6話 明日から特訓だぞー友1号、良かったなー、
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ルチーナが朝食がないことをショックに思い、とんでもない悲鳴を食堂から放ったとき、ミシェリーの通う一宮普通校は朝のホームルームが終わって1限目の準備をする時間、休み時間に入っていた。
1年1組の教室、太陽の光が差し込む窓際に、3人の少女が集まっていた。
「今週は説明続きになりそうだな」
「そうなりそうですね」
笹木春のつぶやきにミシェリーは軽く相槌を返す。
そしてそれを確認してからもう一人の少女、千歳美希が口を開いた
「授業なんてくそくらえー。いて…」
「そんなこと言うなよ」
口を開いたかと思えば、美希はあまりまともな授業が好きではなく、家では四六時中ゲームや漫画に入り浸ってるとかなんとか……
そして何百回もやってるかのように、美希の頭をペシッと叩いた春は、ミシェリーにこう言った。
「私、美希にだけ容赦なしだから、あんまり気にしなくてもいいからね」
小さく笑いながら言った笹木春に向かって、千歳美紀は親指を立ててグッジョブをした、そして「いい仕事を持ったなーはるは」そうとだけいって手を提げた。
それを見たミシェリーはなんだか面白くなって
「2人ともほんとに仲がいいんですね!」
2人の話についていけそうにないミシェリーが頑張ってかけた言葉がこれだった。だがそんなことを気にすることなく笹木春は言った。
「それよく言われるけど実際どうなのかな」
「喧嘩するほど仲がいいって言うからなー、」
笹木春に続いて千歳美紀も言った。
「そ、そうですか…」
正直まだあって2日目のミシェリーにとって、この2人の関係かどんなものなのかは詳しく分かっていないが、今見ている限りでは十分仲のいい2人組だと、ミシェリーは心の中で思った。
とそこで笹木春は思い出したかのようにあることを言った。
「そうだ、昨日も言ったけどもう友達なんだからそんな話し方しなくてもいいって」
「そうだぞ友1号」
今までしていた友達関係の話の角度を唐突に変えられ、ミシェリーは少し困った。
学校に入学する前は、小さい頃からずっと一緒にいた家族のような存在にあまり気にしていなかったが、今思うとフェミアやノルア、それにルチーナだって皆れっきとした大人だ、それなのにミシェリーはずっと崩した話し方でいたけれど、それも今挙げた3人が家族のような存在であったから、そんな話し方や接し方など気をつけていなかったが、ミシェリーにとって初めてである同年内の友達、普通なら敬語など使わずに崩した話し方でいいのだろうが、ミシェリーは人見知りであることが分かったので、自然と敬語口調になっていたのだ。
これまでルチーナやノルアと話していたかのように、ミシェリーは敬語を使わずに喋るように少し意識をしてみた。
「わ、わかった…」
ただ敬語を使わずに友達と喋るだけなのにも関わらず、緊張して少しぎこちない感じになってしまった。
「あははっ、なんでそんなに緊張してんだよ、もっと落ち着けって」
「ほらほらー、独りぼっちのあなたでも小さい頃に人形くらいには話しかけたことあるでしょー?それをおもいだしてー?…いて」
「変なことを言うな!」
緊張してしまったのかいろいろおかしな喋り方になったミシェリーに笹木春は励ましの言葉を、それに続いて千歳美紀も絶妙なアドバイスをした。もちろんすぐ横にたっていた笹木春によって頭をひっぱたかれたが……
「うっ、うん」
2人に言われるがままにミシェリーは挑戦してみたものの、やはり上手くは行かなかった。
そして笹木春の口から究極の質問が来た。
「まだダメか……。ねぇ、ミシェリーは友達とあんまり喋らない感じだったの?」
「ぅえっ?あっえっと…そ、そんな感じです…」
続けて千歳美希が
「もしかして友達、いないのかー…いて」
「んなのと聞くなよバカ」
漫才を見てるかのように笹木春の手は千歳美希の頭にストレートチョップ。もう慣れてしまった千歳美希にとってはちょっとした快感すら感じてきている(本人談)
もうこのままでは色々と辛い。
そう思ったミシェリーは「あっ」と閃いた素振りをしてから2人に告げた
「あっあの、2人とも!もっ、もし良かったら今度…あ明日以降私の家に来ましゅか?」
ミシェリーは友達を家に誘った。
最初は今日誘ってニルン邸に来てもらって遊ぶ予定を、ミシェリーの頭の中で勝手に立てていたが、フェミアや他2人の許可が必要かもしれかいので、今日の夜辺りにフェミア優先で承諾をもらい、明日以降に来てもらうことにした。
「まじでっ?!昨日のお返し的なやつか?勿論行くよ!」
「友1号の普通じゃない家……楽しみだー!」
2人は、ミシェリーの言ったことに、噛んだことを気にせず当たり前のように賛成した。
笹木春は昨日ミシェリーを2人が暮らす「三四素瀨荘」に見てもらったおかえしと、なんだかにやけ気味に言い、千歳美希は春のことなんてどうでもいいとばかりに昨日一緒にミシェリーと帰った時の会話の一言「私の家も普通じゃない」というのを確実に覚えていた。
「えっと、じゃあ…うん。分かった」
ミシェリーは2人の激しい同意に余りの驚きを隠せなくなり、少し引き下がってしまったが、このコトバを聞いた2人はさらに激しい口調で同時に口を開いた。
「おぉミシェリー、今の感じ!今の喋り方良かったよ」
「友1号いのは良かったぞー!急にできたなー、」
2人が同時に話したのはミシェリーの敬語がなかったことだった。
だが2人同時に激しく喋ったことにより、当の本人は全くききとれずキョトンとしていた。
「……?!」
さらに首を傾げるミシェリー、それを見た2人はなにやらミシェリーに聞こえないようにお互い耳元でこそこそ話し合い、すぐに代表者のように笹木春が少し前にでてきた。
そして首の角度を戻したミシェリーに一言だけいった。
「ミシェリー……明日から特訓だぁっ!」
「だーだー!」
あまりにも急に言われたミシェリーはほんの少し思考停止したものの、やがてだんだん何をされるのか想像するにつれて顔がひきつり、
「えぇぇぇぇっっ?!?!」
とても驚いた声を上げていた
そしてその瞬間に予鈴が学校に鳴り響き、笹木春と千歳美希はすぐ二つ前の席に横並びに座る。
その後ミシェリーは本鈴がなるまで「特訓」について何をされるのか頑張って考えてみたがひとつとして思い浮かぶものはなく、そのまま1限目の時間が開始されたのだった。
場所は変わりここはフェルノウド王国、入国門の手前、そこには入国検査のためにできた長蛇の列があった。
並んでいる者はそれぞれで、普通の人や長い耳を持つエルフに獣人など、様々な人種が並んでおり、そのすぐ横には沢山の乗り物、例を挙げるなら馬車や、中には手押し車を持っているものもいた。
そんな多種多様な種族や人々が入り混じって並ぶ中、1人の少年はとてもだるそうな表情で、列の結構前の方にいた。
「ちくしょ〜、1人で行きやがってルチーナのやつめ、今度あったら好きなもん買ってもらお…」
腰や肩を内側におってだるそうに、なにやら小言をぶつぶつと言い出した。
さらに続けて今の言葉をかき消すかのようにもうひとつ言った。
「どうせ、帰って企んだこと言おうとしても、あの能力の前じゃ手出しどころか思考だって計画できない。ほんとあの能力いかれてるよ」
今度は先程言った文を訂正するかのような言い方で呟いた。
前後ろの人もあまりの小ささに全く聞き取れることは無かった。
そんなとある女への愚痴を周りに聞こえない小ささでずっと呟いていると、いつのまにか列の最前線に来ていた。
それは門塀の中を堀抜いた窓口のようなものだった。
そして中にいる鎧を全身にまとった兵なのか分からない人を前に、少年は立った。
「通行証はお持ちですか?」
「いいえ」
「身分証はどうですか?」
「どっか行きました」
「……だれかしらの特券と──」
「ないです」
少年は想像より優しめの鎧男の言うことに対し、全て否定形。
それに困った鎧男はやれやれと言った感じにこう告げた。
「君、通行証や身分証は無くなると後々がめんどくさいからね、王国の中にある冒険者ギルドの近くだったかな、そこら辺に発行できる場所がある、時間があれば行った方がいいよ、それじゃ」
そう言って鎧男はどうぞ、という手素振りをし、少年をその王国へ入らせた。
少年は入る途中にも「警備大丈夫かな?」とか「身分証はほんとに…」、などと、色々と言っていたが最終的には「すべてあの女のせい…ぐぬぬ」とまた、とある女へ愚痴を呟いていたのだった。
そして自分がなんのためにこのフェルノウド王国に入ったのか目的を半忘れしてしまったのだった。
目的を半忘れした少年は、ある大広場の噴水の手前の椅子に座っていた。背もたれもない石製だったので、少し嫌な感じはするが、文句を言っても直ぐに治るものでは無いと、諦めてため息混じりに肩を落とした。
「目的…目的……えっと、…っむがぁっ!7割出てるのに思い出せないこの感じ!」
その少年は喉まで出かかっているのに思い出せない舌先現象とやらを引き起こしていた。
どう足掻いても思い出せない少年は疲れきったかのように空を見上げた。
すぐ後ろで噴水の音が聞こえる中、少年は少し前のことを思い出していた。
それは今からほんの数週間ほど前、少年と一人の女は丘の上に仰向けになり、クモひとつ無い青空を見ながら会話していた。
まず最初に女の方から口を開いた
「いやぁ、母都市が寂しいねぇ」
「そんなこと言うんでしたらなんでこんなこと言って出てきたんですか?」
少年は素直に疑問をぶつけた
「いやね〜キルカイアは勿論外の世界ってのもあんまりいいもんなくてさー、だから観光国として有名な王国に行こうかってね〜」
「それルチーナさんが1人でやれば済みますよね?!」
「私ったら力がないから襲われちゃうのよ〜」
「嘘言わないでくださいよ!」
ルチーナと言われたその女性は少年をからかい半分に遊んだ。そして
「あとはお願いね〜清水くん〜」
そこで少年の記憶は急に王国の列に並んでいる時に飛ばされていた。
正確には王国の列に並ぶまでの体を全て操作されていたのだ。
それを再び思い出した少年はまたもや怒りが出てきて何も無い虚空の空へと拳を突き出した。
「くそぉっ!分かったよ、お土産買って来ればいいんだろ!現地のお土産ぇ……このお金の価値分からないけど」
そして急に声を上げた。
少年、清水と言われた少年が喉まで出てきていたのに思い出せなかったこと、それはどこでもいいからひとつの国のお土産を何かしら買ってくることだった。尽くしても嬉しくないのにルチーナという女にお土産を買いに行く。
思い出す度に声を荒らげたくなる気持ちを我慢するように拳を振り下ろして再び真っ青な空を見る。
そこには豊かに鳥が数匹元気に飛び交っており、少年の視界の端から端を、5人の人が空を飛んでどこかへ…
「はぁぁっ?!」
5人の人間が、人間が空を飛んでいるっ?!
清水は驚きのあまり手に持っていたコインポーチを落とし、即座に立ち上がりその5人の空飛ぶ人間たちの行く方角へと体が向いていた。
「あれば能力…?でもキルカイア以外には使える人間もいない……」
清水は誰もいない場所でひとりでに説明をした。もちろん周りには聞こえない程度の小さな声だが。
「だからといって魔法も火水風の3つしか…しかも風魔法でも人が飛んだという実例などないはず……」
やがて米粒程度の大きさになっか5人の影を見るのを辞めた清水は、また石製のイスにストンと落ちるように腰を落とすと「あたっ」と今までとは随分大きい声を上げてから、またもや物騒なことを言い出した。
「アイツらお土産にするか?なんか面白そうだし、ルチーナも喜ぶかな」
すぐ隣に1人の女性が座ったのも気にせず、清水がそんなことを言ってると、今来たばかりの隣の女性は、何か考えている清水の肩をトントンと軽く叩いた。
「む、なんですか?今考え事を……」
「あなた今、あの空を飛んでいた5人を捕まえようなんて言ってなかった?」
そう言われた清水はとりあえず偽ることも何も無いので素直に答えた
「面白そうですしね」
「やめといた方がいいわよ?あの5人、過去最強クラスの戦力を持ってるみたいよ」
その女性はなにやら自分の子を自慢するかのように笑顔になり
「噂では古代魔法を使える話、聞く?」
「はっ、古代魔法?!それなら尚更捕まえたく……」
清水は過去最強クラスの戦力などという言葉を無視して「古代魔法」という言葉を聞いた瞬間再び興奮した
そしてそれを横目で見ながら女性は言った。
「捕まえるのは無理じゃないかな〜」
「どうして?」
「それは今からお姉さんが話すことを聞いたらわかるわよ〜」
「ぜっ、是非!!」
清水はこの女性のことをルチーナより何千倍も優しい人だ!と内心適当に感心しながらその女性の話に聞き入ったのだった。




