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平和な日常にはバトルが必須【圧倒的処女作】  作者: 作作ころっけ
3章 嵐の前の静けさ
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9話 まぶたの裏に描かれるもの

文字数(空白・改行含まない):2363字

 おなかをいっぱいに満たしたルチーナと俺は、ルチーナが食器を流しに置いたあとベランダへと移動した。

 ニルン邸の立地は豪邸というだけあって景色も素晴らしいものだった。さすがに先日あった花火大会を見た時の展望台の様な景色とまでは及ばないが、十分ここからでもキルカイア都市をある程度見渡すことが可能だった。


「さてと、どうするかなあ」


(能力発現剤の話?)


「そう、ていってもどう止めたらいいやら」


 ルチーナはわざとらしく悩む。


(力ずくってのは?)


「そうしたいのは山々なんだけど、あんまり大きな騒ぎは起こしたくないし、だからといってもっかい何百何千人ものあたまのなかを覗き込むのはゴメンだ」


 ルチーナはあの時の頭痛を苦い顔で思い出しながら言った。

 するとそこに、いつのまにかベランダに洗濯を干しに来たフェミアがルチーナに話しかけてきた。


「何について話してるのかしら〜?」


「なにも〜?」


「ほんとに〜?」


「ほんとに」


「ア・レ。しちゃうわよ?」


「能力発現剤について話してた」


「にゃにゃぁっ?!」

(どこかで見た光景っ)


 フェミアの圧力に負けた(?)ルチーナはあっさりと口を開いてしまった。

 それを聞いたフェミアは驚きもしなければ「一緒に話し合いましょうよ〜」などとビビりもせずに協力体制を作っていた。


「まず状況を説明してほしいわ〜」


 フェミアの言った「アレ」がかなり気になるところではあるが、今からは結構真面目な話をするので「アレ」とやらについての思考は完全に止め、こちらも現在の状況の再確認と言う形で、ルチーナの話を聞くことにした。


「まず花火大会の最中、誰かがこの家に忍び込んで私が厳重保管していた能力発現剤をひとつ残らず盗られていた」


 ルチーナは今まであったことを嘘偽りなくフェミアに教えきった。

 話が終えるとフェミアは1度考え込んでからとりあえずの簡単な質問をした。


「能力は個人差だったり鍛錬の有無とかじゃなくて、誰にでも同じような力が得られる。ってものだったかしら〜?」


 フェミアはまるで能力について聞いたことがあるような言い方でルチーナに聞いた。

 聞かれたルチーナもひとつ縦に首を振り、補足程度にもう少し説明を足した。


「まぁ今のところはそうなんだけど、どんな能力があるのかはまだ分かってない、発現する種類は無限大って考えてる」


「それと魔力もいらないんでしょ〜?」


「精神が削り取られるまでは永遠に使えるもの」


 2人だけで会話がどんどん進んでいく、おそらく初めて能力のことについて知ったであろうフェミアは何故こんなにも驚きなく、そしてスラスラと相槌をうてるのだろうか、俺は一切出てくるはずのない答えを考え続けた結果、やはりルチーナに聞くのが早いと、早速聞いてみることにした。


(フェミアさんってどうして能力の事で驚いたりしないんですか?)


 前置きもなく単刀直入に聞いてみた。

 するとルチーナは声に出さず俺の脳内に直接話しかけて教えてくれた。


『細かいところまで話すと長くなるからまた今度話すことにするけど、フェミアにとって能力についての知識は、「今のお前」より備わってる』


(ま、まじですか…)


 俺はどうしてか負けた気分がした、実際にはフェミアの方が能力についての知識が多くても問題は無いはずなのだが、「今のお前」というどうも怪しげな表現を使ってくるルチーナによって、負けた気分がした。


 なぜ?


「今の俺」にとってまだこの問題の正解は分からない、何があってルチーナはこんなにも怪しげな表現ばかり使ってくるのだろうか、俺は記憶を(よみがえ)らせて何かないか確認してみる。


 だが、そんな意味深な行動や言動など一切していなかった、妹を庇い自動車に跳ねられ1匹のクロネコへと転生したのだ。

 最初に見た景色はご主人─ミシェリーの姿とその部屋、そして俺はその時その場所に転生したことに疑問を抱くことはなく、これまでをネコとして生きてきた。


 それじゃあ、その転生した後の場所がどうしてこんなにもピンポイントで意味深な場所なのだろうか?


 俺は必死になにか引っかかるものを思い出そうとしながらもがいている。

 今思えばそうだ……


 ──俺はどうしてクロネコに転生しているんだ?


 ──どうしてこのネコの体は普通のネコとは構造が違うんだ?


 ──ルチーナはどうして俺みたいなクロネコに、自分の秘密なんかを明かした?


 ──不慣れであるはずのネコの体に、どうして最初から違和感なく生活しているんだ?


 ──ルチーナの記憶の中にいた少年、その少年はなぜか俺の目に良く映っていた


 幾つかの疑問が浮かび、酷く複雑に絡まっている紐の結び目が1本1本、(ほど)かれていく感覚がした。

 今俺は、目を瞑っている。

 なのにまぶたの裏には1つの場面(きおく)が映し出されていた………


「…?」


 自分のすぐ隣にいる少女が目の前にある金属のゴミの塊に対して言い放った言葉、それに対して、絶対に応えるはずのない金属のゴミの塊から、ギリギリ理解出来る声質で、言い放った。

「今後私がアーカイブの記憶を取り戻すことは可能なんでしょうか?」


 聞かれて少女は、笑顔で言った。


「それはあなたの行動次第かな」


 そう言いながら、過去のデータを抜き取り、新しく構築されたデータを挿入。


「あなたの名前は?」


「ノルアです」


「私の名前は?」


「ルチーナ様です」


 その場面を思い出し俺は気づいた。


 ──俺はクロネコではなくちゃんと人間に転生している。


 ──俺は被検体番号01、初めての人体実験で構造が特殊なネコになった。


 ──ルチーナは人間の時の俺とネコの時の俺と、態度を何一つ変えずに接してくれた。


 ──ルチーナの補助のお陰で短い期間のうちに不慣れだったネコの姿になれることが出来た。



 俺は転生したのだ。隣にはいつも優しく接してくれる少女だっていた。

 けどその少女はずっとはいなかった。


 いつの日から急に、人が変わったような人間になっていた。

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