11話 木箱に人間を詰める鬼
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ピロリンっ♪
「?」
ある日ニルン邸にて、働かぬヒモ人間のごとくぐぅたらしているルチーナのスマホに、着信が来た。
そしてスマホを確認するルチーナの腹の上に陣取っている俺は、ルチーナのスマホに着信が来たことに対し、何時ぞやの話を思い出した。
ルチーナさんって友達いるのか……?
確かご主人のお母さんが言うには、ルチーナに友達は(あんまり)いない感じの言い方でからかっていたことが多々あった。
そのルチーナのスマホに着信だ、一体誰からなんだ……もしかして最近ご主人の友達になった、確か春と美希って名前だっけな、その2人か?
それかそもそもとして友人からのメールとかではなく、ただ単にお知らせってことも有り得るが……
「おい、お前人のこと色々言ってるけどお前だって友達なんて存在いないだろ勝手に決めつけんな」
そんな妄想をしていると突然ルチーナが話しかけてきた。
スマホを見るふりして心を読んでやがったかこの野郎、まっ、まあ?確かに俺だって友達はいませんし……いや、前世には……いっいる、いるぞ!確実にルチーナより数はあるな!
「あっそう、お前万年暇だろ、ちょっくら外に出るけどついてく?」
「にゃぁ!」
(無視すんな)
あ、行きます。
場所は変わってここはキルカイア都市の外側、北ゲートより数百メートル程離れた所にあるゴツゴツとした隠れられそうな場所が多くある岩場、そこには清水と、近くには軽自動車程ありそうな大きさの木箱があった。
「よぉ、りっきや〜」
「久しぶり……っていってもまだ別れて2日もたってなかったか……あ、お土産ですよルチーナさん」
清水の姿を確認したルチーナはいきなり手をふって声をかけた。
『こいつ、私の”友達”の清水力弥、ちなみに物体操者の能力を持つ人、この前説明したでしょ?』
誰だコイツ?首を傾げてる俺を見むきもせずにルチーナは説明をしてくれた。
どうやらルチーナと同じ能力を持ってるみたいで、物体操者って言ってたけど、名前からして色んなもの動かすことが出来るのかな……あとそのでっかい木箱なんですか、海外から輸入されてそうな木箱…。
「その木箱が私のお土産ってわけか」
「にゃぁぁっ?!」
(お土産ぇっ?!)
でっ、でかくない?!お土産って普通お菓子とかキーホルダーとか、デカくても縦横30センチ位のものじゃ……
「いったい何が入ってるでしょ〜」
「さーねー、わからないなー、たーのしみだなーアハハ…」
「早々人の頭覗かないでください、少しは楽しんでみたらどうですか?!」
「まぁとりあえずここじゃ人目が多いし、人目のないいつもの場所に行くよ」
2人は大きな箱の中身を見ずに話を進める。
ルチーナさんの人目につかないとこって、一体なんなんだ…っていうか都市の外じゃないとダメなのかこの箱の中身。
……死体とかヤメテヨネ…
ルチーナは俺を方に乗せたまま、そして清水は普通に歩きつつ物体操者の能力を使ってその例の場所とやらへと移動した。
いやね、大体 能力の名前から察してたけどさ、そのでっけぇ木箱(中身不詳)を軽々と持ち上げながら、ルチーナとお喋りをして歩くって、ルチーナさんの能力に続いて本気が気になる…!
やっぱり限界とかあるのかな、重量何トンまで〜とか。仲良くなったら聞いてみよう。
「早く早く〜早く見せなさいよ〜」
目的地についた矢先ルチーナはクリスマスプレゼントを前にした子供のようにはしゃいだ。
「別に躊躇うことなんて無いので普通に開けますね」
ワーワー言ってるルチーナを横目に清水は周りに人がいないか一応確認をして、それからその木箱の蓋を能力の力を使ってなんの躊躇も無くササッと開けてしまった。
「ちょいと〜中見えないじゃん」
目の前にある木箱は軽自動車程のでかさ、高身長な人でなければ、木箱の上面にある蓋を開けたとしても、目線的に中身を見ることが出来なかった。
それを見た清水は忘れてたと言った感じにそこら辺の岩、かなりでかい岩をルチーナの木箱の間へと軽々移動させた。
「これでいいですか」
「さんきゅさんきゅ」
ルチーナは足場を作ってくれた清水に軽く手を振りながら、その岩の上に立つ、当たり前だが木箱の中身がよく見えた、ルチーナの肩に乗りかかっている俺もよく見えたんだけど……
「にゃ……」
(これは…?!)
その軽自動車くらいの大きさがある木箱の中身、清水さん曰くルチーナのお土産だとかなんだとか、そのお土産の中身はまさかの人間。
でも安心(?)死体ではなかった。
「えっと〜男1人に女4人……どうせまた転生者みたいな感じか」
ルチーナはその5人の人を見るなり何やらブツブツと言っていた。
おっ、おいルチーナさんや……あんたよくこの状況でその冷静さを保てるもんだねぇ…普通だったら何かしらビビるよこれ?!
だって、だってでっかい木箱の中に人間が入ってる時点で若干やばい感じなのに、この5人全てに普通に猿轡がされてるし、なんか気絶させられてるし……あとさっきルチーナさん転生者とか言ってましたけどそれほんとですか?!俺の仲間かっ。
『1匹で何騒いでんだよ』
だって!だ、だって…
「そういえばルチーナさんの肩に乗ってるそのネコってなんですか?」
とそこで、すぐそこの草っ原でのんびり座っていた清水がいきなり聞いてきた。
「んぁ?忘れさせてたか……コイツはミリーのネコでさ、今ミリーは学校に行ってるから私が連れてきたんだよ」
ルチーナは見下ろしていた木箱の中身から視線を外し清水を方を向きながら言った。
言う途中で怪しげな発言をしつつしっかりと説明をした。
「………飼ったの?」
「勿論それだけじゃないよ、コイツなかなか面白いやつでさぁ」
何か言いたげな顔をした清水を見たルチーナは、慌てて訂正。
清水はルチーナとは昔からの長い付き合いなので、この性格の人間がただのネコを肩に乗せて外を出歩くなんて真似はしないことぐらい分かっていたのだ。
「どう面白いんですか?」
「まぁ見てなって。おいクロネコ、ちょいとアイツの膝の上に乗って片手上げてこい」
なんですかいきなりそんな口悪くして、まぁやるんですけど。
えっと、アイツってのは、今ここには一人しかいないわけで清水さんの所に行くでしょ〜。んじゃ失礼しますね〜……
そんな訳で俺は清水さんの膝に体を置き、ルチーナの言われた通りにとりあえず右前脚を上に上げてみた。
これの一体何が面白いのだろうか……
「へぇ、もしかして人の喋ってることがわかるんですか?」
「そゆこと、私の能力と似たようなやつかと思ったんだけどこれまた違うみたいなのよね〜。あと一応こいつも転生してるみたいよ」
この世界で人間の話すことを理解出来る生物って、人間以外にいないんだろうか……2人とも不思議そうな顔でこっち見るのやめて貰えません?なんか色々恥ずかしいです…あとルチーナさん、転生のことサラッと言っちゃっていいんですね。
俺は上を向いて清水の顔を確認する。
すると清水はなにかひっかかるようで、首を傾げて考え事をしているようだった。
「とりあえずコイツら起こすか」
「……あっ、ですね」
ルチーナが踏み台にしていた岩から足を下ろすと、その岩が不自然に動き、元あった場所へと戻った。
そして清水は膝に乗っかっているクロネコをルチーナに手渡すと、軽自動車程の大きさがある木箱の正面にたった。
「いつものやつ?」
「いつものやつです」
「んじゃちょっと起きたら呼んで、それまで私らはお話でもしとくわぁ」
ルチーナと清水は軽く言葉をかわすと、清水は流れるように能力を使って軽々と木箱を解体して中身を顕にし、それから中に入っていた猿轡をされていた5人の人を両手両足縄でしばりつけた。
えぇ…そこまでします?
「あぁでもしないと必ず暴れるやつがいるんだよ」
清水の作業をぼーっと眺めていたクロネコに、ルチーナは口を開いて話した。
っていうか俺今まで何も言わなかったんですが、これってなんなんですか?
「お前の記憶の中にあった単語をいくつか使うかんだけど、コイツら転生ハーレム無双ってやつら?…こんなんで使い方合ってんのかな」
まじかよ……俺以外にも転生した人いるのね、しかも人の姿になって転生、さらに無双スキルかなんかでハーレムを築きやがって……くっ
べっ、べつに悔しくなんてないもん!!こっちにもご主人いるもん!!
「なにくやしがってんだよ、50年くらいに1回こんなヤツらが現れるんだけどさ」
50年に1回か…イマイチ多いのか少ないのか分からないけどそんな人間が毎回の如くチートスキルをもって無双劇をしていらっしゃるのですね……
「言葉遣いおかしいぞ、んでちょっと話変えるけど、この前お前にこの世界の魔法について教えたよな」
確か火水風の3つの魔法しかないんでしたっけ、それ以外の属性魔法は昔の大きな戦いの弾みで消えたって聞きました、それを今じゃ古代魔法って呼んでるんですよね。合ってます?
「それそれ、んで今の世界の平和ってな、この魔法の属性が火水風の3属性しかないから保たれてるって言われてんの」
そ、そうなんですか…でもそれがどうしたんですか?
今の話とこの人たちってどんな関係があるんですか……?
「聞いて驚くなよ、この50年に1度現れる転生者ってのは大体、何故か古代魔法を簡単に使ってしまうんだよ」
古代魔法…今ではどんな魔力量を保有している世界一の魔導師でも、使うことの出来ない属性が多々ある魔法。
それを息をするかのように軽々と使ってしまう50年に1度現れる転生者。
そして今この世界の平和は、魔法の属性が3つの火水風しかないのを理由に魔神大戦以降ずっと平和が保たれている。
その平和でなければいけないこの世界に、古代魔法という、今の火水風の3属性以外の様々な属性魔法が普及すればそれは……
「あの絶望を無慈悲に撒き散らす魔神大戦が、再び勃発するってわけよ」
ルチーナはひとつひとつ丁寧に説明をしてくれた。
これによって俺もようやく納得、よし早くこの転生者の記憶を改ざんしましょうルチーナさん。
「全く、この作業も慣れたもんだなぁ…」
ルチーナさんもこの平和がずっと続いて欲しいがために、この誰も出来ぬような作業を50年経つ度にしてるんですねぇ……
ん………?
50年経つ度に…作業にも慣れてきた…?
「それ以上は何も聞くな」
危うくルチーナの経歴にあるデッドラインに踏み込もうとした俺にストップが入った。
レディに年齢を聞くのはご法度だからね、
まだ1週間ほどしか一緒に過ごしたことしかないけれど、ここまで即ストップをかけるルチーナが珍しかったので、俺もそれ以上は追求しなかった。誰にだってそう簡単に明かしたくない過去ってあるものだからね。
「おーい!」
ルチーナとクロネコによる沈黙に入りそうなタイミングで清水が大きな声でこちらに呼びかけた。どうやらその転生者が目を覚ましたらしい。グッドタイミングだ清水さん。
ルチーナとクロネコは同じことを思いながら清水に謎の感謝をしつつそそくさと、転生者の拘束されている場所へと足を運んだのだった。
その数メートルほどしかない道のりを行くルチーナの頭には、とある風景が浮かんでいた。
それはまだキルカイアという名の都市が造られる以前のその場所の風景であった。
そこには所々が禿げて金属片がむき出しになっている人型のロボットが倒れていた。
「ほんとに、実行するのですか?」
まだ小学生ほどの見た目の金髪ロングの少女は、その金属のゴミの塊のような物に対してか弱い声で言った。
「決めたから。私の世界を作るって」
少女は人の精神を操る力を使い、そのロボットの修復をし始めた。
「私の記憶はどうするのですか?」
「……」
全身を使ってロボット起き上がらせる、そして近くにあった工具やらを使い少しずつ修復させていく、少女の知識では絶対に不可能なはずの作業を、たんたんとこなしていく。
「…今までのデータはアーカイブに保存する。今からあなたは生まれ変わるのよ」
少女はいきなり答えを出した。
自分の身を守ってくれたロボットのデータを抜き取りながら……




