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平和な日常にはバトルが必須【圧倒的処女作】  作者: 作作ころっけ
2章 true start
20/73

7話 下克上

文字数(空白・改行含まない):5718字

「おっじゃまっしまーすっ!」


「おじゃまするぞー、」


「たっ、ただいま」


 ここはニルン邸の玄関、並大抵の家ではあまりみない大きな門を通り過ぎた後の、さらにもう一度大きな扉。

 そこには3人の少女がいた。

 左から順に笹木春、千歳美希、ミシェリーの順で現在ニルン邸の玄関へと入っていた。

 そう、ここはニルン邸、この屋敷にミシェリーの友達二人が遊び(及び特訓)に来ていたのだ。


 時は遡ること約1日前

 ミシェリーに特訓を明日すると告げられた日の夕方、ミシェリーはやや大きめのリビングにてソファに仰向けになっていた。


 はぁ…ままがお風呂から出てきたら早く言わなきゃな〜


 ミシェリーは心の中でそう思った、言うことは簡単、ただ単に「明日友達二人をこの家に入れてもいい?」と聞くだけ、この短い文章をいつもの感じでフェミアに言うだけなのに、今日学校であった1件のせいで、少し「いつもの感じ」というのを、ミシェリーは完全に忘れてしまっていた。そもそもその「いつもの感じ」と言っても、そんなに注意深い訳でもなくて、ミシェリーはフェミアやルチーナとの会話など、スラスラとやっていたので、「いつもの感じ」はもちろん忘れるどころか覚えてすらいなかったのだ。


「んぉ?ミリーじゃん、どーしたんだよ、んなとこいると寝ちまうぞー」


 ミシェリーがいろいろ覚悟を決めていると、唐突にどこからかルチーナの声がした。

 そのルチーナの声は、ミシェリーが仰向けになっているソファの向かい側にあるもうひとつのソファから聞こえたものだった。

 ミシェリーが悩み事をしている時、いつの間にかルチーナはこちらに来ていたのだ。


「んー?特に何も無いよ〜?」


「そっか〜」


 ルチーナは何か考えてそうな顔をしているミシェリーに質問をしたが、返ってきた言葉で深く追求するのをやめた、建前上では

 ルチーナはフェミアによって禁止されているはずの精神制御をしれっと使いミシェリーの考えている事を読み取った。


(明日この家に友達を誘ってもいいかだと…?!)


 ルチーナはぎょっとした。

 昔から友達と言える人間など人生全てにおいて2、3人しかいない"人とのコミュニケーションをとるのがある意味難しい方のルチーナ"にとってミシェリーの友達2人、しかも入学当日に友達になったその2人をいきなり自分の家に誘うことにとても驚いていた。驚き半分悔しさ半分と言ったところ。


 ルチーナは別にフェミアに教えようともしたが、この精神制御を禁じられている状況で、更には禁止にしたフェミア本人に使うなど殺される未来しか見えなかったのでやめておいた。

 そのままソファに座ったルチーナは昔から小説ばかり読んでいたのを気分転換にマンガを読み始めた。




 少しするとお風呂から上がったフェミアが姿を見せた、そしてそれを確認したミシェリーは仰向けになっていたからだをすすっとあげて立ち上がり、フェミアに話しかけた。


「ねぇまま、あの……」


 いきなり話しかけられたフェミアは現在瓶牛乳を立ち飲み中、銭湯でもないのにやってるのは昔から銭湯に通っていた慣れだった。


「ん?なになに〜?」


 プハーッと気持ちよさそうにしながら聞き返す


「あ、明日この家に友達入れてもいいっ?!」


 普段この家に誰かを招くことをしないのでつい大きな声で言ってしまったがそんなことは気にせずフェミアは言った。


「いいよ〜じゃんじゃん入れちゃってね〜ソコでマンガ読んでるヤツに負けるな〜」


「うっせぇ!」


 フェミアはミシェリーの言うことに対し快く許可をとる、と同時に若干ニヤけながらマンガを読んでいたルチーナをからかった。


「ありがとぅ!!」


 ミシェリーは嬉しそうに飛び跳ねた、学校にいる時と全く違う人間のように。


「あ、ルチーナ、それ今どこ〜?」


 今あった話を終わらすかのようにフェミアはルチーナに話しかけた。

 フェミアの指はルチーナの読んでいるマンガの方を指しており、どうやら2人とも同じマンガにハマっているようだった。


「んぁ?今これ最新刊〜この前買ったじゃんフェミアの欲しがってたレシピ本と一緒に」


「えぇっ、買ってたの?!見終わったら見せてよ〜」


 そして急に中学男子のようなやり取りをし始めた、それを暖かい目で見ていたミシェリーもまた、その最新刊を読みたいとしみじみ思っていた。




 大きく逸れた話を戻してミシェリーの友達2人、笹木春と千歳美希がニルン邸に入邸して数十分、現在リビングのビックサイズなテレビを使ってゲーム対決が行われていた。


 大きなテレビに映っているのはレースゲームで4画面に分割されていた。

 左上はミシェリー、右上は春、左上下は美希で、右下はと言うと…


「うっはーまた1位〜君たちほんとに強い〜?」


 なんとも大人気ない姿を見せているルチーナだった。

 まぁまぁこのレースゲームをやりこんでいる春と美希、ついでに全くの初心者で毎回下から2、3番目の順位をとっているミシェリー達をなんの手加減もなしに完勝していた。


 一方レースゲームには参加していないフェミアとノルアは、4人がゲームわしているテレビから少し離れた長テーブルに、横に2人座って「なんとも大人気ない」という話を繰り広げていた。


「ちょっとお姉さん?!少しは手加減というものを!」


「大人気ないぞー、」


「この車遅すぎますよ!!!」


 各々がルチーナに浴びせる様々な声、それを完全に聞き流しているルチーナは「次はどこがいいかな〜」と既に次のレース場を選んでいるところだった。


 そしてもうひとつ、今日笹木春と千歳美希がニルン邸に来た理由は「ミシェリーの特訓」だった訳だが、このニルン邸に来た瞬間その2人はリビングに招き入れられ、テレビの下に置いてあったゲームに興味を持ち、それを見たルチーナが「一緒にする?」と全くの初心者であるミシェリーをも巻き込み3人でゲームをすると言う流れによって、2人の目的である「特訓」など完全にわすれていた。


 だが特訓などしなくても、既に特訓は終わっているようなものになった。

 そもそも何故特訓をするのかと言えば、昨日のミシェリーの口調の件で「もっと馴れ馴れしくできるように」ということでおしゃべりの特訓だった訳だが、ルチーナに誘われたゲームをしている時には既にミシェリーのしゃべり方は、友達同士の敬語無しの喋りになっていので、後々気が付いた春と美希は影でほっと胸をなでおろしていた。



 その後も散々色々なゲームを4人でしまくり、全てルチーナの勝ちに納められた2人の友達はとても悔しそうに帰っていった。

 帰り際にルチーナに「次こそ勝ってやるからな!」と挑戦を言って2人仲良く帰っていった。

 帰る時間的に日が落ちていたので途中誰かに襲われないか心配になったノルアが、フェミアに許可をとり、ストーカーの如く2人を見守っていたのはまた別のお話。




 翌日、3:40分頃、ニルン邸には昨日と変わらぬ景色がそこにはあった。

 変わっているのいえばテレビ画面、そして観客にミシェリーが回ったぐらい、今日は笹木春と千歳美希がルチーナに下克上を言い渡しに来たのだ。


「下克上っ!!ルチーナさんが負けたら私たちの言うことなんでも聞いてくださいね!!」


「聞け聞けー、」


「負けたらなあ?!」


 ルチーナは2人の少女からの呼び方が「お姉さん」から「ルチーナさん」に変わったことを微塵も気にせず、悪い笑みを浮かべて言った。

 そして昨日と同じことが繰り返された。今回は2対1というルチーナを不利な状況にしてまで、2人はルチーナ打ち破りたかったのだ。


 ワーワーギャーギャーと楽しそうにゲームをしている光景を遠目に見ている3人、ミシェリー、フェミア、ノルアは静かにそれを見つめた。

 そして3人はそれぞれ、違うことを思っていた。

 まずミシェリーは、(なんとも、楽しそうで何より…弱い私が居ないともっと楽しそうになるんですか…あはは)ひとりでに悲しくなっており

 フェミアは、(もうこれは友達と言ってもいいんじゃないかしら、孤独なルチーナ〜)人の友達がいないことを思いながらひとりコソコソ笑っていた。

 そしてノルアはと言うと…

(今晩の食事は少し豪華にしてみましょうか……)

 夕食のレシピを頭の中で考えて買い出しのことを考えていた。


 ちなみに、ご主人とその友達にお母さんと色んな人が1階で楽しんでる中俺はどこにいるかと言うと……


「にゃぁぁっっっ!!!!!」

(助けてぇぇっっ!!!!!)


 諸事情によりルチーナの部屋にあるペット用の檻の中に閉じ込められていた。

 いや、決してルチーナによる虐待とかじゃない、言ってしまえば全ての元凶は俺にある。今朝俺がルチーナにあんなこと言わなければ今こんなことなんてされていないはず。あとルチーナ今日だけ本気かもしれない。

 だって、いつも俺がご主人の元を離れてどこか行くと、普段ならご主人が「ミリーがいない!」と言って家中、いや屋敷中探すはずなのに今日は探さない、学校帰りでさらに会いたい気持ちが高まってるはずなのにこちらを探す気配が一切見られない、それが意味することはひとつ。


 アイツミシェリーに対して「今日だけクロネコのことを忘れる」とか思わせてる


 なんて卑怯な、このまえお母さんから精神制御禁止令が出たって言うのに、いや…俺がそこまでルチーナの事本気にさせたのか…今夜しっかり謝ろ、「今朝は本当にすみませんでした」ってね。





 少女2人がルチーナに下克上を言い渡したその日の今朝、クロネコはもう習慣になっているルチーナのお腹の上で目を覚ました。

 そしていつものように同時に目を覚ましたルチーナと朝のお話をする。

 今日は昨日あったゲームの話みたいだ。


『でさでさ、あの子たち結構強くてさ〜いや〜ギリギリだったよね〜』


『あーはいはい大人気ない自慢話ですね』


 俺は昨日の夜から続いているその話にはもう既に飽きが来ていて聞き流すかのように全スルーしたわけで…


『何その言い方っ?!私だって本気出してやっと勝ったのにその言い方酷くない?』


『はっ、俺が人間なら世界一だな!』


 俺は普段見せないようなルチーナの反応につい調子に乗ってしまい、思い返してみると自分でも死ぬほど腹が立つ性格になっていた気がする。


『…世界一?簡単に言うねえ?!』


 段々とキレそうになってきてるのに、その時俺は調子に乗りすぎてたのか、ほんとにその時の俺殴りたいよ。

 それで俺言ってしまったんだよ…


『この世界がどれだけ広いのか分かりませ〜ん、俺転生してきたので〜』


 もう本当に殴りたくなってきた。

 今更じゃ遅いんだろうけどさ、めっちゃ腹立つよね、これ。

 俺ネコに転生すると同時に精神年齢も下がってしまったかな〜ほんとに今思ったらアホにしか見えない。

 それで、俺の挑発に結構キレたルチーナが急に俺の首根っこ掴むと同時に言った。


『あぁもうっ!今日1日こん中にいて反省して、助けなんて呼んでも来ないようにしてるから』


 それでそう行ったっきり部屋を出ていってそれから1度もこの部屋に戻ってきてない。それで何時間もの時が流れて、今の状況に至る。

 流石に寝る時はこの部屋に来ると思うからその時に死ぬ気で謝ることにしよう。ほんとに起きたばっかとは言え調子に乗りすぎた。


 そして迎えたその日の夜、ルチーナは普通に部屋に入ってきて寝る支度を始めた。

 その時に俺は必死に『すみませんでしたルチーナ様ぁっ!!』とか『本当に何もわからず口からでまかせに行ってしまい申し訳ございませんでしたぁっ!!』と、ミリーが思っていると、急にルチーナが檻に顔をよせ、こう言った。


「本当に謝る気があるんだったら、今夜はそこで寝れるってことだよな?」


 ルチーナはベットの方向ではなく俺のいる檻を指さした。まあなんとも硬そうな寝床なこと。

 いつもはふかふかベットではなくてルチーナの暖かいお腹の上で寝ていたミリーにとって、いきなりプラスチックでできた床でふかふかな綿すらもない場所で寝れと言われても普通だったら断るが、今回は訳が違う。しょうじきに


『そんなもので許してもらえるのなら…恐縮です……』


 もう、従うしかない、ここで断るような真似をしたら本当に一生見向きもされない気がするから、今夜だけでも我慢するぞ!とミリーはその場で体を丸めた。

 すると不意に、おりの扉が開けられ、何時ぞやのときとおなじく、クロネコはルチーナによって首根っこを捕まれた。


「ちょっくら奥の方まで頭ん中覗いて見たけど」


 ルチーナはそこで一旦言葉を切り、1度も息を吐いてから


「ほんとに謝ってるってんなら、もう許してあげるよ」


「っっ!!」


「正直、私も悪いって思ってた。だから、私からゴメンな」


 そう言ってルチーナは俺の頭を数回撫でるとゆっくりベッドに座り、大きなため息をした。


『これからも宜しくな』


 何かかける言葉が思いつかなかった俺はとりあえずよろしくとだけ思うと、それを受け取ったルチーナは


「こちらこそ」


 そう言ってから電気を消すと、その日はそのまま寝てしまった。

 それをいつもの腹上ポジションでゆっくりと眺めている俺は、懐かしい光景を思い出していた。


 この気持ち……昔を思い出す。


 妹と喧嘩をしたけどその日のうちに妹の方から謝ってきて結局いつもと変わらぬ夜を過ごす。1日以上に喧嘩が伸びることはひとつとして無かった、重度のブラコンにより、健の妹は毎日兄にデレている。


 そして不意に思った。


 また結望に会いたい。


 勿論今のようなご主人やルチーナみたいな人達と一緒に暮らしていると、それは楽しい。とても楽しいけれど、妹の結望といる方はさらに充実した生活だったと思う。

 あの家に、帰りたい。

 1匹のクロネコはしみじみ思いつつ眠りに浸るのであった。




 同時刻、ミシェリーは自室にて椅子に座って何かを書いていた。


「……できた!」


 それは宿題などではなく、1冊の日記帳であった。

 実はミシェリー、過去のフェミアの勧めで毎日寝る前に日記を書いていたのだった、一日のどんな些細なことでもいいから、と。

 最近だと学校のことやクロネコのミリーがルチーナの方ばかり行くことなど、本当に日常的なことをただひたすらに書いている。

 それも数年後に見たら過去の風景を思い出せて楽しいだろうなあ。と、ミシェリーはほんのり思いつつペンを置いてベッドでよこになるのであった。

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