12話 始まり。
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「この拘束は一体なんなんですか?!」
「今すぐにゃーたちを解放するにゃ!」
「さっさと放しなさいよ」
「うっ、うぅ……」
「なんだお前らは!」
清水に呼ばれたふたりが近ずいてみるとこのザマだった。
転生者の1人の少年と周りの女子4人が口々に好きかって言ったのだ。
口調が各々違ったのでまとめるの大変そう……
「さてと、単刀直入に言うぞ」
騒いでいるのもかかわらず、ルチーナは無視して言った。
ちなみに俺はルチーナの手から清水の方へと渡っているので観戦に回っている状態。
べつにルチーナの方に居ても観戦しかできないが……
「キリガミ レイヤ、お前はこれから古代魔法を使うな」
「っ?!」
ルチーナの発言にキリガミレイヤという名の少年は驚きを隠せなかった。
「どこの誰かは分かりかねますが、ご主人様に反抗的な言葉を使うなどあとが知れませんね」
キリガミレイヤが黙り込んでいるのを横目に反抗したのは金髪の子だった。歳は14~15っぽく見えて、周りの少女に比べると少し大人っぽい雰囲気の漂っている子だった。
「そうにゃ!あとでレイヤに痛い目にあうにゃ!!」
続けて耳と尾がついている獣人であろう少女が言い放ったった。
こちらは先程の少女よりもすこし幼く見えて、今のところやんちゃな感じが隠しきれていない。
「ご、ご主人様の魔法はとっても強いんだから……!」
獣人の次は少し恥ずかしがり屋な感じの少女が言った。
さらに続けて
「ほんと、もしレイヤが本気を出そうとすればこんな拘束スグ解けるわね」
恥ずかしがり屋の少女とは対象的な少女が言い、そこで次はあなたの番ですよ、と言わんばかりにその場にいる全員の視線がキリガミレイヤの元へと注がれた。
「確かにこんな拘束じゃ簡単に解けるが今俺が聞きたいのはそこの貴方についてです」
言いながらキリガミがレイヤは軽々と清水の頑張りを一瞬で無に返した。
「ん?アイツ?」
ルチーナは自分に向けられて言われた言葉だと気づきながら、すっとぼけて清水の方を指さして言った。
「ぇっ、なに?」
腕に抱き抱えたクロネコを弄びながら、のんびり観戦モードに入っていた清水はいきなり指名されて間抜けな声を出した。
「とぼけないでください、あなたですよ」
ルチーナのそれに対しキリガミレイヤは冷静に対処した。周りの少女4人とは段違いだね!
「キルカイア都市の情報は都市機密。それ以上首突っ込むな」
「……それじ──」
「古代魔法について口を閉じるお前に教える価値なんてねぇっての」
……?ルチーナさんは一体何を言ってるんだ?せめてそこのレイヤ…だっけ?そのレイヤさんの質問を最後まで聞いてあげようよ。
『お前は清水と楽しく遊んどけ、そろそろ面倒くさくなってきた』
ルチーナさん器用ですな……2対1でもしっかり頭に話の内容を入れるとは……流石精神操者のルチーナさん。
ルチーナは見向きもせずに俺、そして清水にも言ったらしく、清水は俺を持ち上げるなり顔をじっくり見られるなり何やら観察の姿勢に入っていた。
隣でクロネコがいじくられているのに見向きもせずルチーナはキリガミレイヤに一言だけ言った。
「さっきも言ったけど、最後にもう一度だけ言うぞ」
「………なんだ」
目を合わせてるようで合わせていないルチーナにキリガミレイヤとその御一行はたまりこんだ。
「古代魔法を使うのやめろ」
「何を言っているのかさっぱりだね、古代魔法を使ってデメリットがあるなんて誰からも聞いた事なんてないし、増しては周りの人だって便利だ便利だって賞賛してくれる。僕は魔力量が多い方だ、だからデメリットなんてないと思うけど?」
今まであまり口を開かなかったキリガミレイヤが話し始めたかと思うと、それは古代魔法にはデメリットがないという話だった。
確かに単純に考えてしまえば今の時代、3つの属性しか魔法が使えないよりも、古代魔法である様々な属性の魔法を使えた方が、色々な方面で実用性や効率化が進む。だがそんな甘い話だけでもない。
人類にとっていいことだけで済む物事など存在しない。幸福あれば不幸あり、確かに少し程度魔力のある人間ですら実用性があるというのなら、それ以外の種族はどうだろうか。この世界には人類以上に魔力を有する生物は存在する。それは魔人や天使も例外ではなく、これから古代魔法が普及し始めるとそれは、再び魔神大戦を起こそうとしているも同然だ。
「こっの」
それをこの場にいる誰よりも知っているルチーナは、キリガミレイヤの言い分に腹を立てた。
瞬時にして能力を使おうと判断した瞬間、精神をいじられる寸前に目の前にいた5人の姿が
「移動」
たった一言で消え去った。
移動。魔法を発動する本人が記憶している場所ならばどんな時であろうと瞬時に移動出来る、今となっては古代魔法の部類に入っている魔法。
古代魔法と称される前からも移動という魔法には数ヶ月もの日数と魔力が必要で、ひと1人を移動させるだけでも魔法発動の一日はかかると言う魔法なのにも関わらず、キリガミレイヤは瞬時にして1気に5人を一緒に移動させた。
「ふん」
ルチーナは先程まで覗いていたキリガミレイヤの記憶を掘り起こす。
転生直後から今の今まで、そしてキリガミレイヤが住んでいるであろう家まですぐさま特定。
「まったく正直に従わないからこうめんどくさい事に……って最初っから理由なんてすっ飛ばして記憶消しとけばよかっただけの話しかぁ……」
ルチーナはそうぶつぶつ言いながらなにやら歩き始めた。
「ねぇちょっとルチーナさん?!今からどうするんですかっ?!」
「んぁ?!ちょっとやり残したこと思い出したからまた出かけてくるわ、お前はそいつと一緒にニルンとこ帰ってていいよ」
清水の心配に対しルチーナは半分いつもの自分を忘れている状態で答えた。
何が関係して、ルチーナをああやっているのか今の俺には心当たりがひとつしかないけど、清水の必死さを見るなり、その原因は一つだけではなさそうだった。
「でも……」
「適当にフェミアに伝えといて〜」
そんなことを言いながらルチーナはキルカイア都市へと走っていった。
大方移動手段をとるんだろう、走って行くのは難しいからな…
って!そうじゃなくてぇ!
「にゃにゃにゃぁっ!」
(清水さん?!追いかけなくていいの?!)
「えっ、なんて言ってるの?」
「にゃぁぁっ」
(伝わらねぇっ)
俺は必死に伝えようとした。
けれど無理だった。ここにきてルチーナの通訳がどれだけ便利にかを知ることになったが、そんなことに感心していても清水に気持ちは一切伝わらない。
「とっ、とりあえず……」
とりあえず……?
「トイレぇぇっっっ!!」
「にゃぁぁっっっ」
(はぁぁぁっっ?!)
清水はルチーナを追いかけるどころか猛ダッシュであっという間に追い越してキルカイア都市に戻って行った。




