4話 覗き見はスポーツ観戦〜
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俺はこの日この時思った。
意外と身近にアホみたいな考えをする人もいるんだな、しかも2人。
ってね。もう今日は散々な目にあった。細かくいえば俺自身が嫌な目にあった訳じゃなくて、今目の前にいるふたりだ、フェミアとルチーナによって散々な日になった。もう今度からたまにと言わずほとんどまともな思考を持ってほしものだ。
俺がこんなことを思ったのは現在の夜食から遡ること約数時間のことである……
朝、俺は目が覚めるとご主人であるミシェリーのベットにいたのだが、いつもは目の前にある人の山がなく、ただ平べったい布団があるだけだった。
そういえば今日の朝ルチーナと変な会話してたな…寝起きだからあんまり覚えてないはずなのになぜか頭の中にその時の会話がインプットさらてるのは何故なんだ…分からない…。
ってか今日は確かご主人の入学式だったはず…だからルチーナもあんな早起きだったのか?
そう、今日はミシェリーの入学式、フェミアとルチーナはミシェリーと一緒に学校に向かってるはずなので多分この家にはノルアしか居ないはず、はずなのに…1階の方から声がする。それもノルアじゃなくてフェミアの声…
話は終わったかしら〜
フェミアの声が聞こえた瞬間、この部屋の扉の向こう側から足音が聞こえたきた。そして俺にはこの足音が誰のものか分かる。ノルア館長の足音だ。
俺はミシェリーの入学式なのにも関わらずこの家にいるフェミアの姿を確認すべく、この部屋から外に出て、声が聞こえたであろうリビングの方へと足を運ぶ。
途中ノルアに会ったがノルアはこちらを見るなり何もすることなく自室へと向かっていった。
なんとなくルチーナとの朝の会話がどんなものだったのかを思い出しつつも食堂に向かうと、そこには今から外出するのかオシャレをしたフェミアといつもと変わらないラフな格好のルチーナの姿があった。
「おっ、やっと起きたかクロネコ」
「おはよ〜」
そしてこちらに気がついた2人はネコである俺に朝の挨拶をしてきた。
申し訳程度に俺は「にゃ〜」とだけ鳴いといた。
するといきなりルチーナが脳内に話しかけてした。
『あの事話したら入学式行くより私の説教優先したみたいだったよ』
そしていきなりこんなことを伝えてきた。
そういえば朝の話の終わり際に白状しろだかなんだか訴えた気がするか……一応ルチーナもこれまでのことを白状してくれたみたいで良かった良かった。このまま隠し通していくのなら俺は意地でも言葉が話せるようになって、あの3人…いやフェミアとノルアに言ってやってたぞ。
まぁ、俺が人の言葉話せるなんて多分夢物語なのだが……
俺の脳内に直接ルチーナが話しかけてくるのを知らずに、フェミアはこちらに歩み寄り、そして俺を抱き上げた。
「今からお出かけですよ〜ミリーには悪いけど、何か美味しいものでも買って許してもらうわ〜」
「にゃ〜…」
(ご主人……)
お出かけか……行きたかった、行って我が子の入学の姿を見たかったんだろうな……それをあのルチーナっていう女によってぶち壊されたんだよな……それ相応の禊ぐらい与えたよな?お母さん。
あれ待てよ……そもそも俺がこのタイミングで白状しろなんて言わなければ入学式湿気てたのでは…?!
『禊な、これから身内に対して精神制御を使うなって!』
そりゃぁいいな!せっかくの娘の入学式を行きそこねさせた張本人がそんだけの罰を貰うのは当たり前だァっ!
俺はネコである俺に訴えてくるルチーナの味方になる気なぞ一切湧いてこなかった。
「おまたせしました」
とそこで、先程2階ですれ違ったノルアが服装を変えて扉の向こうからやってきた。
「ノルアちゃん似合ってるね〜」
「おぉ意外といけるもんだな〜」
それを見た2人も1人覗いて褒めの言葉をノルアに浴びせた。
それを聞いたノルアは後ろで手をモジモジさせて頬を赤らめていた。そこにはいつもじゃ見られないまた一風変わったノルアの姿があった。
「それじゃ、早速出発しましょうか〜」
「魔法校の様子見に行くぞ〜」
「ルチーナさん、その事をいつ知りましたか?」
「あっやべ」
「こらルチーナぁっ!全然反省してなかったのね?!」
これから出発だというのに早速ルチーナが反省してないことがノルアによって見破られたことにより、家から出た直後の会話の話題はその事について持ち越しとなった。
このフェミアのお出かけの目的、それはフェミアの母校である一宮魔法学校中等部、及び高等部を見に行くことであった。
魔法校は普通校とは真逆の存在となる学校で、入学基準や教えるもの、そして実技やテストなど、普通校と一致するものがゼロに近いほど、真逆の存在であった。
そんな真逆の存在である魔法校の卒業生であるフェミア・ニルンは、毎年入学式になると、母校の一宮魔法学校を見に来るのだった。
だが、ただ見るというわけじゃない、フェミアは見る、と言うより覗くに近いことを毎年やっていたのだ。
「なぁフェミア、お前ほんとに毎年こんなことやってんのな」
「ここからの景色も意外といいものでしょ?」
一宮魔法校を覗き見しているその姿はまるで、目的の家を観察する泥棒のような間抜けな姿だった。そしてそれを遠くから眺めているのは、あまり大事に関わいたくないが為に赤の他人かのようにベンチに座っているノルアだった。ちなみに俺もノルア館長の隣に座ってるぞ。
この魔法校では、毎年新一年生の魔法適正能力というものを測るために、体育館内でもやることができるものを、いろんな小さな理由をつけ、なぜか校庭でやっているのだ。人数的にも普通校とは違い、魔法を発現できる人はあまり多くは無いので全校生徒も4桁単位にはならないのだ。
そしてフェミアは毎年このわざわざ外でする魔法適正能力測定を見に来て、なにかすごい人がいないか最後までみとどけているのだった。
だんだん見ているうちにルチーナも楽しくなっており、フェミアと一緒にスポーツ観戦でもするかのように盛り上がっていたのだ。
そしてスポーツ観戦のように盛り上がっていたのが悪かったのか、それは突然、起きた。
「そこの2人!そんなところで何をやっている!」
突然、ワーワーギャーギャー騒いでいる2人に、筋の入った声が届いた。
2人がその声の主を確認すべく、振り返るとそこには、2人の警察官の姿があった。
「にゃーにゃーっ」
(警察に見つかってるし!)
「おや、お二人共警察に見つかったようですね…」
その様子を静かにベンチで見守っていたノルアはゆっくりと立ち上がり、代弁をしようかと、2人の元へと駆け寄ったのだった。
場所は変わってここは交番前、そこには3人の女性と2人の警察官の姿があった。
「だーかーらー、コイツが悪いんですよー」
「ちょっとルチーナぁっ、人のせいにしないでよ、自分だって楽しんでたくせに!」
警察官を前に一切の緊張感を見せずに言い争いをしている2人、フェミアとルチーナに警察官は困り果てた様子をみせていた。
「分かりましたから、もう解─」
「だから!元はと言えばフェミアの方が悪いもん!」
「ルチーナだって楽しそうにしてたじゃない!」
警察官の「もう解散していいよ」という言葉を遮って勝手に言い争う2人、その話は微妙にズレていき、やがて「逮捕するならこいつ!」などと、勝手に話をひろげていったのだった。
俺も何か出来るかなぁと思い、フェミアの肩に乗り移ってみたが、効果はゼロだった。
そこに3人にとって見知った1人の少女と1人背中におぶっている少女、計3人の姿が見えた。
「あっ!ミリーじゃん!なぁなぁちょっとぉ!」
「あらあらミリー、お願いこの警察の方の話を聞いてくれる?」
「こちらからもお願い致します」
激しい言い争いによって若干頭に血が登ったルチーナは自然とノルアの精神を勝手にいじくっており、ノルアはこの言い争いに洗脳されてしまったことに、当のルチーナは一切気がついていなかった。
「さささ3人ともっ?!何してるの?!」
交番の前で警察2人と話している姿を見てミシェリーは驚きの声を上げていた。
そしてミシェリーの友達だろうか、ミシェリーより少しせの高めの女の子で、なぜか背中に薄紫色の髪の毛をした少女を背負っている子は興味深そうな顔で
「おや?ミシェリーちゃんこの人たちとお知り合い?」
そう言ってきた。
だが、驚きのあまりお友達の言葉に対して何も返すことの出来ないミシェリー。更にそのミシェリーを見ながらルチーナが
「いやさあ、フェミアの奴が調子に乗ってさぁ」
ミシェリーに助けを求めるべくいきなり言い訳。
それに抗おうとフェミアも
「ちょっとルチーナ、人のせいにしないでよ!あなたも共犯者でしょ?」
と、ルチーナを共犯者扱いにし、お互いが同罪であることを、ミシェリー主張。
そしてやっとルチーナの洗脳状態から脱出できたノルアは
「2人とも、落ち着いてください」
落ち着かせるように2人に訴えた。
その後、ミシェリーが「どうしてこんな事になってるの?」と聞いてきたので、ノルアは誠実にいまさっきまでの一連の流れを伝えた。
そしてもう混乱してしまったのか警察官の1人が「もう解散してくれ」と白旗を上げた。
女6人が交番から少し離れたあと、フェミアとルチーナの言い合いは少し落ち着いたものの、幼少期まで遡ってまで続いていた。だがフェミアとルチーナはミシェリーの隣にいる少女を背中に背負ったミシェリーより少し背の高い少女を見て、糸が切れたように言い争いが止まった。
「もしかしてミリー、もうお友達できたの?」
「はっ?うそだろおまえ?!もう友達が…くそっ」
友達のできたミシェリーの姿をみて
フェミアは喜びの声を上げ、
ルチーナは悔しい仕草をしていた。
それをニッコリと見ながらミシェリーはフェミアに言った。
「ねぇまま、今からお友達の家に行ってもいい?なるべく早く帰るから」
ミシェリーは嘘偽りなくフェミアに伝えた。断られたらどうしようと、ミシェリーは少し震えていたが、フェミアの優しい言葉でその震えはひとつも無くなった。
「もちろんおーけーよ〜お友達と遊ぶことは悪いことじゃないんじゃないかしら〜」
それとは裏腹にルチーナは悔しそうに
「けぇっ!友達の1人や2人くらい私だっているっての」
と、1人嘆いていた。
そんなこんなで、ミシェリーはフェミアの許可を得て、早速できた友達の家に行くこととなり、残った女性陣はさっさとニルン邸に帰ることにした。
そこで俺は不意に思ってしまった…
学校を覗き見とか交番の前で身を弁えずに言い争って、いろいろ怒りすぎてあんまし気にしてなかったのかもしれないけど……
「にゃにゃにゃぁぁっっ…?!」
(あの背負われた女の子何があったの?!?!)




