにこちらを睨んでいる。
「(ルチーナさん、もう面倒なことやめてさっさとどかしてください)」
こちらを見つめる2人にバレぬよう、清水はルチーナに小声で話しかけ、それに対しルチーナは能力を使って清水に声を発さずに伝えた。
『まあこの前みたいにまた普通に聞いてみるのもありだけど、いきなりワープされると困るからね』
ルチーナが1つ瞬きをした瞬間、キリガミレイヤとそのすぐ後ろに引っ付いていた猫耳の少女が急に容態を変えた。
「さてと、これで大丈夫」
「やっぱりその能力ズルいですよぉ〜」
どうやらいつのまにか2人の無力化に成功していたルチーナは、先程までとは違った表情でこちらに振り返った。
「まず何が知りたい?」
するといきなりこんなことを聞き出した。
『というと?』
「この転生者とついでにその後ろにいる女の子について聞きたいことをなんでも聞けってことですよね?」
いきなり聞かれて理解が追いついていなかった俺に対してしっかりと説明してくれる清水、なにやらルチーナは面白く無さそうな顔をしていた気がするが、別に聞き出したいことなんてあんまり無いので全て清水にまかせることにしよう。
『俺は特にないから清水が聞いてもいいぞ』
「え、僕?!」
「おーりっきー、何でも来い!」
「えぇ?じゃ、じゃあ…そうですね……古代魔法が使えるようになったのはどうして?…とかですか」
「古代魔法ねぇ…コイツ今までのヤツらより破茶滅茶なやつで、なんか古代魔法に関する本とか話を聞いたら使えるようになった……らしい」
「え…なにそれ…」
『魔法の研究してる人涙目だな』
「そうだねぇ……他になにか聞きたいことある?」
「じゃあその人の持ってるチートスキルってなんですか?」
あたかもキリガミレイヤが転生者だからどうせチートじみたスキル持ってるんでしょと言いたげな清水、それを聞いて頷きながらルチーナ自身も。
「今まで以上にチートかなぁ」
と、小声で嘆きながらも説明はした。
「コイツのチートスキルは、どんな魔法でもそれがどんな力を持っているのかさえ分かれば使えちゃうっていうものと」
「まだあるんですか…」
「自分の想像した力が手に入る…って感じかな」
「………」
それを聞いた俺たちはまさに言葉も出ない状態だった。
だってもしその想像したらその力が入るって…ルチーナの精神系の力を想像したりしたら、これからルチーナの能力が為す術もなく無効化されるかもしれないんだろ……
「なかなか厄介だなぁ」
「いっそ記憶を1から改竄して最初からこの世界のどこか辺境の村で過ごしてもらうってのはどうですか?」
「それもそうか……」
『ひとつ聞きたいんだけど』
「ん?」
『その、ソイツがこっちの世界に来る時に女神様とかに会ったりしてる? 』
「それまたなんで」
『ほら、よく記憶を消して転生するってのがあるじゃない』
「おぉ、なるほど」
『もしコイツがこっちに来る時に転生もののテンプレがあるとすれば、本来記憶を消されてるってのもあるのでは』
「分かった、ちょっと覗いてくる」
言うがままにルチーナは少し黙り込んでキリガミレイヤの方を向いている。
そして今回は先程のように短時間で人の精神を制御した時より、若干時間が経ち、およそ5分ほど経ってからやっとルチーナは喋りだした。
「こ、コイツやばい」
「なにがあったんですかルチーナさん」
『何があったのか1から説明してくれ』
先に言っておくと、キリガミレイヤは女神様のような存在である。
まずキリガミレイヤがこの世界に来る直前、言わば死んだ直後の謎の空間にて、キリガミレイヤは目の前の女神様を見てパニックになっていた。
なんとか落ちつきを取り戻し、一通り目の前の女神様から説明を受けた。
「あなたは死んでしまいました、ですがまた平凡に暮らしたいというのなら、今までの記憶を消して人生を1から始めることが出来ますが、どうしますか?」
と、女神に問われキリガミレイヤは答えを出さずに疑問をぶつけた。
「魔法とかつかえるんですか?」
女神様は「使えますよ」とだけ答え、キリガミレイヤの答えを待った。
「それじゃあ女神様、最初から人生を始めたいと思います」
「分かりました、では早速ですが記憶を消させてもらいます、それから直ぐに新しい世界へ行くことになりますが、覚悟はよろしいですか?」
「もちろんです」
自信満々に言われた女神様は、両手を広げると何を喋っているのか全く理解できぬ言語で喋り、やがてキリガミレイヤを光で包み込んだ。
「あ、そうだ女神様!もし魔法が使えるとしたら、火の魔法でおねがいします!」
「えっ、あっ……」
完全集中モードに入った瞬間にいきなりこんな注文を押し付けられ、考えることに頭が働かなかったのか、キリガミレイヤに対して火属性の魔法だけを使えるように、とっさの判断で呪文のような唱えを変えたが、何を間違えたのかいきなり女神は目眩を覚え、そしてその場に座りこんでしまった。
ここまでがキリガミレイヤの記憶にあった転生直後のシーン、どうやらキリガミレイヤは女神様が倒れたことに対し「毎回こんなに使えるようなことをしているのか」としか思ってなく、そのままこの世界で活動を始めたのだ。
『……えっと、なにがやばかったの…?』
「僕にも分かりませんでした」
ルチーナからこの話を聞かされ、何がやばかったのかあまり分からなかった俺たちは正直に言った。
その正直に言った心が分かってくれたのか、ルチーナも怒ることなくキチンと説明してくれた、しかし超完結に。
「つまり、女神様がこのキリガミレイヤに対して授ようとした火の魔法が、いきなりの注文すぎたからパニクって女神の力という力を全て授けてしまったの」
「………あぁ!なるほど、分かりました!」
『俺も理解出来たぞ、女神様の力を全て渡してしまったから最後に女神様は座り込んでしまったのか!』
「はぁ……ちなみに言っておくけど、もしかしたらその女神様はこの塔のてっぺんに倒れてるかもねぇ」
ルチーナは、果てしなく続く巨塔を見据えながらため息混じりに言った。




