5話 朝から疲れるのでやめてください。
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散々目にあった翌日、昨日のようにミシェリーは朝ごはんを食べ学校へ、ルチーナは未だに眠ったままのお寝坊さん、フェミアとノルアは朝食で使った皿を片付けていた。
俺は今、暇だ。
今まではご主人やらルチーナが遊んで(?)くれたが今は誰も遊んではくれやしない。
フェミアとノルアは色々忙しいみたいだし、そもそも今であの二人と遊んだ経験がない。そしてご主人は学校のためこのニルン邸には不在。最後の光であるルチーナとご覧の通り無防備なまでに気持ちよさそうに寝てるではないか。
そうだ、ちょっとこの豪邸探検してみるか。
このニルン邸はでかい、とにかくでかい、何度か外の世界見てみたけどどこもこの家より断然小さい。でかく見えてもそれはタワーマンションぐらいしかない。簡単に例えるなら都会の住宅街みたいな感じを想像したらいいかもしれない。
でもこのニルン邸、他の家と場違いなんじゃないかってくらい色々違う。
まず外壁、他の家はモルタルの壁や所々に木組みのもの、タワマンはガラス張りなどだったが、このニルン邸はまさかのレンガ造り。
そして屋根、こちらも同様他の家はほとんど見たことない素材でできていたが、分かるもので粘土瓦やセメント、コンクリート瓦だが、ニルン邸は違う。まさかの木、この超発展都市の中そびえ立つこのニルン邸は一体どんな歴史があって今の状況になってるのか気になる…
そんな周りとは雰囲気の違ったニルン邸を隅々まで探検して野郎じゃないの。
まずこの家は二階建て、1回は食堂や浴室、そして客間などの共同で暮らすスペースなどが揃っていた。2階はフェミアやルチーナ、ノルアにご主人などの私室がほとんど、今わかってる時点ではこのくらい、そんな謎多きニルン邸を今から隅々まで見尽くしてやろう。
まずルチーナが無防備で幸せそうに寝てるこの部屋を出る、すると左手にあるのがミシェリーの部屋、そして目の前にノルアの部屋があり、左を向き、廊下を真っ直ぐ行くと階段がある、そしてその反対側、ルチーナの部屋を出て右に向いた廊下、この先はまだ行ったことがない、なので今日はここを行ってみよう。
っとは言ったもののこの先には扉が何個かあるが俺一人、いや俺一匹の力じゃ扉なんて開けられなかった。もう諦めて先に進むしかないか…
という訳で廊下を真っ直ぐ行ったつきあたり、左右に道が別れている、正直どちらを見てもほぼ同じ景色、長い廊下の左右どちらかに扉が何個かあるだけ、俺じゃ開けられないのでどこか開いてる扉を探しても1個しかないし…
(ってあった、あそこ入ってみるか)
一つだけあった。2階にある沢山の扉の中、ルチーナとご主人以外の部屋で開けられている部屋、それは廊下の1番奥にある部屋だった。
電気はついてないものの、太陽の位置の関係で窓から日光がばんばん照らす、おかげで電気ひとつついてないこの廊下もとても明るく見える。
4本の足でてくてく歩いていくと、先程まで小さく見えていた扉がいまでは見上げるまでに大きな扉になっていた。
いざ思うと結構怖い、さっきまでは陽の光が当たって暑いとすら感じていたのになんだろう、この感じ。
クロネコは部屋に入る1歩手前で足を止めた、今歩いてきた廊下には窓から差し込んできた太陽光によって足取りが軽かったが、この部屋は全てカーテン締め切っており、陽の光が苦手な吸血鬼でも住んでそうな部屋で、すこし悪寒のする気がする部屋だった。そして入口でずっと立っているとまるでその部屋に引き込まれるような感覚だった。
帰ろうか悩んでいたその時、部屋の奥から「キィィ…」とさびた扉でも開けるような音が聞こえた気がした。今になってやっぱり戻ろうかなと思った瞬間、突然その部屋から声が聞こえた。
「一体ここで何をしているんだい」
その声はまるで作ったかのように不自然に高く、そして鼻をつまみながら言っているようだった。
それにしてもこの人はどうしてネコの俺に話しかけているんだろうか、そもそもどうやって俺がここまで来たことを知っているんだ?足音はほぼ無音に近かっただろうし……
クロネコが入口の場で恐怖心など全く無しに考え込んでいると、部屋な奥から先程と全く同じ声で、そして何やら揺れた声で話しかけた。
「もう一度っ…言うぞ、っお前はなぜ…ここにきたっ」
ん?笑ってる?いや笑いを堪えてるのか?
何がおかしいんだ?笑いどころなんてひとつも無いはず、思い出し笑い?ってかお前誰だよ?!さっきから平然と考えてる俺も俺だけど!お前一体何もんだよ?!この家の住人かっ?!それとも……
うぅ、なんか急に怖くなってきた…
この声の主が気になり始め、だんだんこのニルン邸の住人なのか違うのかが不安になってきて急に震え出したクロいネコの前に、それは突然姿を現した。
「あっはっは〜、もう無理!お前ほんっとおもしろいな!」
その人間はなぜか笑いすぎて涙すら流していた。
金髪ロングで、発育がよく、いつも同じラフな格好、そいつはクロネコにとってよく見知った人間だった。
「にゃにゃにゃがぁぁっっ」
(おまえかよルチーナぁぁっ!)
「ひっひっひ〜」
その声の犯人はルチーナだった。
ルチーナは真っ暗闇の部屋の奥から姿を現すと、ヒョイっと俺の体を持ち上げ、撫で始める。
くっ、くそっ!こいつに撫でられても嫌なだけなのに…それなのに気分が良くなるっ…やめろっ、いややめるな…やっぱりやめ…クソわかんねぇっっ!!
ルチーナはしれっとクロネコの思っていることを読み取ると、小悪魔的笑顔で今に至る経路を話してくれた。
「いや、朝起きたら抱き枕が居なくなってたから探したらこの部屋の前で座ってんの見っけてさ」
お前今俺の事抱き枕って言ったか?!言ったよな!毎晩寝心地が悪かったのおまえのせいじゃねぇか!
ミリーが鳴き声をあげているのを華麗にスルーし、ルチーナは続けた。
「んでさ、ちょっと面白いことしてみようかな〜って思ってさ、この家の裏側に回ってこの部屋の外からの入口から入ってきたわけ、いやぁ。なるべく音出さないようにしたかったんだけど、サビには勝てなかったな〜」
この豪邸なんなの?!家の裏に2階の部屋の裏口あるってそれ何?!
あとあの時の「キィィ…」って音やっぱドアのサビの音だったのかよ!
「とりあえず私達も朝ごはん食いに行くぞ〜」
オール無視!そこまですがすがしく無視されると逆に気持ちいいまであるかもしれないよ?!いやないから!そんなんないからっ!
あぁーっもうツッコムの面倒くさくなってきた、こいつ人の話全然聞かねぇし!
あっ、あと朝ごはんならとっくに片付いてるからな!
「あっさめっしあっさめっし〜」
ルチーナはミリーの突っ込みをオール無視、そして最後の朝ごはんの件も聞かずに食堂へと足を運んだ。
そして数十秒後、ニルン邸のキッチンからルチーナの悲鳴があがった。
この世界はキルカイア都市という超発展都市以外にも、さまざまな発展都市と呼ばれる「都市」があるが、中にはあまり発展していない町村や王国などの「町村国」もある。
そんな町村国は都市よりとても色々な方面で劣ったところであり、全体的な見た目も、全く違ったものになる。
「都市」は科学技術などが発展しており、都市全体に防御フィールドなるものが張っていたり、道路も全てコンクリートや建物もビルやスーパー、コンビニ、そして住宅街や学校などが建ち並ぶ夜でも明るい都市だ。
それとは裏腹に「町村国」というのは、「都市」とは真逆に位置すかるものと考えた方が早い。
科学技術は愚かそちら方面については1ミリも触れておらず、街の外壁は、町村なら柵などで囲み、王国規模なら石砦で外周を覆っている。
そしてその王国中身も全てが違った。
王国の中心には大きな王城があり、その周りには商店街が取り囲む、その周りには石や木造がメインのそれこそどこぞのクロネコの望んでいる中世ヨーロッパのような景色がひろがっていた。
少し前置きが長くなったがここは発展している都市を除いて、この世界のTOP3に入るほどの大きな王国「フェルノウド王国」。
そのフェルノウド王国の商店街の一角に「冒険者ギルド」という名前の看板をでかでかと掲げている建物があった。
冒険者ギルドは主に人々の悩みや組織の悩みことが大きければ国の悩みなど様々な「依頼」という形で救援が求められる。
そしてその依頼を達成し、ギルドに証拠となるものを持っていくと、達成報酬として「お金」を得られる。
そんな冒険者ギルド内には今日も依頼を達成してお金を稼ぐ「冒険者」が沢山集まっていた。薄着な装備に大きな杖を持つものや、全身鎧に斧を背負ったもの、腰に長剣を備えているものなど、それこそ多種多様な人間が集まっていた。
この暑苦しい冒険者ギルド内の一角、長テーブルをまるごとひとつ占領しているチームがいた。
「今日は何を受けるのですか?ご主人様」
「そうだな、たまには簡単な薬草でも探すか」
「薬草っ?!捜し物なら私たちに任せてよ!」
「うっ、うん!私も頑張る…っ」
「それは頼もしいな!」
「それならニャーも負けないにゃーよ」
「お前はちゃんとサボらず頑張れよ」
それはご主人様と呼ばれた少年1人と、その左右にそれぞれ二人づつ、姉妹らしき少女2人に金髪の子か1人とネコ耳が頭に生えてる獣人が1人、計5人がその長テーブルを占領して、何やら今から受ける依頼について話し合っていた。
「まっ、お前たちがいたら簡単に終わっちゃうし、今日は特訓もできるな」
「ご主人様の特訓?!」
「にゃんと?!レイヤの特訓かにゃ!」
「私たちもっと強くなっちゃうわね〜」
「そっ、そうだね……!」
その話はまるで今から受ける依頼を完璧にそして素早く終わらせるような話だった。
その後も5人が仲良く話し合っていると、急にギルド内が騒々しくなってきた。
そしてそれを感じたご主人様と呼ばれていた「レイヤ」という男は、目を閉じ、そして一言だけ言った。
「探索」
その少年を取り囲む4人の少女は、周りの騒々しさとは裏腹にワクワクしながらその少年を見つめていた。
やがて少年が目をゆっくり開けると、左右二人づついる少女を一人一人見つた。そして4人全員の目を見たかと思うと、その少年は急に立ち上がった。
「ホルゲスト火山から竜が降りてきたらしい、あまり被害の出ないうちにに火竜を倒しにいくぞ!」
「わかりました!」
「了解にゃ」
「もちろん!」
「できるかな…」
その少年と4人の少女たちはまるで意思疎通を行ったかのように、お互い理解し合っていた。
そしてそのままささっと冒険者ギルドの外に出ると、不意に少年と4人の少女たちの体がふわっと浮かび上がった。「何事?!」と周りの冒険者たちが思うのと同時に、足裏にジェットエンジンでも詰んだかのようにいきなり飛び始めた。
そしてその少年は飛びながら空気抵抗を無にしてるかの如く呟いた。
「少しは楽しめるといいけど…」
その言葉は4人の少女たちには聞こえず、何も無い空へと消えていった。
このハーレムを作っていた少年は一体……




