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第10話 大蛇の初体験

 四女のメンセル対骸骨龍王(スカルボーンドラゴン)の戦い。

 広場で大魔法使いが四つに分かれた後、準備を終えたボロ髪にダメージ加工のドレスを着た〈病み〉のメンセルが戦場に出た。


 ウィリア魔法界と鉄壁国家(シルディア)の境界は、深い森と砂漠で極端な地形になっている。

 そこの森側にメンセル軍、砂漠側に骸骨龍王(スカルボーンドラゴン)で睨み合っている。

 その睨み合いの沈黙をメンセルが破った。


「この骨があれだよね?バラバラにしていいんだよね?」


 生まれた時から目の下に濃いクマのあるその顔で、首をグリンとして振り返って尋ねた。

 その同意を求めてる質問に、この敵の復活を報告したハーピーのレディスが答えた。


「はい。あれはメンセル様の獲物です。存分に楽しんでください」


 ここに来るまでにケイオスの仲間達はアスタリアからの通信で3人の扱い方を聞いていた。

 アスタリア自身は3人に魔力のほとんどと魔法のいくつかを持っていかれたので、今も回復のために自室で休憩している。

 メンセルのことはこのレディスにその時任せた。


「じゃあ、永遠の病みに葬ってあげるぅ」


 メンセルはそう言うと真っ赤に輝く包丁を作り出した。

 このメンセルが得た魔法は、空間操作系と物質錬成系だ。そして母から姉に渡され、自分に受け継がれたアンデット系も使える。

 そんな病みであって闇でもあるメンセルは、この戦場で一番強い。

 そう自負して戦闘を始めようとしたら、奴が大笑いして話しかけてきた。


「貴様ら、我がこうなったことを知らないな。我は魔王種となったバーレイドである。貴様らを灰にすることが目的である。文句はあるか?」


 この言葉を聞いてケイオスの住民は驚いた。

 伝承に奴が話せる記述はない。

 しかし、伝説上の魔物である以上は知らないことがあるのも仕方ないことなのかも知れない。

 それに、当然のようにこの魔物の伝承をアスタリア姉妹は知らない。

 だから、こういう進化をする魔物だと思ってる。


「文句?あるよぉ。うちの姉を含めて殺す気なんでしょ。なら、そんなことが出来ないように骨のかけらも残さずにバラバラにしてあげるぅ」


「威勢がいいな。だが、敵であるなら灰にしてくれる!」


 ここから戦闘が始まった。

 最初に攻めたのはメンセルだ。

 空を飛ぶ巨体に幻覚付与をした包丁をぶん投げた。

 骨龍バーレイドはそれが危険だと感じて避けようとしたが、体が大きすぎて避けても骨の一本にかすってしまった。

 それだけで骨龍バーレイドは病んでしまいそうな内容の幻覚世界に閉じ込められた。

 それで動きが止まったので、早速チャンスが来たと思ったメンセルは指示を出した。


「総員!攻撃開始!」


 ケイオスは今住民が地味に増えて800人になっている。

 そのうちの約600人が奴に攻撃を開始した。なるべく遠距離で。

 ちなみに、街には約170人が残った。約30人はクレイズについて戦争に向かった。

 つまり、この戦場に一番人員を割いている。

 ここで負けて全滅するとケイオスは戦える者達をほとんど失うことになる。

 それこそ、この四女の責任が重大となる。

 だからこの状況でもあまり前に出ずに状況を見定める方に集中している。


 この戦場にやる気のない者などいない。

 全員がメンセルも主人と認めてその命を捧げる覚悟でいる。

 だから、この化け物が意識を封じられてる内に一気に攻めるつもりでいる。


 魔法の雨が降り注いでいるのに、相手には全然攻撃が効いてる気がしなかった。

 数分間攻撃を続けてる途中で奴は悪夢から覚めて反撃してきた。

 その体を動かして尻尾をムチのように振り下ろしてこちら側を一掃しようとした。

 その攻撃が一直線にメンセルを狙ってきたが、彼女は動きがそんなに良くないので避けられない、それをレディスが音速で飛んできて助けてくれた。


 その必死に助けてくれた横顔にメンセルは惚れてしまった。

 しかも、助けられた時にお姫様抱っこまでされて、赤面不可避の状態にさせられた。

 でも、これによってメンセルの固有魔法《愛ある病み》の条件が揃った。


「姑息な手を使いおって!しかもちょこまかと!」


 骨龍バーレイドは他の連中よりもメンセルとレディスに目が行った。

 レディスはハーピー以外にも有名で、実は昔に魔王候補の1人になったことがあったりする。

 しかも、この骨が封印される前から居たから、特徴的な大きな翼と金髪と赤い眼でレディスとバレている。

 その速度は昔からハーピーで1番だったので、骨龍バーレイドは警戒しながら速度では勝てないと思っている。

 なら、この骨に出来ることはただ一つ、ブレスで灰にすること。


「あっ、これはまずい。メンセル様、みんなに距離を取るように指示してください」


「分かったぁ。みんな、距離を取って奴の攻撃から身を守って」


 レディスから逃げるように言えと言われてメンセルは何の迷いもなくみんなにそれを伝達した。

 思考の伝達系の魔法も使えるので容易にみんなをブレスから避難させることに成功した。

 みんなが逃げてる途中で奴は全力のブレスをばら撒いた。

 すると、当たった地面の岩なんかがちりになって、草木も灰になった。


 それに仲間達は驚いたが、その光景を大昔に見たことがあるレディスは驚かなかった。

 ハーピーで最古参のレディスがメンセルを抱えて着地すると、完全に荒れた地の上で奴が笑っていた。


「やはりこざかしい小鳥か。懐かしいな」


 骨の龍は見た目では分からないがニヤリと笑った。

 下っ端に仕事を任せて自分は雑魚のフリをするレディスをこざかしいと思っている骨龍バーレイド。

 大昔こいつに目の前をうろちょろされて鬱陶(うっとう)しいと思ってる間に封印されたことを思い出して、この場でやり返してやることを考えている。

 そんなこいつにレディスはハーピーの裏のボスとしての顔を出してバカ骨と話すことにした。


「久しぶりね。私をただの小鳥と思って侮ってたら封印されたおバカさん。今回は主人も含めて攻撃で殺してやりますよ」


「相変わらず生意気だな。あの時は我が油断して勇者達の封印に気づかなかっただけだ」


「それを私が飛び回ることで実現させたんだよ。おバカさんは私の相手をしなかったから封印されなかったのに」


 この会話でレディスが奴を挑発した。

 今回も自分があたりになるつもりなのだろうが、メンセルがそれを止めて前に出た。


「バーレイドだっけ?この子達は無視して僕と遊ぼうよぉ」


 レディスにムカついてきていた骨龍バーレイドは、その発言に笑顔で答えた。


「いいだろう。しかし、そこにいる小鳥と一緒にかかっこい」


「元々そのつもりぃ。僕は1人じゃ弱いけど、好きになった人がそばにいれば強くなるからさぁ」


 照れ臭そうに顔を赤くしながらそう言うメンセルにレディスはドキッとした。

 そういえば、メンセルは主人であるが本物の契約者であるアスタリアとは違う。

 そう思ってレディスも可愛らしい彼女に惚れた。つまり、両思いになった。

 これもメンセルの固有魔法《永遠の愛憎》による恋愛成就と縁切りの効果の片方によるものだ。まぁ、本人も周りも知らないけど。


「さて、レディスの返答はぁ?」


「イェスに決まってます!」


 これによってメンセルが完全にスイッチが入った状態になった。

 《病みの愛(ヤンデレ)》を発動させて全ステータスを倍にアップした。

 超強化系魔法をいくつも持つメンセルは、姉妹の中で一番戦闘に特化した特別なタイプで、誰よりパワーを乗せた攻撃を得意とする。

 しかも、姉妹の誰にも勝てないと勝手に思って病んでしまうほどに弱くて丈夫なメンタルをしてるから、無限にパワーアップが可能と言っても過言ではない。

 そんなメンセルがレディスと手を繋いだ瞬間、覚醒した。

 メンセルがこの戦場で最強に躍り出た瞬間だ。


「ありがとう。こんなに早く一番乗りで参加できるとは思わなかった」


 楽勝でメンセルは進化した。魔王種へと。

 アスタリアは大魔法使いを母から継承してるからそうなったけれど、妹達はこの姉から生まれたコピーみたいなもの。

 だから、普通の人造人間として魔王になることができる。

 魔王には進化の条件があるけれど、このメンセルだけは本気の愛が条件だったのだ。

 それによって魔王種となったメンセルは、真の魔王ではないが最下位の魔王にはなった。

 つまり、バーレイドを含めるなら10人目の魔王ということだ。


「レディス、永遠に愛してあげるから覚悟してねぇ」


「重い愛でも無限の寿命の中で幸せにすると誓いますよ。魔法関係なしに本気でね」


 簡単に恋に落ちてこうなるのはおかしい思うかもしれない。

 でも、これが魔法の奇跡というものだ。

 ゴリ押しでもなんでもメンセルはこれで骨を超えた。

 やばいと思った骨龍バーレイドは2人が盛り上がってる隙に逃げようとしたが止められた。


「どこに行くのぉ?」


 相変わらず不気味な《病み王メンセル》に《骸骨龍王バーレイド》は逃げられないと判断した。

 その巨体では化け物に進化してその体を160cmの高校生くらいに急成長させたメンセルの射程から離れられない。

 そこで意を決して攻撃しようとしたが、メンセルが右手を突き出すと異空間が発生して閉じ込められた。


「逃さないし、やらせない!」


 敵側のような悪人じみた笑みを浮かべてメンセルはそう言い放った。

 そして、その空間の中に無数の異次元の穴を開けて、そこから大量の強化されて硬くなった包丁を降り落とした。

 その攻撃を始めるのにかっこよくドレスを揺らしながら右手を振り下ろしていた。


「これで砕けろぉ!《クレイジーダンス》」


 大量に降り注ぐ包丁から逃げる方法はない。

 しかも、当たれば即死レベルの攻撃力を持つ包丁だ。

 これなら巨体の骨龍バーレイドが生き残る手段は無いだろう。

 そう思ってメンセルは1割の魔力を消費して一気に攻め続けた。


「レディス、こんな僕はどうかな?」


 そう言って大量の包丁の輝きを纏ってメンセルは素敵な笑顔を見せた。

 愛は人を変えるというが、メンセルはそれが謙虚に出てレディスに対して素敵になった。

 敵の死が目の前に落ちそうになってる中で見せるその笑顔に、レディスは同じような笑顔で返した。

 ただ、この一撃でアンデットの骨龍バーレイドを殺したけれど殺せなかった。

 包丁のせいで上がった砂煙の中で奴はニヤリと笑った。

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